☆13☆ 生誕祭1日目、騎士剣舞祭(幼女と共に) ①
「「!?」」
「はぁっ!はぁ、はぁ」
俺は目が覚めてから、シャツが汗だくになっている事に気がついた。
どうやらまた俺は悪夢を見ていた様だ。
「大丈夫か?お主?またうなされていたぞ?」
そうか、また王女様は俺の事を見守ってくれていたのか……。
いつもいつも、本当に有難い。
この可愛く、心配してくれている姿を見て、俺は”頑張らないと”という気持ちになるのだ。
この娘のお陰で毎日癒されている。
”いつもありがとうございます。王女様。”
俺は心の中でそう思いながら、王女の頭を撫でた。
「ふぇ?えへへ!」
王女は”もっと撫でて!”と言わんばかりにピンクのツインテールの髪をフリフリさせた。
ヤバイ……もの凄く可愛い……このまま抱きしめてやりたい………。
はっ!?いかんいかん。この娘からみたら俺はおっさんだ。
思わず欲望に埋もれそうになってしまっていた。
危ない、危ない。
「そっ、それにしても王女様、昨日は大丈夫でしたか?随分と疲れていらっしゃった様でしたが…?」
俺は慌てて王女に話を振った。
「あぁ。昨日の事はあまり覚えていないのだ。多分疲れていたのだと思うが。でも、もう大丈夫だぞっ!今日から生誕祭が始まるしっ!妾、元気だから!」
そう王女が元気一杯に言った瞬間、俺の部屋のドアが勢い良く開き、昨日、姿を消していた黒髪の幼女が部屋に入ってきた。
ガチャ、バンッ!
「おはようっ、おうじょ様!あっ、居たの?アルシュレット。アルシュレットは永遠に眠ってれば良かったのに。」
(死ねっ、クソ王女がっ!やった!きょうもアルシュの顔がみれて本当に嬉しい!永遠に私の側に居て、アルシュ。)(←ディアナの心の中)
「あぁ、おはようディアナ。相変わらず辛辣だな……」
ここまで幼女に辛辣に扱われると、逆になんかドキドキしてくる……?
あれ?
これってヤバイんじゃね?
そう思っている俺の事など無視してディアナは王女に話しかける。
「で、なに、はなしてたの?おうじょ様?」
(なにアルシュに媚び売ってんだ?ごら?全部ドアの前で聞いてたからお前の会話内容全部把握してんだぞ、あぁん?お、う、じ、ょ、さ、ま?)
「いや、たっ、ただこのバカ執事にちょっと撫で撫でされただけだぞ……」
ディアナの顔が青ざめて行く。
俺に頭を撫でられる事を想像でもしたのだろうか?
ディアナにとったら死んでも、俺にそんな事をされるのは嫌であろう。
「そ、そうなの?そっ、それはさいあくだね。」
(……………………………。)←最早、ディアナの心の中には言葉すら出てこない。
「ところでディアナ、昨日は何してたんだ?全く見かけなかったんだが?」
「昨日は別にフレイアさんに連れ去られてないからっ!」
(昨日はフレイアに連れ去られて、フレイアと一緒に寝らされたのっ!)
なるほど……、要するにディアナの事を大層気に入ってしまったフレイアに無理やり連れ去られて一緒に寝らされたってところか?
段々と分かってきたのだ。この娘はよく反対の言葉を俺に対して口にするということに。
まぁ、普段俺に対して投げかける辛辣な言葉の数々は、本当の事であろうが。
「そうかそうか、大体ディアナの言いたい事が分かってきたぞ。」
「お主、今のディアナの発言で言いたい事が分かったのか?」
「えぇ。」
俺がそう言うと、ディアナはハッとした顔になって、何故か頬を赤らめながらこう言った。
「アルシュレット、大っ嫌いっっ!」
(アルシュ、大好きっっっっ!!)
「今更言われなくても知ってますけど!?」
「ちっ!ホント、賢いんだから!」
(ちっ!ホント、バカなんだから!、別にアルシュのせいじゃないけど!)
そう言って、ディアナは俺の部屋を走って出て行っしまった。
なんかいきなり褒められたな……。
なんで?
やっぱりこの娘の事は良く分からない……。
そう思いながら俺は王女と共に朝食を食べに行った。
最近はディアナもなんだかんだ言って俺たちと一緒に朝食を食べてくれている。
反対の事ばかりを言っている様だが、意外と素直なのだ。あの娘は。
言っている事が矛盾している気がするが、まぁ良しとしよう。
☆
そうして、生誕祭1日目が始まった。
現在午前9時。間もなく、開会式が開かれる所だ。
俺達は今、その開会式が開かれる、ドーム状になっている建物の中にいる。
建物がどんな形かと言えば、ローマにあるあの有名な観光地であるコロッセオみたいな形だ。
まぁ、勿論あれよりも形は崩れていなくて、どこもかしこも魔法具で整備されている。
言うならば、小綺麗な未来的なコロッセオと例えれば分かるだろうか?
