苛めた家族のその後のその後
ある温泉を売りにしている歓楽街。その近くの高級な宿に三人はいた。一番いい部屋でくつろぐ三人。伯爵領を出て一週間。五日間は痕跡をたとれないように移動し続けだった。その為疲れがたまっていたのだ。
「はあ、ホントに怒濤の三ヶ月だったな」
のんびりしたドレイクに、妻のルーザは聞く。
「でも、ホントにあれで良かったの? あの娘に任せて」
「ああ、もともとだいたいの仕事はできる娘だったよ。ただ、経験が足りないだけ。関係者との顔繋ぎも出来たし、あのデブ専もいる。二人なら何とか出来るさ」
と、言うドレイク。しかし、その横顔は寂しげだった。
「ほんとはプロジェクトやり遂げたかったのでしょう?」
「ほんとはな。しかし、俺は伯爵代行。本来、俺は伯爵としての権限はない。あの娘が一言言うだけで俺のやって来たことは水の泡になるところたった。俺には不相応だったんだよ。最初からな」
ルーザはいたわるように夫を見た。
「まあ、頑張って来たんです。少し休んでください」
「ああ、そのつもりだ」
ここでリムルは不思議な顔をする。
「でも、あんなことされたのに、父さんも母さんもお姉樣に怒ってないの」
二人ともにやりとした。
「いや、結構しごいて来たからな。ほんとは無理な案件を、押し付けたりしてな。泣きついて来たときは結構いびってストレス発散してきたぞ。まあ、最後には涼しい顔して解決してやがったしな」
「私も結構苛めて来たわよ。礼儀作法の特訓に魔法の授業。最終的について来られるようになってつまらなかったわ」
が、その顔には少し笑顔がこもっていた。
「で、リムルの方はどうなんだ」
聞かれたリムルはあっさりしたものだ。
「うん、最初は仲良くして、復讐しようと思ってたのよ。でも、意外と好い人でさ。お姉樣。スイーツなんかは凄い知識だし、本なんかいっぱい読んでてかなり話が合うし、デブ専のほうも意外とファッションセンスあるし、話してて楽しかった。まあ、二人ともらぶらぶでスッゴク胸焼けするけどね」
ルーザは笑った。
「なら、リムルは残っていても良かったのよ」
「無理。お貴族樣ってたいへん。色々な作法とか、交遊とか。一皮向けるともうどろどろ。あんなとこ二度と行きたくないわ。まあ、お姉樣たちにならたまに会いにいきたいかな」
「ま、あまり頻繁に行っても困るだろう。もうすぐ新婚生活するだろうからな」
「そうね。しばらく二人きりにした方がいいわね」
リムルは二人の目が泳いでいるのをみて、思いきって言ってみた。
「なんか、取ってきたの」
一瞬動きが止まる二人。リムルは、二人に優しく言った。
「怒らないから正直に言ってみて」
「……ちょっと、退職金がわりに当座の生活費を貰って来た」
「あら、あなたもなの? 私も」
「どれくらいなの?」
リムルの追及に二人は金額を言う。かなりの額だ。退職金としてはかなり多い、と、言うより破格に多い。
「ちゃんと言えば退職金くらい、お姉樣なら出してくれるわよ」
と、リムルは言う。が、二人は首をふる。
「二人はこれから金がいくらあっても足りなくなる。プロジェクトとか、結婚式のか。そしたら出してはくれないさ」
「……まあ、仕方ないわね」
リムルは、とりあえず大目に見た。彼女は貴族樣の世界に戻りたくはない。それに、色々両親は領地のために働いていたのだ。報酬位貰って貰って悪くはない、と思った。少し以上多すぎるが。
「いつか、返しにいこうね」
リムルははっきり言う。それに二人は生返事を行う。あ、これ返す気ないな、と思った。
それでも三人、疲れていたらため、すぐにその夜はぐっすり宿で休んだ。
それゆえに彼らは王の影が宿に侵入したことに気づかす、簡単に捕縛されたのであった。
王の御前に引き出された三人。拘束こそされているものの、三人の儀礼に問題はない。王は面白げに笑った。
「学園ぶりだな。ドレイク。貴公がシーラ子爵の父親とはな。そして彼女らがお前の家族か」
ドレイクは、眼を細めた。
「王よ、ひさしぶりです。それはともかく、確かにシーラは私の娘ですか。確か伯爵だったはず」
王は手をふる。
