インタビュー エミリーの書き起こしメモより
・二人と初めて会った時のことについて 印象も覚えていたら
『二人と初めて顔を合わせたのは幼少の剣術大会だったよ。お父様に教わった、相手の剣を受け流してカウンターする必殺技を引っ提げて、絶対に負けるはずがないってお墨付きも貰って息込んでいたんだ。でも気が付いたら地面に転がされていたよ。僕はライバル心を持っていたけど、彼らは僕の事を気にしてなかったと思う。
それで、二人の印象だっけ? ハヤテ君は負けず嫌いの自信家って感じがして、エマさんも負けず嫌いなのは同じだと思うけど、最初は僕と似ていると思ったかな。ほら、同じ最強に挑む者としてさ。まあ見事に実力で裏切られたわけだけど』
・負けて挫けなかったのか
『最初にハヤテ君に負けた後はがっつり挫けたよ。自室に数日引き籠ったし、剣も握れなかった。だけど、それ以上に堪えたのは、周りの人がみんな口を揃えて僕に言ったんだ、“あの子が相手じゃ仕方ない”って。それが一番悔しかった。その時はハヤテ君とエマさんに勝ちたいって思うよりも、周りを見返したいって気持ちで立ち直ったね』
・いつから盾を武器にしていたのか
『大会は運営が用意した木剣を使用する決まりだったけど、別に苦手じゃなかったよ。でも、その後からハヤテ君の剣術を封殺するために盾を選んだんだ。
中等部から剣以外を使う人もいたけど、僕みたいに盾を武器に戦う人はいないから、そこだけは目立っていたかも。でもその盾に敗れて悔しい顔をする人たちを見ると、見返したいって目標は達成したように思えたよ』
・中等部最後の期末テストで手助けした事について
『後悔はしてないよ。もし僕が授業をまとめたノートをハヤテ君に渡さなければ、多分ハヤテ君には勝っていただろうね。でも、やっぱりそれじゃあ意味がない。全然対等じゃないし、エマさんにも負けていたわけだし。エミリーだって、迷っていた僕に代わってノートをハヤテ君に渡してくれたでしょ? そのおかげで僕は順位を受け入れられたんだよ』
・中等部での剣術大会について
『この時のことはエミリーが一番良く知っているじゃないか。え? 忘れた? そんなバカな……、まあいいけど。あの時はエミリーが馬車に轢かれそうになったのを僕が助けたじゃないか。代わりに僕が足を怪我したくらいで済んでホントによかったよ。……え? 申し訳ないことをした? そんなこといわないでよ、おかげで君との距離がより縮まったんだからさ。それに、ハヤテ君に負けっぱなしのあの時の僕じゃあ、選考に選ばれることもなかったし。だから、エミリーを助けられてよかったというのはちゃんと本心だから』
・高等部の学業について
『言い訳をするつもりはないけど、当時の僕は剣術大会で彼らに勝つことだけを考えて特訓していたから、学業についてはまあまあ疎かにしちゃったかな。エミリーが手助けしてくれなかったら上位三十にも入れなかっただろうね。それでも常に首席と次席だったあの二人には完敗だよ、一体いつ勉強していたんだろう?』
・最後の剣術大会について
『一切の言い訳もなく完全敗北といわざるを得ないね。恐らく最後となる真剣勝負、その日のためだけに毎日特訓して、ハヤテ君のためだけの対策も講じて、それでも負けた。清々しいほどの完敗で、どうやって三位決定戦を勝ったのかは覚えていないんだ。壇上で泣くことすら出来なかった僕の代わりに、エミリーが顔をくしゃくしゃにして泣いていたのだけは覚えているよ。改めて、ありがとう。おかげでまた前を向くことができた』
・学生時代にやり残したことなどあれば