いや、分からないな。まぁいいか。
ここで、生誕祭のメインイベントの1つである、”騎士剣舞祭”が行われるらしい。
”騎士剣舞祭”とは、名前通り、騎士が剣舞する祭りである。
簡単に説明すると、”姫”役の女の人と、
”騎士”役の男の人が2人で一組になって
一緒に戦うという競技である。
ちなみに別に姫役を男が、騎士役を女がやってもいいらしい。
姫役が基本、魔法で援助、
騎士役が基本、剣で戦う。
まぁ、俺は10年前の生誕祭の記憶が無いのであまりうまい説明ができないのだが。
ちなみに俺はその競技に出されてしまう運命となってしまっている。
姫”役が王女様で、”騎士”役が俺だ。
ちなみに王女は魔法が使えないので、俺が死ぬ気で守らなければならない。
前々から王女はこの騎士剣舞祭に出たがっていたのだ。10年に1度しかない祭りであるから出させてあげたい。
「ほわ〜やっぱ広いな〜ここは、うへっ、うへへっ!」
ルシアがアホ面で周りを見渡している。
「黙ってくれませんか?この王室の恥晒し野郎が」
いつも通り、テリアはルシアに対して辛辣だ。
俺達は手を円柱型の魔法具にかざして、ドームの中に入って行った。
☆
「我が国、建国の起源は、1700年前以上に遡りま……」
ただいま開会式の真っ最中だ。
王が一生懸命話している様だ。
だが眠い。寝よう。そう思い、目を瞑った瞬間にフレイアに殴られた。
ゴスッ、バキッ!
ちなみに2回殴られた。
王が話している貴賓席の所に王女がいる。
なんか王女が滅茶こっち見てるな……。
大人しくしておこう。
結局、開会式が終わるまで、俺は寝る事ができなかった。
☆
視点変更
(アルシュレット→とある貴族)
はっはっはぁーっ!
あの雑魚執事、寝ようとして隣の奴にど突かれてやがるっ、2回もっ!ははっ!雑魚が。大事な開会式に寝る奴がどこにいるんだよ?だから雑魚なんだよ?
この、大っ、大、大貴族の次期当主である
我、レイカス=パースが、騎士剣舞祭において彼奴を叩きのめしてやろう。
そして、我の強さを見せつけてあの可憐な一輪の花の様なマイッッッッハニー(王女メロア)に求婚して我がものにしてやろうではないっ、かっ!
はっはっはぁーっ!
☆
視点戻。
(レイカス→アルシュレット)
おー。結構レベル高ぇなぁ。
そう思いながら俺は第1試合を観ていた。両者必死な顔で派手に斬り合っている。姫役の人達も魔法を打ち合っている。
あれ?俺が戦う時って、王女を守りながら、実質1対2で戦う事になってしまうのでは?
あれ?これってヤバいんじゃね?
後、俺はもう一つだけ疑問に思ったところがあったので、隣にいたテリアに質問してみた。
「なぁ、テリア、この試合って死んだらどうするんだ?なんかマジもんの剣で斬り合ってるみたいだけど?後、魔法とか当たったら体吹っ飛びそう」
そう俺が言うと、テリアは試合を観戦しながら、適確に答えてくれた。
「死んだらそれまでですね。まぁ、致命傷位なら回復魔法で何とかなるでしょうが、首を刎ねられたり、頭を貫かれたり、即死してしまった場合はどうしようもないですね。聖カタリアナ王国の主流の魔法は回復魔法なので、回復魔法が相当優秀ですから、胸を貫かれる位なら完治させる事ができますが 」
「なるほど」
要するに、一応は死ぬ可能性があるって事か………。
何か痛そうだな………。
だるいな……………………。
「でも大丈夫ですよ。貴方は死にませんから。……たぶん……たぶん」
そうテリアが、俺を気遣ってくれていた時に、アナウンスが鳴った。
〜エントリーNo.21、
”騎士”アルシュレット=マクレアス、
”姫”聖カタリアナ王国、第3王女メロア=カタリアナ様
エントリーNo.22、
”騎士”ルシア=コートス、
”姫”フレイア=シーアネレスト
闘技場にお入り下さい。〜
!?、第一戦はルシア達とやるのか?
「そっか、アルシュレットとやる事になったのか。宜しくな!」
普段おちゃらけているルシアの眼はとても真剣だ。一応、こういう所ではこいつは真面目にやるらしい。
「おう。」
こいつはバカだが強い…気を引き締めていかないとな………。
そう思いながら、俺は闘技場に入った。
ブックマーク、ポイント評価、是非お願いします!