「ああ、彼女は国に損失を与えたとして、ほとんどの領地の返上を私に願った。で、それを受け付けた。男爵領位の広さだが、プロジェクトのために子爵にしている」
「ほう、王よ。あの娘は何も問題はおかしてない。あるとしたら私だ。必要ならば、私を処罰すればいい」
「わかった。その言葉忘れるなよ」
「お待ち下さい」
と、ここでルーザが発言した。彼女は夫が極刑にかけられるとおもったのだ。
「この人は、繊維産業を設立した実力者。この人を処罰するのは国の損失。処罰するならこの私を処罰してください」
「なに言ってやがる! 実際にプロジェクトに損失を与えたのは俺だ。お前が罪を被る必要はない」
ドレイクは、焦ってルーザを庇う。がルーザは気にも止めない。
「いえ、私も色々関与しました。この人は真面目に仕事をしてましたから後ろ暗いところはありません。むしろ私が色々しました」
「なに言ってやがる。俺の方が主に運営していた。責任は俺にある」
ここで、リムルが発言をもとめた、
「えっと、王さま、父さんも母さんもかなりの能力もっているんですよね」
面白そうにリムルを見る王。
「まあ、な。二人とも学園では最高の人材だったしな」」
「それなら、王樣、器の大きい所を見せて、みんな許してくれない? かなり
大きな恩を売れるよ」
「そういう手もあるか」
と、王は笑った。しかし、次の瞬間酷薄な顔を見せる。
「だが、だめだ。お前らは重罪だからな」
三人は、驚く。
「えっと、私たちの罪はもう、精算されているのではありませんか?」
にやりと笑う王。
「ああ、旧伯爵領ではな。しかし、国法からすると裁かれてはいない。特に精神操作系の魔法は重罪だ。広めたりしたら極刑に値する」
ルーザとリムルは、顔を青ざめた。その観点からすると彼女たちは確かに極刑だ。
「さらにドレイク、お前は旧伯爵領にて横領したよな。三ヶ月間。ああ、妻もか」
今度はドレイク夫婦が青ざめる。身に覚えがあるからだ。
「そこで、お前らに刑罰を与えなければならない。すまんな。本来なら国の為になることをしてくれたのだから。だが、罰しない訳にはいかないんだ」
そして、王は彼らに刑を言い渡した。
三人は絶望にうちひしがれる。
「はじめまして、子爵樣」
シーラが彼らを出迎えた。
男、仏頂面をする。
「お前のしわざか」
「そうですわ」
女も恨めしげに言う。
「まさか、恩を仇で返すなんてね」
「意趣返しですわ」
少女は怒っていた。
「信じてたのに」
「ごめんなさいね。でも、あなただけ仲間外れにするわけにはいかなかったの」
男が質問する。
「しかし、よく王を説得できたな」
「ショウのお父様から聞いたのです。父様は学園で将来を有望視されていたかた。王は何とか手を尽くして側近にしたかったけど身分のために泣く泣く諦めたとか。あ、義理母樣も学園で優秀と聞かされました。王は優秀な人材か好みですから」
頭をかくドレイク。
「かなり昔の話だぞ。あいつも諦めればよいのに」
「で、この子爵領に封じられるのですよね」
そう、ドレイクは子爵となった。そして与えられた領地は大半が元伯爵領。シーラが治める子爵領と隣接しているのだ。
ちなみに公爵領とも隣接しており、公爵とシーラが監視を行うこととなっている。
「ああ、魔道具産業を立ち上げろとさ」
ここでルーザも愚痴を言う。
「私も魔道具開発者として協力しなければならないわ。いい迷惑よ」
それを白い眼でみているリムル。
「母さんは、結構魔道具作りはすきたからね。あたし、本気で迷惑なんだけど」
シーラは笑った。
「私も大変だから安心して。ホントに忙しいんだから」
と、ここでシーラはにやりと、感情のない瞳で笑った。
「私だけ大変なのは嫌よ。みんなで分けあって忙しくなりましょう」
三人は青ざめた顔でアイコンタクトする。
「……わかった、できるだけのことはする」
「……私も微力ながら力を貸すわ」
「……大丈夫、お姉樣なら出来るわ。私みたいなへーぼんな小娘とはちかうから」
シーラは、にこやかに笑うとリムルの手をとった。
「大丈夫、私、社交は苦手なのよ。百戦錬磨のリムルが、いればスッゴク心づよい。このあと、お茶会があるの。手伝って」
「え、あの陰険な世界に戻らなきゃならないの。許して、お姉樣、父さん、母さん、助けて」
