ヤマノボリノススメ(作者が元ネタの漫画を見てないのは、クラスの皆には内緒だよ)
山登り大会当日、会場となる近くの山には全国の登山部が集結していた。
「うわ、変なイベントなのにこんなに参加者いるのかよ」
大勢いる登山部を見て、弓彦は驚きながらこう言った。
「皆山登りに命を懸けているんですね」
「いや、そこまでかけてないと思うが……」
ムーンの言葉に対し、弓彦はこう返事を返した。すると、登山装備をしたアルスが近付いてきた。
「来たか二人とも」
「アルス。今日は頑張れよ」
「お姉さま、私達がしっかり妨害する連中を排除しますので、安心してください‼」
「その言葉を聞いて安心した。では頼むぞ、二人とも‼」
アルスはそう言って去って行った。その直後、大会始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「さて、じゃあ俺達も行きますか」
「そうですね」
弓彦とムーンはこう言うと、山へ向かった。
山の中。そこにはすでに与科路高校の連中が潜んでいた。
「いいか?我々の目的は我が校の優勝。ついでに他の高校の連中を再起不能にすることだ。手段は選ぶなッ‼」
「あいあいさー!」
他校の妨害をするため、与科路高校の連中がすでにスタンバっていた。連中の声を遠くで聞いていたムーンは、呆れてこう言った。
「全く、他人を妨害してまで優勝したいんですかね?」
「まー、世の中にはこう言う連中もいるってことさ」
「というか、私達が行動を妨害するんじゃなくて、この事を大会の運営委員会に言えばいいんじゃないですかね?」
「与科路高校の連中がすでにこの大会の運営委員会にまで手を回したらしい。賄賂を受け取ったと噂がある」
「どこまで根が腐ってるんですかね」
二人が会話をしていると、連中は散り散りに散って行った。
「ばれるとまずい。隠れよう」
その後、二人は身を隠しながら散って行った連中を探しに行った。
そんなこんなで山登り大会が始まった。階段の所では無数の登山部が我先にと言わんばかりに走って山道を登っていた。アルス達は後ろでその様子を見ていた。
「何慌ててるんですかね」
「山登りで大切なのはペース配分だというのに……」
「ええ。あれじゃあ途中でばてますよ」
アルスと昇はこんな会話をしていた。そんな中、アルス達の姿を見つけた与科路高校の一部がスマホで連絡をしていた。
「こちら01小隊。ターゲットを補足した」
『了解、直ちに削除しろ‼』
「了解!」
与科路高校の生徒は花火を手にし、アルス達に向けた。
「さぁ、黒焦げになってしまうがいい!」
その直後、謎の火球が彼らを襲った。火球を受け、手にした花火は暴発してしまった。
「……俺達は黒焦げになんなくていいのに……」
与科路高校の生徒はこう言うと、その場に倒れた。
数分後、次々と脱落者が出る中、アルス達は今だにマイペースに歩いていた。
「うわー、結構倒れている人がいるなー」
「ペース配分を間違えたからだ。下手すれば我々もああなるぞ」
倒れた人を見ながら、昇は後輩にこう言っていた。その真上では、巨大な木を担いだ与科路高校の連中がいた。
「ターゲット補足‼処分します‼」
『01小隊の仇を取ってやれ‼』
「了解!」
返事をした後、連中は担いでいる気をアルス達に向けて放り投げた。
「さぁ、ぺしゃんこになりな‼」
攻撃が成功したと思い、連中はこう言ったのだが、アルスに向かって落ちたのは木の皮だけだった。
「……皮だけ?じゃあ残りは?」
連中は上を見ると、宙に浮いている木を見つけた。
「ねぇ……なんで木が宙に浮いてるの?」
「俺が知りたいわ‼」
その直後、浮いている木は下に落ち、連中をぺしゃんこにした。
数分後、与科路高校の連中は一旦集合し、今起きていることについて話し合いを始めた。
「何が起きてるんだ一体!?」
「我々が邪魔をしようとすると、邪魔が入る‼」
「誰かが我らの邪魔をしているに違いない‼」
「とにかく、今からは妨害チームと邪魔者探索チームに分かれるんだ‼今、我ら与科路高校の登山部の順位はビリだ‼何が何でも優勝させるぞ‼」
その時、連中の頭上に水が流れてきた。
「……何で水が?」
「私の仕業です‼」
謎の声を聞き、与科路高校の連中は一斉に声のした方を向いた。そこには、宙に浮いたムーンがいた。
「あなた達、真剣勝負に水を差すのはいけないことですよ‼」
「貴様か……貴様が我々の邪魔をしてたんだな‼」
「あのリーダー、あの子浮いてるんですけど‼」
「手品か何か使ってるんだろう!そんなことはどうでもいい、痛めつけてやれ‼」
与科路高校の連中が一斉にムーンに襲い掛かろうとした時、ムーンは連中の上に雷を落とした。水で濡れているため、雷の威力は増している。
「いぎゃあああああああああああ‼」
「びよええええええええええええ‼」
「ほんぎゃらあああああああああ‼」
「私からの罰です!反省しなさい‼」
「いや、ちょっとこれはやりすぎだろ‼」
ムーンの後ろに隠れていた弓彦が、大声でツッコミを入れた。
「くっ……変な攻撃を使うとは……貴様……何者だ?」
「よくあんたもあの攻撃を受けて生きていられるな‼」
普通に生きている与科路高校の連中を見て、弓彦は叫んだ。その時、スマホの通話音が鳴り響いた。
「あ、連絡用のスマホからだ」
連中の一人がスマホを取り、話を始めた。
「はい。もしもし……はい?はぁ……はい。分かりました。皆に伝えます」
通話を終えると、電話をした生徒がこう言った。
「あの……俺達の高校リタイヤしたそうです」
「……は?」
「参加生徒の一人が熱中症で倒れて、今搬送されたようです」
「……分かりました。では……解散」
話を終えた後、与科路高校の連中は帰って行った。
数時間後、仕事を終えた弓彦とムーンは山の頂上で誰かが来るのを待っていた。
「俺、何もしてなかったな……」
弓彦は小さくこう言っていた。しばらくすると、アルスの姿が目に見えた。
「おー。二人とも待っていてくれたか」
「お姉さま‼」
「アルス、お疲れー」
アルスは登山部と共にゴールテープを切った。その結果、今回の山登り大会はアルス達登山部となった。
その日の夕方、リタイヤした与科路高校の連中は泣きながら歩いていた。
「……妨害だけじゃあ勝てないのかな?」
「そのようだね……」
「今度から、まともに練習してって伝えよう」
「妨害だけに頼るんじゃないって言っておいてね」
赤い夕陽が、項垂れる連中を赤く照らしていた。




