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賢者の言葉

 ムーンは心の中でこう呟いていた。私ならやれる。何が何でもやれると。ステージの中央へ立ち、ムーンは落ち着いて深呼吸をしていた。その光景を見ていたアルス、そして雀は心の中でムーンを応援していた。


 ムーンは咳ばらいをし、マイクを持ってスピーチを始めた。


「どうも、先ほど紹介を受けた一年のムーン・ローレリアです」


 そう言って、お辞儀をした。そしてもう一度マイクを持って話し始めた。


「私のような未熟者がこの場に立って話すことを光栄と思います。私には尊敬する人がいます。いつの日かその人に追いつくよう、この3年間でいろんなことにチャレンジしたいと思っています。そして、卒業した時に言い青春だったと思いながら、旅立とうと思います。まだ未熟な私ですが、先輩方、先生方、どうかよろしくお願いします」


 ムーンはそう言うと、お辞儀をした。その直後、ステージから拍手が鳴り始めた。


「一年代表、ムーン・ローレリアさん。スピーチをありがとうございます」


 司会の言葉を聞き、ムーンは何度もお辞儀をしながらステージの外へ戻って行った。




 その後、教室に戻ったムーンは緊張の糸が切れたせいか、ぐったりとしていた。


「緊張した?」


 雀の質問に対し、ムーンははいと答えた。


「け……結構この学校、人がいるんですね」


「私だったら、緊張して何も言えないよ~」


「かもしれないですね。あ~……まだ体が震える。お姉さまや先輩方に無礼と思われてないかな……」


 ムーンがそう言った直後、アルスが教室にやって来た。


「ムーン!素晴らしいスピーチだったぞ!」


「お姉さま!」


 アルスの声を聞いたムーンは元気になり、アルスに抱き着いた。


「あれ、ほぼアドリブじゃなかったか?」


「ええ。考えるだけで頭使いましたよ~」


 この言葉を聞いたクラスの人達は皆、え?あの言葉全部アドリブなの!?とか、パッと思いついていうセリフじゃねぇ‼と思っていた。


「さすがムーンだな。賢者だから、私より頭がいい‼」


 と、アルスは笑いながらこう言った。




 数時間後、アルス達は家へ帰っていた。


「いやー、緊張しましたよー」


 と、ムーンはスピーチの事を家族に話していた。


「いい言葉がパッと思いつくなんて、ムーンちゃんは賢いねぇ」


「賢者ですから」


「で、弓彦はその言葉を聞いていたかい?」


 弓彦母が弓彦にこう聞くと、弓彦は溜息を吐いて答えた。


「世界の眼差しが気になってそれどころじゃなかった」


「大変ねぇ。世界ちゃんとは別のクラスになったの?」


「うん。校内でストーキングされる心配はなくなったけど……」


 この直後、窓から何かがへばりつく音が聞こえた。弓彦はその窓に近付き、カーテンを開けた。


「弓彦君、エッチなことして遊びましょ」


 そこには世界がいた。弓彦は溜息を吐き、カーテンを閉めた。


「弓彦、あいつが隣に住んでいる以上、ストーキングは続くんじゃないのか?」


「校内で出来ないから、帰ってからの方が激しいんじゃないですか?」


 アルスとムーンの言葉を聞き、弓彦は「そうだな」と答えた。




 その翌日。ムーンは校内でかなりの有名人となった。大体クラスの生徒が話しかけてくるのだが、中には無礼な輩もいた。


「ヘイヘイヘーイ。君が噂の賢者ちゃんかーい?」


 昭和時代の制服を着て、グラサンをかけたリーゼントの生徒が、くっちゃくっちゃとガムを噛みながらムーンに近付いた。


「君が昨日言ってた尊敬する先輩ってぼくちゃんの事?」


「違います」


 と、ムーンはきっぱりこう言った。だが、その先輩はしつこく話しかけてきた。


「ねえねえねえねえねえ。そんなに冷たくしないでよー。ぼくちゃんこと、亜保奈(あほな)()()と付き合ってよー」


「うわー、酷い名前」


「モブキャラ感丸出し」


 名前を聞いた生徒が、ひそひそとこんな会話をしていた。その会話に気付いた茂武は、怒鳴り声を上げながらこう言った。


「誰が酷い名前じゃ‼先輩舐めんなよコラ‼」


「全く、礼儀が出来てない人ですねぇ」


 ムーンは右の人差し指を軽く振った。その直後、茂武のリーゼントがバッサリと斬られた。


「な……何で!?これセットするの2時間はかかるのに!?」


 自慢のリーゼントを拾い、茂武は嘆き悲しんだ。ムーンは追い打ちをかけるかのように、茂武の服を風の刃でズタズタにした。


「いやあああああああああああああああああん‼」


 パンツ一丁になった茂武は、恥ずかしがりながら教室から出て行った。


「全く、あほな先輩もいるもんですねぇ」


「あれで進級できたのが奇跡ですね」


 と、雀は苦笑いでこう言った。そんな中、ムーンは嫌な魔力を察した。


「どうかしたの?」


「あの先輩以上の変態魔王が来ました……」


 ムーンは窓からグラウンドを見ると、女子の体操着姿を見て発情したショーミを見つけた。


「ムハハハハハハハハ‼汗をかいてスケスケになり、そこから見えるエッチな下着!いいぞ、いいぞ!実にいいぞ‼」


「いやあああああああああああああああああああ‼誰かこの変態をどうにかしてェェェェェェ‼」


 女子達は悲鳴を上げながら、追ってくるショーミから逃げていた。


「はぁ……あほらし」


 ムーンはこう呟くと、左手で指パッチンをした。その直後、ショーミの目の前に砂の壁が発生した。


「な……何じゃこりゃああああああああああああああああああああ!?」


 続いてムーンは左手を下に振り下ろした。それに合わせ、砂の壁はショーミを包み込んだ。


「あぎゃあああああああああああああす‼」


 ショーミの情けない悲鳴が聞こえた。それと同時に大きな砂煙が発生した。しばらくし、砂煙は止んだが、そこにショーミの姿はなった。


「あれもムーンちゃんがやったの?」


「はい」


 雀の問いに対し、ムーンは短くこう答えたが、すぐにグラウンドの方を見直した。ショーミが這い上がって来たのだ。


「ぶええええええええええええええええええ!うえ、まだ口の中に砂がある……」


「あの人……タフなんですね」


「はい。この作品、変態キャラは生命力が高いんですよ……ホント、何でこんな設定にしたんだか」


 ムーンは呆れながら、手を鳴らした。次にショーミを襲ったのは光の矢だった。


「え?ちょま、防御の姿勢が出来てな」


 この直後、光の矢が雨のように降りだし、ショーミの体を貫いた。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああ‼せめて……勇者と一発やりたかった……」


 ショーミはこう言って、その場に倒れた。


「ねぇ……あの人死んじゃったの?」


 雀がムーンにこう聞くと、ムーンは笑いながら返事を返した。


「大丈夫ですよ。きっと、次回辺りには全快してると思います」

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