「大丈夫、怖い人いないから」
「助けてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
リムルが引きずられて行くのを二人は無言で見守っていた。
「バカな娘。いらないこといわなきゃいいのに」
「……ま、悪いことにはならないさ。ああ見えて、シーラは優しい娘だしな」
二人とその娘たちの前には、まだまだ試練が、待ち受けているようだった。
「ああ、逃げたい」
後にドレイクはこの国の繊維産業と魔道具産業を軌道に乗せ伯爵となる。そしてその後継者のシーラは産業を発展させ侯爵となった。なお、妹は王家に嫁いだとか逃げ出したとか。
シーラ。頭よし。ただし硬い。顔、絶世。体力、結構。クールビューティーから、動ける可愛い美人のコブタちゃんにランクアップ。
子爵になり、仕事の量もおさえ目になった為ショウと仲良くなり、リムルに砂糖を吐かせている。後に子供たちも両親のなかの良さを生温かく見るようになる。なお、両親とリムルの身元引き受けを公爵と行っており、王と共に彼らの罪状は秘匿している。以外と王を裏切らない両親に感謝している。
ショウ 頭普通に上乗せ。顔いいよ。体力結構凄い。シーラとはらぶらぶ。既にデブ専とばれている。能力は結構高いが目立たない。毎日、ドレイクに鍛えられている。
ドレイク。頭 スパダリ。顔 スパダリ。体力 スパダリ。元男爵三男。スパダリ。武力、経営能力、礼儀作法その他かなり優秀。子爵になってから色々忙しいようだが、領地を育てること自体はすきでやりかいがあり充実している。
ルーザとは学園の頃からの仲。しかし前伯爵に見出だされ本妻と婚約する。両親の圧力もあり仕方なく結婚する。本来は、伯爵領をもり立てつつ、白い結婚を貫き、ルーザの所に戻るつもりだった。しかし、本妻の怒涛のハニートラップに引っ掛かり、シーラをさずかる。その為一度はルーザを諦め、伯爵代行になった。しかし、本妻が病死したため、領地のプロジェクトを推進する手助けを頼み、元サヤに戻る。その為ルーザには頭が上がらない。でもラブラブ。
ちなみに王は学園の時から側近にしたいと思っていたが、身分の為に泣く泣く諦めた。しかしドレイクか伯爵になってから側近に迎え入れる。本人は前科かあるぞ、とか言って辞退したがったが、ならそのぶん働け、と無理やり働かされているらしい。
ルーザ 頭。国士無双。顔 冷たい。体力 そこそこ。ドレイクとは学園時代からの仲。結構一途に待っていた。
色々な事に興味深々で学力はトップクラス。しかし興味が持てないものは赤点であり、首席は取れなかった。
因みに幻覚魔法は禁忌魔法だがルーザのレポートで周囲に詳しい説明がなされ、禁忌魔法認定は取り消された。
子爵夫人となってからはその知識や礼儀作法で、社交界を乗りきる。なんだかんだ忙しくしているが、やりがいは感じているらしく充実しているみたい。
リムル。頭 尖っている。顔、かあいい。体力、実は普通 本人は普通の女の子と思っている。しかし、魔力は世界一と言えるほど多い。が、本人の自覚はない。ルーザの手伝いをしているため、魔法もかなりの力量なのだが、本人は普通とおもっている。(思いたがっている)
シーラの付き添いとか、代理とかで社交に行っているとき、ろくでもない連中に付き合わされた為、幻覚魔法を使いまくった。なお、魅力魔法より高度な精神操作系魔法だが、後遺症は遥かに少ないので、禁忌魔法認定は取り消された。
今ではシーラ、ショウたちと付き合って社交している。この人を二人の取り巻きは比較的性格がよいので何とかつきあえている。外見がいいので何人か婚約してくれ、と言われたが、色々やって誤魔化している。
本人はどうにかして逃げ出したいとおもっているが、仕事自体は面白いらしい。しかしシーラの真綿でくるむような包囲網にからみとられたままだ。
なお、たまたま王太子の暗殺を救った縁で付きまとわれることになるが、それは別の話。
もう少し、みんな良いとこも悪いどこもあるように書きたかったのですが、いまいち。ドレイクかもう少し能力低い設定だったのが、なんか、ヒーローになってしまった。