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青い半魚人  作者: 松下真奈
第二章
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童歌

 微睡みに身を任せてしまえば、いつだってすぐにその歌声は聞こえてきた。


――儚くて、割れてしまいそう


 か細く少し掠れている。けれど高々と響き渡って聞こえてくる。


――繊細なガラス細工みたい


 そう思った途端、暗がりに細長い硝子の筒がいくつも浮かんだ。試験管だ。透明な管の中で、淡い色をした液体が揺れている。


 見覚えがあるような気がした。でも、どこで見たのかは思い出せない。


 自分の歌声ではないのは、すぐに理解できた。なぜならそれは男の声だったから。


――どこ? どこから聞こえてくるの


 初めて聞いたのはもう何年も前、とても幼い頃だったはずだ。


 知らない声のはずだ。でもなぜか懐かしくもある。幾度となくその夢を見てきたせいかもしれない。


――子守唄かしら。それとも、子どもたちが遊ぶときの唄?


 異国の旋律のような、知らない唄。歌われている言葉も知らないものだった。


――誰かが、私の後ろにいる?


 振り返ってみた。けれど、そこには誰もいない。ただ、海に突き出したコンクリートの岸壁と、その向こうに広がる灰色の空が見えるばかりだった。


 高い柵の向こうには、白い建物がいくつも並んでいる。窓は少なく、どれも同じような四角い形をしていた。


――波が高い。これではさらわれてしまう


 歌声は遠くなったと思ったら、近づいてくる。


――おかしい。あの人は、どこで歌っているの?


 背後から聞こえたと思えば、今度は耳元で囁かれているようだった。


――早く会いたい。来て。私はここにいる……


「ここに」


 ああ、寝言を言ったかも。


 そう思った矢先、いつものアラーム音が聞こえてきた。


 名残惜しいけれど安堵して、彼女は現の世界への帷を上げた――

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