『実をいうと、僕はハヤテ君よりエマさんを相手にする方が苦手だったんだ。エミリーにも話していなかったんだけど、実はエマさんとは幼少の頃に、町の小さな大会で何度か対戦して、あの絶対的な氷の壁を前になす術もなく敗北しているんだ。それが恥ずかしくてね、隠してたんだ。だから最後の大会では準決勝でハヤテ君に勝ち、決勝で待つエマさんにも勝つ。それが本当の目標だったんだけど、中等部以降、一度も大会でぶつからなかったのは幸いというか消化不良というか、それだけかな』
・冒険者になってみて
『冒険者登録でいきなり最高のAランクのタグを貰って、正直な話、評価的には彼らに追いついたんだなって思って素直に喜んだよ。うん。翌日には彼らがSランクだって知らされてかなり落ち込んだけど』
・勇者について
『僕は勇者になれない。そんなことは初めから分かっていたさ。そういや、勇者の話が出ると、ギルド長からは申し訳なさそうにご飯を奢ってもらう機会が多かったんだけど、あれなんだったの? ギルド職員のエミリーなら何か知らない? Sランクにしてあげられなかったお詫び? はぁ~なるほど? そんなこと気にしないでよかったのに。せめて勇者パーティの補助として付いて行きたかったけど、オリヴィアさんの魔法で、瘴気から守れる人数に限りがあったから選ばれなかったんだよね? え? 今度オリヴィアさんに説教する? いやなんで?』
・魔王復活までのあいだについて
『ひたすらに魔物を狩ってたよ。エミリーに都合のいい依頼を斡旋してもらって。はは、僕たち結構ズルいことしたなぁ。それで稼いだお金に物をいわせて道具を揃えて、相棒の盾を対魔王仕様に改造して、しばらくは瘴気に耐えられるような魔法も作り出して。後は研究かな? 数少ない文献から魔王のことを調べて、魔王オルトロス相手の対策を練り上げる毎日だったよ』
・魔王討伐に貢献したことについて
『貢献したなんて思ってないさ。もっと余裕をもって合流しようと思っていたのに、研究に没頭して出遅れちゃったし、最後は気絶して王都まで運んでもらったし。……それに、僕はただ、人生をかけて伸ばし続けたこの手が、彼らに届くと信じて盾を振り回したかったんだ。がむしゃらに、魔王を討伐するためというよりかは、彼らに、僕の努力を見てもらいたかった、というのが正しいかな』
・寝室に並べてあるメダルについて
『見事に全部銅色でしょ? 一度だって決勝戦の舞台に上がれなかった僕の人生みたいなものだね。でも、真ん中に飾ってある白金のネームタグは僕の集大成だ。あれだけは、やっと彼らに認めてもらった証。追いかけて伸ばし続けてきた腕を失い、足も負傷して、それでも、僕をSランクの冒険者と認めてくれた。もう冒険者を引退しちゃったから、本当にただの飾りだけどね』
・最後に、お嫁さんについて
『本人の前で語るとかなんか恥ずかしいな。エミリーは初めて会った時からずっと僕を応援してくれていたし、今も僕の足になってくれている。ずっと助けられているよ。落ち込んでいた時に励ましてくれたし、迷っていた時はズバッと解決してくれる。君がいてくれたから最後まで頑張れたのは間違いないよ。本当にありがとう。はやく義父様にも認めて貰えるようにリハビリを頑張らないとな。……え? 義父様と話してくる? ちょっと待って! 力づくで解決しようとするのはエミリーの欠点だよ!』
・追記 二人に伝えたいこと
『言いたい事なら山ほどあるよ。だけど全てを吐露したら恨み言まで口にしてしまいそうだな。……内緒にしてほしいんだけど、『ありがとう。あなたたちがいたから、僕は独りじゃなかった』……お見舞いに来てくれた時にそう伝えられたらよかったけど、やっぱり恥ずかしくって。これはずっと心の中に留めておこうかな、僕の目標となってくれた二人を微妙な空気にさせたくないからね』
おわり




