☆12☆ 生誕祭前夜 幼女の静けさ
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「ん、んっ……?」
あれ?俺、寝てたのか?
「取り敢えず前世の事は思い出したかい?」
神は銀色の長い髪をかきあげながらそう言った。
結構ハードな前世だったんだな。俺の前世って。ていうか、俺を殺した係長は犯罪者系ロリコンだったけど、俺も相当なロリコンだったな。
「あぁ。思い出した。ていうかお前…何者だ?」
「だから神だって」
ここまでされたらこいつが”神”であると信じざるを得ない。
前世を思い出させる事ができるのだ。
そんな事は神にしか出来ない、はず。
「で、俺がこの世界に産まれてからの11年間の記憶はどうなるんだ?思い出させてくれるんじゃなかったのか?」
現在俺は21歳だが、10年以上前の記憶が無い。
この神は俺に前世の記憶を思い出させる前に言ったはずだ。
”10年前の記憶”を取り戻させてくれると。
「いや〜それがねぇ、その記憶喪失はどうやら君が勝手にした訳じゃなくて、誰かに”奪われた”らしいんだよなぁ…」
「……どういう事だ?」
「だからぁ、そのまんまの意味だよ。
君は、誰かさんの故意によって記憶を失ったんだよ」
何故……?誰が、何のために?
「おそらく、”あいつ”だろうね。君の記憶を消した、いや、奪ったのは」
「……”あいつ”って誰の事だ?」
「そりゃ、あれだよあれ。あいつだよ、あいつ。ハァ、ワカンねぇの?」
いや、わかんないですケド?
「はぁ、仕方ねぇ人だな。君は」
なんかイラっとくんな…こいつ……。
「俺もわかんねぇっす」
なんなんだ………こいつ…………。
「てか、前世の記憶は戻ったっしょ?まぁ、君が今の世界に産まれてからの10年間分の記憶の方は誰かにまるごと奪われたっぽいから、その奪った奴から取り返すしかねぇ。という事です。アユ、アンダスタン?」
まぁ、語尾はウザかったけど言いたい事は大体分かった。
「要するに、俺の記憶を奪ったを突き詰めて、ぶっ倒して、取り返せば良い。という事だな?」
「まぁ、そういう事にはなるが、そう簡単にはいかないよ?”あいつ”、メッチャ強いし?多分、神である我より強いし?だから、”あいつ”を倒すのに協力して欲しいって言ってんじゃん?」
えっ?”あいつ”っていう奴はそんなに強いのか?ていうか、やっぱコイツ”あいつ”の事知ってんじゃねぇか。
「ならその”あいつ”っていう奴の事教えろよ……」
「あっ!ヤベッそろそろ戻らないとっ!?朝ドラに遅れるっっ!!じゃ、バイビー」
と言った瞬間、神は消えた。
神にとっては
俺の記憶を奪った奴であり、かつ、神の敵である者の正体を俺に教える<<<(越えられない壁)<朝ドラ
という価値基準らしい。
神にとっても”あいつ”は厄介な敵であるっぽかったが、そんな敵に対抗するための仲間を自分に加える事よりも、
神にとったら朝ドラを時間通りに見るの方が大事な様だ。
なんて奴だ。ぶっ殺してやりたい程自由奔放だ。ハハッ。ハーハッハ!
殺してぇ………。
まぁ良い。俺がその”あいつ”という奴を見つけ出そう。
10年前の記憶が戻れば女王陛下の死んだ理由が何か分かるかも知れない。
まぁ、急いでどうこうなる事じゃないが。
そんな事を思っていると、アレックスの”もう時間だよ”という合図が聞こえてきた。
「ごぉぉぉぉぉう」
「おう、帰るかアレックス」
と俺が言うと、
「おぇぇぇぇぇっ」
と、アレックスは吐きながら返事をした。
またゴブリンでも食っちゃったのだろうか?
仕方の無い子だ。あんなばっちぃ物、食うんじゃありません!っていつも注意してるのに………。
あれっ?なんかおかしいぞ?
