表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/62

勇者の白雪姫


 紅葉が周囲に散らばり、掃除が面倒になる季節。アルスたちが通う学校では、いそいそと何かの準備を行っていた。


「さぁ‼ 文化祭まで準備をしっかりするのよ‼」


 と、御代が大きな声でこう言った。そう。あと少ししたら文化祭が行われるのだ。


「御代会長。準備できました」


 日枝が持っているのは、巨大な御代が描かれた看板だった。それを見た雍也は、不思議そうに尋ねた。


「何これ? 売り物?」


「違います。ちびっこ受けになると思い、魔法少女のコスプレをした御代会長の看板をあちらこちらに置きます」


「うわー、いい迷惑。誰が得すんの?」


 その後、日枝は雍也にドロップキックを浴びせ、窓から投げ捨てた。


「日枝ー、ゴミを外に捨てないの」


「いや、ゴミ扱いしないでよ」


 雍也が窓から現れ、御代にこう言った。その時、雍也はあることに気付いた。


「あれ? 弓彦とアルスちゃんと三毛ちゃんは?」


「ああ。今年、あの三人はクラスの出し物に協力するって」


「何すんの?」


「演劇をやるみたい」


「へー」


 雍也はそう返事をし、部屋の中に戻った。


「俺らも演劇みたいなことをすればいいと思いますが」


「ステージの予約がもう取れないのよ。それに、私たちは演劇で活躍するんじゃなく、風紀を守るために活躍しないと」


「で、誰得も得しない会長の色気のないコスプレの看板を周囲にばらまくと」


「色気のないとか言うな‼」


 日枝は雍也に近付き、マッ〇ルスパークを決めた。


「長かった戦いよ……さらば……」


 雍也はこう言うと、気を失った。




 で、弓彦は絵の具で小道具の色を塗っていた。


「白雪姫をやるって言っても、結構本格的にやるんだな」


「だな。まぁ、こういうことしてるのってなんか楽しいよな」


 浦沢はこう言いながら、背景の気に色を付けていた。


「まぁな。でも、こっちは大変だよ……」


 弓彦は大きなため息を吐いていた。それもそのはず。今回弓彦たちのクラスが行う演劇は白雪姫。その白雪姫の役は。


「うう……服がぶかぶか」


「ごめんね三毛ちゃん。なかなか似合うドレスがなかったの」


「何とかごまかそう」


 白雪姫の役は三毛である。で、王子様の役は。


「ふむ。なかなかいい服ではないか」


「さっすがアルスちゃん‼」


「なんだか、本当の王子みたいだよ‼」


 アルスだった。実は、最初に役を決める時の多数決で、アルスの王子様姿が見たいという理由が圧倒的に多かった。その結果、アルスが王子様の役を引き受けることになったのだ。


「大丈夫か三毛? 別の服を用意するか?」


「それしか方法はないかも……これじゃあ動くにくい」


 と、女子たちは演技のことについていろんなことをしていた。逆に、男子たちは裏方の仕事を全部任せれたのだ。


「はぁ、俺たちも劇に出たいなー。弓彦、岳人、お前らもそうだろー?」


 浦沢はこう聞いたが、二人はすぐに答えを出した。


「俺はパス。セリフを覚えるの苦手なんだよね……」


「同じく僕も。生徒会の仕事があるんだ。それを抜きにしても……あまり演技に自信がない」


「そうなんだ。目立つチャンスなのによー」


「アルスのことがあったから、もう目立ちたくない」


 弓彦はこう言って、作業の方を進めた。




 その日の夜、弓彦が夕食を食べ終わった後、アルスが近付いてこう言った。


「弓彦、ムーン。今日も手伝ってくれ」


「分かりましたー」


「ああ」


 その後、アルスたちは弓彦の部屋へ向かい、台本を手にして口を開いた。


「ぐふふふふふ。そこのお嬢さん、このおいしいリンゴをあげるよ」


「まぁ真っ赤でおいしそうなリンゴ‼ いっただきまーす‼ もぐもぐ……うぐっ‼ 意識が……段々と……」


「ストップ。アルス、余計なアドリブは入れるなよ。分からなくなる」


「そうか。リアリティを出すために入れたが、ダメか」


「じゃあ、リンゴの所からやり直しますね」


 今、弓彦とムーンはアルスの暗記の為に協力をしているのだ。今は台本があるからいいが、本番は台本なしの一発勝負。間違えたらそこで劇はパーとなってしまうのだ。それを避けるべく、アルスは毎日練習をしていたのだ。


