↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い半魚人  作者: 松下真奈
第一章
PR
13/186

予知夢

――やはり、同じ人なのか

 ほとんど確信してしまった自分の心を誤魔化すように、侑子はユウキの緑の瞳を見つめた。

――だけど……やっぱり、こんな瞳はしていなかった。だって、あの魚には

 あの半魚人には、自分を見つめ返すような目などついていなかったではないか。

 そこまで考えて、侑子ははっと息を飲んだ。

 ユウキは、たった今言ったばかりだ。

『夢の中では、他のものはうまく見えない』

 芽生えてしまった確信に抗おうとすればするほど、むしろそれを裏づけるものにばかり行き当たる。

 

「…………同じ夢?」

 ユウキの呟きはあまりにも小さく、街の喧騒に紛れた。侑子の耳には届かなかった。

 出会ったときから、時折感じていた奇妙な懐かしさ。この少女が笑ったとき、確かに誰かを思い出しかけた。けれど、いくら考えても思い当たる相手はいなかった。しかし——

――そういうことだったのか

 胸の奥に引っかかっていたものが、ようやく形を持った気がした。

 未だ確信を受け入れられずにいる侑子とは対照的に、ユウキの方はその可能性へ積極的に近づこうとしていた。胸の内に灯った小さな興奮が、とろ火のようにじわじわと大きくなっていく。

「……すごいね」

 今度は、侑子にも届く声で言った。

「俺たちは夢の中で、もうずっと前から知り合いだったらしい。俺といつも遊んでくれてた人は、君だったってことだろう?」

 ユウキは知っていた。同じ夢を誰かと共有するという奇妙な現象が、この世界ではごく稀に起こることを。そしてその夢には、単なる偶然では片づけられない意味があるとされていることも。

 けれど今の侑子にそれを伝えるべきかは、少し迷った。

 ただでさえ彼女は見知らぬ場所へ迷い込み、魔法を目の当たりにし、自分と同じ夢を見ていた人間にまで出会ってしまったのだ。

――今は、まだいいか

 ユウキは意識して口角を上げた。自分のこの表情が場を深刻にしたくないときに役立つことを、彼自身よく知っている。軽薄には見えない程度の、お調子者めいた笑顔。

「俺たちが見ていたのは、きっと予知夢さ」

 誤魔化している自覚はあった。けれど、嘘だとも思わなかった。

「君と俺が出会う予知夢。ねえ、そう考えたら辻褄が合わない?」

――予知夢

 今の二人には、その言葉がちょうどよかった。

 侑子は目を見張っている。真剣にその言葉を飲み込もうとしているようだった。

「こういう不思議なことは、この世界では、まあ……たまにあるんだよ。魔法と同じで、身近にある。それなのによく分からないこと」

 あえて『魔法』という言葉を使った。目の前の彼女にとって、魔法ほど『信じがたいのに、信じざるを得ないもの』はないだろう。ここまでの侑子の反応を見ていれば、それくらいは分かった。

「予知夢……? こういうことって、あるの?」

「うん。怖がるようなことじゃないよ。この世界じゃ、たまにある」

 ユウキは最後の言葉を、意識してゆっくり発音した。——この世界。

 侑子は何か反応するだろうか。しかし困惑した表情は変わらない。

「たまに、あること……」

 小さく復唱しただけだった。

 納得したのかどうかは、分からない。

 それからしばらく、二人の間に沈黙が落ちた。

 やがて侑子が、何かを決めたように顔を上げた。

「ここに来てから、信じられないことばかり起こる」

 秘密を打ち明けるような声音だった。

 侑子は一つ一つ、慎重に言葉を選んでいる。

「ユウキちゃん……聞いてほしいことがある。多分、信じてもらえないかもしれないけど……。それと、教えてほしいこともたくさんあるの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。