関わり(2)
「あのよ。今日1日強心の事を調べていたんだ」
「っ!?」
なに…!?
「文太なんか元気なさそうだし…先生にはいきなり休学って言われて何もできなかったから…」
どうして…
「どうしてそこまで私のために…」
「星祭りの恩、忘れたくなかったんだ」
「そんなの…」
そんな、ちっぽけな…少ししか後押ししていないというのに。
「そんなの、じゃない。俺にとっては大きいことなんだよ」
「そっか…ありがとうな」
「どういたしまして。んで、今から俺の彼女に会いにいくぞ」
「自慢かよ!?」
なんで!?
「自慢じゃないない」
笑っていう高林。つられて私も頬が緩む。
ってか今思っていることと言葉が逆だった…危ない危ない…
「まぁいいから。おっ、おーい!紗希ー!」
「あ、千君!」
どうやら目の前にいる彼女が高林の彼女のようだ。星祭りの時に見かけた時も少し思ったけど…
「リア充爆発しろぉぉぉぉぉ!!!」
やっぱり綺麗な人ですね。
「あ、あのよぉ文太。どーしたんだよ…」
あっ!!
「い、いや気にしないでくれ…」
あれ?なんか私自身の様子がおかしいぞ?
まぁ多分ただ目の前のリア充を見て羨ましいだけなんだろうけど…
「あ、あの…神走君…じゃない、強心君の弟さんですか…?」
「あ、はい。神走文太と言います」
兄貴のことを知っている?
「あのですね。私強心君にお世話になった立花紗希と言います。それで強心君の」
「まぁまぁ。こんなところで立ち話もなんだよ。どっか落ち着いて話せる所に行こう」
彼女…立花さんが話している途中に高林が遮る。
だけど、その提案には賛成だ。落ち着いて話を聞きたい。
「それなら、ここから近いし私の家なんかどうかな?」
「おお、文太ん家か!ちょっと行ってみたいしそうしよう!」
そうして私の家に行くことになった。
「えっ…兄貴と同じように姿を消している人がいる…!?」
部屋に上げ小休憩をとった後、本題。
「うん。私の友だちなんだけど昨日連絡があってね」
「そ、それで!?兄貴と関係あるんですか!?」
「おい文太。落ち着きなよ」
思わず身を乗り出した私に高林がなだめる。
「あ、あぁ。ごめん」
「…それでね、どうやら強心君について行っているみたいなの」
「なるほど」
「強心君。どうやら一悶着あったらしくて携帯壊しちゃったんだって」
そっか。だから連絡がとれなかったのか。
「私の友だちがやっと今日連絡くれて。それで伝言があるって」
「伝言?ですか?」
なんだろう。
「今はやることがある。だから帰れない。だって」
「えっ」
やること…?
「それだけですか?」
「う、うん。それしか言っていなかったよ」
それだけ…
「そ、そうですか…」
兄貴らしいと言えば兄貴らしい。
でも…何してるかくらい言ってくれたっていいじゃないか。
「でも、文太良かったな」
「…え?」
「強心、ちゃんと生きてるじゃねぇか」
そうだ。そうではないか。兄貴が生きていると分かったではないか。
「そうだね。ありがとう」
「おうよ!」
やれやれ、全く。
いい友達をもったなぁ。
「続いて昨今における政治形態の状態についてのニュースをお伝えします。総理の急遽会談破棄について野党が厳しく…」
話し合いの後、せっかくだから夕食もと私は2人に説得しリビングにて出前をとり寿司を食べていた。
「総理大臣にもなって職場放棄かよ…」
「千君。総理大臣だって人間だから少しはおサボりしたくなることあるよ」
「いやいや2人とも。話してることおなしいでしょ」
微笑ましい会話にツッコミをいれ頬が緩む。
「でもさ。これ総理もアレなんじゃないかなって思うんだよね」
「アレ?」
なんだアレって?
私の疑問を立花さんが代わりに聞き返していた。
「なぁ。文太。ちょっと考えてみてくれよ」
「え、私が?うーん…」
いきなり私にふられる。
「ここ最近の政情…目立ったことは暴力事件…暴力事件…?」
「うん」
「え?え?」
なぜか神妙に頷く高林となにがなんだか分かっていない立花さん。
暴力事件。何かが引っかかる。
「暴力事件…暴力事件と言えば…?」
霊体…?
「テロリストたちの精神状態。思い出せるかい?」
高林が突然そんなことを言う。
「精神状態…?あっ!!」
霊体の呪いを受けた者達。
なるほどな。
「どうやら文太も察しがついたようだね」
高林も同じ考えらしい。まぁ深くまで言えば違うのだが。
「ど、どういうことなの?千君」
立花さんはやはり理解していないようだ。
「あのさ。国内暴力事件の被害者については知ってる?」
少し自慢気に言う高林。
「被害者?えーと、精神状態が安定していないってことかな?」
少し難しい顔をしながらも答える立花さん。
「正解。つまり?」
「えっ、つまり?つまりって…えっと…あっ!」
立花さんがなにか閃いたような顔をすると高林が勢い良く指さしながら立ち上がる。
「そう!今ネットで話題になっているんだよ。如何にも怪しいオカルト、だけどね」
「じゃ、じゃあ。今の総理大臣もそのオカルトに?」
「そういうこと。まぁ、ただの一般学生の考えることだけどね」
にやけながらも説明は終わったと座り込む高林。
だが、そのたかがオカルトがただのオカルトじゃないとすれば?
本当の呪い、っと言えば?
調べてみる価値、ありそうだ。
ラム。やること決まったよ。
「さて。そろそろ帰ろうか紗希」
「うん。そうだね」
お寿司も話のネタも無くなったところで高林と立花さんが立ち上がりながら帰りの準備を始めた。
「それじゃあ、片付けは私がやっておくから気をつけて」
「たった今入った緊急ニュースをお伝えします。会談破棄などを続いて起こしたとされる総理が新宿西口にて姿を現しています。周囲にいる国防長官等が何かを説得しているように見えますが詳しい状況はまだ分かっていません。繰り返し、報道します」
突然番組内の様子が一変し私達はテレビに目を引き寄せられる。
「お、なんかすごいことになってるねー」
「う、うん」
「新宿…まだ電車は…動いてるはずだな」
好都合だ。
「文太?」
「文太君?」
「2人とも、ごめん!私急用が出来たので失礼する!鍵もかけなくていいしお寿司の箱とかもそのままでいいから!」
「お、おい?文太!?」
呼び止める2人を背に私は家を飛び出していった。




