勇者流山登り攻略法
「お願いがありますアルスさん‼」
と、部活を終えたアルスに近付いた男子生徒たちが、頭を下げてアルスにこう言った。
「何だいきなり。こんな始まり方だと読者が混乱するだろうが」
「メタネタやめろ」
後ろにいた弓彦が、小さくこうツッコミを入れた。その時、弓彦は男子生徒の群れを見てこう言った。
「お前らは確か、登山部だよな」
「はい。自分は登山部部長、三年の山登昇という者です」
「すげー名前だな」
「承知しています。今回はアルスさんに、大会の参加をお願いするためにここにきました」
「大会? 山登りに大会なんてあるのか?」
アルスは弓彦に聞いたのだが、山登りの大会については弓彦も知らなかった。
「俺も知らないよ」
「実は来月、我々登山部三年にとって、最後の大会があるんです。我々はこれまで、三十覇を遂げてきました」
「意外とすげーなオイ‼」
「しかし、今回は大会中に妨害をしまくることで有名な、勝手場与科路高校が参加するんです」
「すごい名前の高校だな……」
「我々の連覇のためにも、変な名前の高校には負けたくないのです! そして、三年にとっては最後の大会です。アルスさん……我々の力になってくれませんか?」
話を聞いたアルスは、少し間をおいてこう聞いた。
「大会は来月のいつだ?」
「第二土曜日です」
「予定を開けておこう」
この言葉を聞いた登山部は、歓喜の声を上げた。
翌日。アルスと弓彦、ムーンは登山部が練習しているという山へきていた。
「結構高い山だな」
「目視で大体五百メートルぐらいですかね」
「こんな所があるなんて……意外だ」
アルスたちが話をしていると、登山部がやってきた。
「きてくださりありがとうございます。では早速、大会についてのルールを説明します」
登山大会のルール。それは参加チームが誰一人欠けることなく、早く頂上に着いたチームが勝ちという、簡単なルールである。しかし、一人でも迷子になっていたり、遅れる等で人数が足りない場合にゴールしたら、無効となり、反則負けとなる。その他にも、団員の一人が体調不良やケガなどで動けなくなったら脱落。他のチームの邪魔をしたら脱落など、意外にルールが厳しかった。実際登山部やそれに関した大会もあるかもしれないけど、作者はそんな知識はないので、想像で書きます。登山部の人、文句言わないでね‼
「では早速この山を登りましょう」
「このリュックを背負ってください」
アルスはスクエア型リュックを渡され、重さを確認した。
「結構重いな。何が入っているんだ?」
「登山用のアイテムです。飲み物、着替え、テントなど」
「まぁ、大会ではテントなどは使いません。あくまで本格的な山登りでどれだけできるかというシュミレーションですね」
「理解した。よし、早速行こう」
その後、アルスは登山部と山を登り始めた。弓彦とムーンもその後について行こうとしたのだが、渡されたリュックを持つので精一杯だった。
「何だ、これ……重い……」
「魔力を使わないとこれキツイですよ……」
二人が息を切らす中、弓彦はムーンが背負っていたリュックに手を触れた。
「あれ? こっちの方が軽く感じる」
「そうですか? どっちも同じだと思いますけど」
「違うって。ほれ、俺が背負ったリュック持ち上げてみろよ」
「どれどれ……」
ムーンは弓彦が背負っていたリュックを持ち上げようとしたのだが、あまりの重さで上がりはしなかった。
「何ですかこれ……重すぎる……」
「どうして俺のだけ違うんだろうな。中に何が入ってんだ?」
弓彦がチャックを開けて中を見ると、そこには世界が入っていた。
「うわァァァァァァァァァァ‼」
弓彦は悲鳴を上げながら、そのリュックを近くのどぶ川に向けて蹴り飛ばした。