いつの間にか、いまにも、テレテレ、テ、テ、テ、テ、テ、テと、ポケ★ンの進化のbgmがかかりそうな勢いでアレックスが光輝いている。
アレックスって進化するんだな。レベルはどの位なのだろうか?
とぼぉぉっと思いながら観察していた。
出来ればサ★シのピ★ッチュウ並みに俺TUEEE系モンスターになって欲しいものだ。
とか思っていたが、結局何も起こらなかった。
ただ光輝きながらゴブリンを吐いただけだった。
何か吐かれたゴブリンは、”ウキっ?ウッキィィィー”と、叫んで困惑しながらも嬉しそうに森へ帰って行った。
良かったな……消化されてなくて…。
「大丈夫か?アレックス?」
「ごううっ……」
少し元気が無い。
だからあんなどんな菌が付着してるか分からないばっちぃ物は食っちゃだめだっていつも注意してるのに……。
ST★P細胞でもついてるかもしれないじゃないか……。
それにしてもなぜ光輝いていたのだろうか?
分からない。まぁそんな些細な事はどうでもいいか。
「俺を乗せて城に帰れるか?」
現在7時半。今からアレックスに乗って帰れば丁度仕事を始める時間の直前位に帰れるだろう。ていうか、異世界に転生してまで仕事の開始を気にしなきゃいけないとは、俺はやはり永遠の社畜となる運命なのだろうか?
まぁ、この世界でなら、ずっと社畜でも良いかも知れない。
この世界の仕事は楽しい。少なくとも、俺が前世でやっていた仕事よりもずっと。
「ごうっ!」
アレックスは少しだけ元気を取り戻したらしい。
主を連れて行かなければならないという使命感に駆られたのだろうか?
なんて有能なんだっ!やはりルシアとは違うっ!アレックスには社畜としての才能を感じる。
「じゃ、行くかアレックス!」
「ごううっ!!」
そう意思を交わしあって、俺たちは城に向かって飛び立った。
☆
そういう事があった生誕祭準備期間の5日目が終わり、6日目もあっという間に過ぎた。
そして現在、生誕祭”準備期間”最終日である7日目
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今、城の中は今までにない程、慌ただしい。何故なら、次の日から10年に1度の生誕祭だからだ。10年前の記憶が無い俺にとって生誕祭は初めての経験みたいなものだ。
現在城のロビーでは様々な人が行ったり来たりして忙しく歩き回っている。
普段の城の静けさが嘘みたいだ。
そして、慌ただしく1日が終わり夜になった。
☆
「王女様、とうとう明日ですね」
「………………………。」
王女は虚空をながめながら何かを考えている様だった。
「王女様?」
「!?アルシュレット!ゴメン、聞いてなかったよ。」
?なんか王女の様子がおかしいな?
疲れているのか?
「大丈夫ですか?王女様?」
「えぇ。大丈夫よ。」
普段、王女はこんな喋り方はしない。
恐らく、王女は大層疲れてらっしゃるのだろう。
今日の仕事量は、流石にキチガイじみていた。
もう成人している上に前世ではブラックな企業で社畜をしていた俺でさえも今日はとても疲れたのだ。
ましてやまだ14歳の王女様なら尚更だ。
「取り敢えず、もう寝てください」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
そう言って、王女は去って行った。
その日、王女は俺の部屋には来なかった。
☆
俺はなんとなく不穏な空気を感じながらも、ディアナもいなかったので今日は1人で寝た。両手にあの小さくて温かい感触が無ければ、それはそれで悲しいものだ。俺はそう思いながら目を閉じた。
☆
明日から、5日間にわたって開催される、生誕祭が始まる。
俺は色々な事をこの5日間で知る事となる。
そして、様々な事を経験する事となる。
さらには後戻りが出来なくなる状況に陥ってしまう。
俺は生誕祭の最終日である5日目に決めたのだ。
生誕祭の最終日に死んでしまった”あの人”を蘇らせる為に、ザナディア帝国の皇帝に成り上がってやると。
俺はそう心に誓ったのだ。