「おお、なんと美しい娘だ……しかし、死んでしまったか……」


「えーんえーん‼ そうなんです、もうピクリとも動きません‼」


「そうか……すまないが、最期に別れのキスをしても大丈夫か?」


「ええ。多分大丈夫です……はい、そこでキスをする」


「あら、あなたの愛の力で奇跡が起きました‼ ありがとうございます‼ 何とか息を吹き返すことに成功しました‼」


「奇跡だ、奇跡が起きたんだ‼ その後、王子様は白雪姫を毒殺しようとした悪い魔法使いのばあさんの話を聞き、速攻で向かって速攻で斬り捨てました。戦いの後、白雪姫は命の恩人である王子様と結ばれ、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 ムーンのナレーションの言葉が終わった後、アルスは何かを考え始めた。


「これでいいのだろうか……」


「いいと思うぞ。台本を確認してたけど、一文字も違ってない」


「さすがお姉様‼ 完璧な暗記です‼」


「しかし、今の私はただ暗記した言葉を言っているだけにすぎん。ドラマとかで見る役者のように演じていない」


「いや、さすがに学生の演劇でそこまで求める奴はいないよ」


 完璧を求めているアルスを見て、弓彦はこう言った。


「さて、今日はこれで終わりにするか。じゃあ私は風呂に入ってくる」


「お姉様ー、一緒に入りましょー」


「うむ。たまにはいいいな」


 そう言って、アルスとムーンは風呂場へ向かって行った。部屋に残った弓彦は、台本の文章を読んでいた。アルスが演じる白雪姫は主役なので、たくさんのセリフが用意されている。この練習を始めたのは規格が上がった一週間後、その時に文化祭まであと一ヶ月弱と言う時だ。最初はアルスも台本を読んでいたのだが、二週間後にはもうほぼ暗記をしていた。


「さすがアルスだな……」


 弓彦はぽつりとこう言った。




 それからしばらくし、文化祭前日になった。文化祭が近いせいか、生徒たちは急いで準備に取り組んでいた。


「さー、急いで急いで‼」


「早くしないと間に合わないよー‼」


 廊下の外から、他クラスの慌てる声が聞こえた。


「そんなに慌てると、余計失敗するっつーのに」


 弓彦が小さく呟いたその時、三毛の悲鳴が聞こえた。弓彦が急いで駆け付けると、そこにはかなり厚い厚底ブーツをはいた三毛が倒れていた。


「お前なんつー物を履いてるんだよ⁉」


「少しでも背が高いと思われたくて……」


「そんなことしなくてもいいのに……ほら、立てるか?」


 三毛は弓彦の手を取り、立ち上がったが、痛そうな顔をした。アルスは三毛の足を調べると、三毛の足は紫色に腫れあがっていた。


「足をくじいたな……」


「大丈夫だよ。何とか動け……」


 三毛は普通に立ち上がろうとしたのだが、あまりの痛さに耐え切れずに絶叫した。


「大丈夫じゃねーなぁ……」


「ねぇ、明日どうするの?」


 女子の言葉を聞き、弓彦は考え始めた。主役の白雪姫が不在なら、白雪姫の劇は成立しない。どうしよう。弓彦は焦って考え始めた。その時、アルスが何かを思いついた。


「代役なら心当たりがある」


 その言葉を聞いた弓彦は、何故か悪寒を感じていた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