「ブッハァッ‼ ちょ、弓彦君! いきなりこんな所に突き飛ばさないで! リュックの中に入ったのはいいけど、出られなくなっちゃったの‼ あれ、弓彦君? 聞いてる? マジで助けて‼ ギャァァァァァァァァァァ‼」
世界は悲鳴を上げながら、そのまま流れて行った。
アルスたちが山登りをしている中、それを見ている黒い影がいた。
「いたぞ。あれが我が校の最大のライバルだ」
「くくく……戦いは大会だけではない。その前から始まってるものなんだよ」
その正体は、勝手場与科路の登山部の一員だった。
「よし。俺がこの大岩を奴らに向けて突き落とす。そうすれば、奴らは全滅だ」
「ケケケケケ。いいっすね先輩。やっちゃってください」
「それじゃあドーンとね‼」
与科路の登山部は、目の前の大岩をアルス達に向けて蹴り飛ばした。大岩は音を立てながら転がり始めた。
「よし! そのまま突っ込めッ‼」
落ちる岩を見て、与科路の登山部は声を上げていたのだが、大岩に気付いたアルスが、魔法で大岩を弾き飛ばした。
「はへ?」
飛ばされた大岩は、与科路の登山部の上に落ちてきた。
「ギャァァァァァァァァァァ‼」
与科路の登山部の悲鳴を聞いた鳥たちが、驚いて逃げて行った。その声は、普通に歩いているアルスたちにも聞こえていた。
「何か悲鳴が聞こえましたが」
「気のせいだ」
アルスは昇にこう言うと、小声でこう言った。
「自業自得だ」
その後、アルスたちの目の前に吊り橋が現れた。
「ここから先へ行くには、この橋を渡らなければなりません」
「吊り橋か、楽しみだな!」
アルスはハイテンションで吊り橋を渡り始めた。その遠くでは、傷だらけの与科路の登山部が、弓矢を構えて潜伏していた。
「先輩、ここから吊り橋を落とすなんてできるんですか? シ〇ィーハ〇ターの冴〇か、〇ル〇13波の射撃の腕がないと無理ですって」
「やるしかないんだ。やると言ったその時に、既に実行しているッ‼」
と、与科路の登山部の先輩は、某兄貴っぽいことを言って弓矢を放った。だが、矢は届かなかった。何度も何度も狙って放ったが、結局は当たらなかった。
「クソッ、もう矢がない‼」
「一回戻って作戦を練りましょう」
「いや、何が何でもあいつらをぶっ倒す‼ わざわざ高い金を使ってこの情報を得たんだ、その分働かなければ‼」
そう言って、先輩は先へ行ってしまった。呆れた後輩はその背中を見てこう叫んだ。
「俺は先に戻りますんでー」
数分後、アルスたちは頂上にたどり着いていた。
「ふぅ。やっと着いたな」
「タイムは……二十分弱。さすが勇者様。すごい体力ですね」
「最初にこの山を登った時、普通の人の到着タイムは三十分を超えてます」
「なーに。こんな山を登るなんて朝飯前だ」
と、豪語するアルスから離れた所に先輩はいた。
めんどくせー、ここから突き落として怪我させてやる。多分死にはしないだろうがよ。
先輩はそう思いながら、アルスに向かって突進していった。だが、アルスは高く飛び上がって突進をかわした。
「はへ?」
「貴様が裏で何かをしているの、すでにばれているぞ」
アルスは先輩を捕らえ、セイントシャインの刃先を突き付けながらこう言った。
「さて答えろ。貴様は何者だ?」
その後、アルス達は与科路高校が裏でアルスに怪我をさせようとしていたことを知った。
「卑怯な奴らだ」
「そんな奴らに負けてたまるか」
と言って、部活動の生徒たちがやる気になった。しかし、アルスはまだ何かを考えていた。
「どうかしましたか?」
「最初からこんなことをする連中です。もしかしたら、大会当日にも似たようなことをしてくると思います」
アルスの言葉を聞いた昇は、戸惑いながらこう言った。
「では一体どうしたら……」
「弓彦たちに頼むか」
アルスはにやりと笑いながら、こう言った。
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