告発
研究員が去る。
レインは紙を見る。
『見つかったら殺される』
「・・・」
「ハウンド。」
レインは紙を見せた。
ハウンドは眉をひそめる。
「罠の可能性は?」
「ある。」
「だが。」
レインは研究員の背中を見る。
「本気で怯えてた。」
「演技ではないと?」
「少なくとも俺にはそう見えた。」
ハウンドは少し考える。
「なら私はあちらを調べる。」
ハウンドは黒い扉へ視線を向けた。
「おい。」
「二手に分かれた方が効率的だ。」
「問題起こすなよ。」
「善処する。」
(絶対起こすなコイツ。)
レインは心の中で呟いた。
二人は別行動を開始する。
レインは研究員を追った。
研究員は何度も周囲を確認しながら歩いている。
まるで誰かに監視されていることを恐れているようだった。
人気のない設備区画。
研究員が足を止める。
「・・・来たか。」
振り返った男の顔色は悪かった。
目の下には濃い隈ができている。
神経が擦り切れているのが一目で分かった。
「その紙。」
研究員が言う。
「読んだか?」
「ああ。」
「誰に殺される?」
研究員はすぐには答えなかった。
代わりに周囲を見回す。
「時間がない。」
「ニシルは普通の研究施設じゃない。」
「それは知ってる。」
「違う。」
研究員は首を振る。
「お前たちは何も知らない。」
「ここは研究施設じゃない。」
「選別施設だ。」
レインの表情が変わる。
「選別?」
「才能だ。」
研究員が震える声で言う。
「政府とアララトが進めている新制度。」
「人間の価値を才能だけで決定する。」
「その基準を作っているのがニシルだ。」
レインは黙って続きを待った。
「才能の評価。」
「人格評価。」
「適正評価。」
「危険度評価。」
「全て数値化している。」
「そのための施設だ。」
「適性評価室か。」
研究員が驚いた顔をした。
「知っているのか?」
「少しな。」
研究員はさらに声を潜める。
「退職した研究員の話も聞いたか?」
「ああ。」
研究員が苦しそうな顔をする。
「退職なんかじゃない。」
「・・・」
「消されたんだ。」
レインの目が細くなる。
「何のために?」
研究員の顔色が変わった。
「それは――」
その瞬間だった。
ピーーーッ!
ピーーーッ!
ピーーーッ!
施設内に警報が鳴り響く。
赤色灯が一斉に点灯する。
研究員の顔から血の気が引いた。
「なっ・・・!?」
レインは天井を見上げる。
(あいつだ。)
ほぼ確信だった。
バングルに通信が入る。
『レイン。』
ハウンドだった。
「何だ。」
『少し問題が発生した。』
「具体的に。」
『警備員を一人投げた。』
レインは額を押さえた。
「帰れ。」
『何故だ。』
「勘弁してくれ。」
研究員は絶望したようにその場に崩れ落ちた。
「終わりだ・・・。」
「見つかった・・・。」
レインは研究員の肩を掴む。
「落ち着け。」
「何が起きる?」
研究員は震えながらレインを見る。
「こうなってしまっては・・・。」
遠くから怒号が聞こえる。
警備員たちが慌ただしく走り回っている。
研究員は施設の奥を指差した。
「あそこだ。」
「あの扉の奥にセクターBがある。」
「そこに全てある。」
「ニシルが何をしているのか。」
「何のために人を消しているのか。」
「全部分かる。」
研究員は唇を震わせながら続けた。
「本当は・・・。」
「誰にも知られてはいけない場所なんだ。」
「本当に知りたいなら・・・行け。」
「もう今しかない。」




