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±0  作者: 日向陽夏
第4章 黒へと至る少女【後】 絶対零度編
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第18話 チマミレノセイギ①【白雪セリカ視点】


 黒き炎を身にまとう花子のジェネシスは、少しでも触れるだけで皮膚が焼きただれるほどに熱い。ただ近くにいるだけで、息をするのすら苦しい。


「……はぁ、はぁ、はぁ」


 息も乱れ、心臓が早鐘を打つ。

 汗が頬を伝い、顎を伝って落ちていく。

 かれこれ5分。手加減抜きでジェネシスをフルに使い、シスターと連携しても、花子に”近づく”ことすらできない。

 花子はただ、炎をまき散らすだけで、私たちを寄せ付けない。

 なぜ、ここまで強い……?

 透を倒し、黒き結界は解けた。

 しかし。

 燃えさかる紅蓮の黒き炎が、結界のように私たちの邪魔をする。

 絶対に私をここで殺すという意志を感じる。

 そして同時に……。


 ”遊んで”いる。花子は……。


 花子はさっきから、能力を使っていない。

 ただ、燃えるジェネシスをまき散らしているだけ。

 なのに……戦闘にすらならない。

 2週目から授かった遠距離能力を使っても、炎に阻まれて届かない。

 まるで私たちを雑魚だと思わせる為だけに、敢えて能力を使っていない悪意を感じる。

 なのに……”打つ手”がない。


「…………っ」


 シスターも、この状況がいかにマズいのか理解しているのか、顔をしかめている。

 私とシスターには、”反射”能力が無い。

 アンリに貸している為、無効化で倒すしか無いけど、この炎は何故か無効化ができない。


「あの炎をなんとかするしかない」


 シスターが近づいて、小声で言ってくる。


「でも、どうやって?」


「私が全てのジェネシスを使って、この空間を凍らせる。でもそしたら、それ以外のことはできなくなる。だから、あとはアンタが、サシであいつを殺す」


「……どうせこのままじゃジリ貧、か」


「透、お前の《聖女抱擁》で3周目はまだ治らないの? Fランク化した途端、無能になったとか?」


 シスターが、太陽のペンダントの中にいる透に、キレ気味に声をかける。

 1~3周目の存在について簡単に説明してあるけど、思っていたより早くシスターはその辺の事情を理解してくれた。


「傷の深さだけで無く、この炎は精神にも深く干渉するようだ。あと数時間はかかるかもしれない。君たちも、迂闊に捨て身で突っ込むみたいな真似はしないほうがいいだろうね。体だけではなく、心まで破壊されるリスクがある」


「アドバイスありがとう。全部お前のせいだけどね」


「そうだね。だからさっさと僕を死刑にして、罪を償わせてもらいたいものなんだけど」


「たかが死を望んだぐらいで、罪が償えると思うな。それなら自殺者は全員罪を犯してないのに、死んだことになる」


「だが君は、僕が減刑を望んでももっと怒るんだろう?」


「反省しているなら減刑なんて望まない」


「そして、罪を償う方法論を求めれば、それは自分で考えろと言う。そんな答えは存在しないのに、だ」


「よく分かってる。私はね、お前を、殺すのを、我慢……しているの」


 殺意だけで人が殺せそうな目で、シスターがペンダントの中にいる透を睨みつける。


「だが僕が君たちにジェネシスを与えたおかげで、君たちはここまで深い絆を得られたとも言えるだろう。”敵”がいるからこそ、”味方”が生まれ、そこに”絆”が生まれる。僕は君たちの悪であり、キューピッドとも言えるわけだ。感謝しろとまでは言わないが、一面的な見方はよくないと思うな。セリカに仕える者としては、なおさら」


「こ・い・つ……」


 透相手に論戦なんかしないほうがいいのに。

 いい勝負できるとしたら、アルファとかだと思う。

 案の定、シスターはこめかみをヒクつかせながら、握りこぶしが怒りに震えている。


「えーっと、じゃあ、さっきの作戦通りに……やろうか」


 私はシスターの背中をさすって、花子を倒す算段を始める。


 少しだけ、先が思いやられるけど……なんとか、なるよね。



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