ピッカピカの一年生
四月。卒業とかいろいろあって別れることが多い三月とは違い、新しい会社とか新しい学校のクラスとかでなんだかんだで出会いがやたらとある時期である。
アルスと弓彦は進級。そして、ムーンは高校生。晴れてJKデビューすることになったのである。
「では、行ってきます‼」
制服を着たムーンが、玄関から出て行った。この光景を見た弓彦母は、昔を思い出しながらこう言った。
「私も昔はこんな感じだったわね」
その時、アルスと弓彦もムーンの後を追うように玄関から出た。それと同時に世界が弓彦に抱き着こうとしたが、アルスが撃退した。
そんでもって学校にて。アルスと弓彦はクラス表を見ていた。
「えーっと……おっ。三毛と浦沢は同じクラスのようだな」
アルスは表を見てこう言った。弓彦もクラス表を見て、自分とアルスが同じクラスであることを確認した。
「えーっと……他に知り合いは……あ。岳人も同じクラスのようだな」
「ほー。これは面白そうなクラスになりそうだな」
と、アルスはこう言ったが、急に背後から寒気を感じた。何だと思い振り返ると、そこには死んだ目の世界が立っていた。
「何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの? 何で弓彦君と同じクラスじゃないの?」
ぶつぶつと小言を呟く世界を見て、弓彦はクラス表をもう一度確認した。自分が在籍するクラスに世界の名前はなかった。これを知って、弓彦は心の中で喜んだ。
一方ムーンがいる教室では、教室の誰もがムーンを見て驚いていた。一応学校の受験の時、受験生たちには優秀成績者の発表をしている。その時誰もがムーンの一番成績がいいことを知っている。
「あの子が今回の受験で成績トップらしいわよ」
「頭よさそうだもんね」
「賢者らしいよ」
「青髪でむっちむちの体系じゃないし、白いワンピみたいな服着てねーじゃん!」
「お前ドラ〇エ3やりすぎだよ」
「可愛いな。いつか告白しよう」
周りからそんな声が聞こえていた。そんな時、一人の少女がムーンに近付いてきた。
「あ……あのっ……」
「ん? ああ! あなたはあの時の‼」
ムーンに声をかけてきたのは受験の時にめっちゃ緊張していた少女だった。
「同じクラスですね! よかったです‼」
「はい。よ……よろちくおねがいしましゅ‼」
「噛みすぎですよ。少し落ち着きましょう」
「はい。どうしても緊張してしまって……」
その後、二人は簡単に自分の事を話しあった。この少女の名前は山内雀という。頭の回転は速く、中学の時も成績が上の方であったが、あまりにもあがり症で、作文や読書感想文で賞を取ってスピーチする時、いっつも失敗していたという。二人が仲よさげに話していると、先生らしき人物がムーンを訪ねてきた。
「あなたがムーン・ローレリアさんね」
「はい」
「実は、受験成績トップの人は新入生代表で入学式の時にスピーチしなければならないの。今から打ち合わせできる?」
この話を聞いていた雀は、目を丸くして驚いていた。
「すごいよムーンちゃん。代表でスピーチするなんて」
「何を話せばいいんでしょうか……」
ムーンは考えながらこう言った。
「何で⁉ 何でこうなるのよォォォォォォォォォォ⁉」
弓彦とは別のクラスにされた世界が、教室の中央で叫んだ。その声が聞こえたのか、弓彦がやれやれと思いながら世界の所へきた。
「おい世界」
「弓彦君! まさか、私の愛が通じたの⁉」
「うるさいから静かにしろよ」
と、弓彦は世界にこう言ったのだが、弓彦の顔を見て発情した世界は弓彦に抱き着こうとしていた。その行動を察知していた弓彦はとっさに世界の突進をかわしたのだが、世界は空中でUターンし、弓彦に抱き着いた。
「おいやめろ、離せ‼」
「グッフフフフフ。離さないわよマイダーリン」
「誰がダーリンだ‼」
弓彦は世界を引っぺがそうとするが、世界はなかなか離れない。そんな時、世界のクラスの人が数名駆け寄ってきて、世界を弓彦から離した。
「あ……ありがとうございます」
「何すんのよあんたら‼ せっかく弓彦君とイチャイチャしてたのに‼」
「いや……あの人が苦しそうだったからつい」
と、世界のクラスの人はこう言った。だが、世界は再び弓彦に抱き着こうとした。
「こうなったら第二ラウンドに突入じゃーい‼」
「うるさいから静かにしろ」
アルスの飛び蹴りが世界の顔面に命中した。世界の体は宙を舞い、窓から外に落ちて行った。
「クラスが変わってもこの人は変わらないな……」
世界の奇行を目の当たりにした岳人が、ぽつりとつぶやいた。
「それよりも。弓彦、そろそろ新入式が始まるぞ」
「ああ分かった。今教室に戻るよ」
その後、弓彦はアルスと岳人と共に教室に戻って行った。その後ろ姿を見ながら、壁をよじ登って教室に戻った世界は寂しそうにこう言った。
「弓彦君……帰らないで。カムバーック‼」
だが、弓彦はこの言葉を無視して戻って行った。
新入式が行われる体育館。そこのステージの隅にムーンはいた。ムーンは新入式の途中で行われる新入生代表としてスピーチを行うことになっているのだが、まだ何を言うか考えているようだった。
「言いたいことはたくさんあるけど……時間が限られてるのがきついですね……」
「スピーチの時間は二分半です。それまでまとまるようにお願いします」
と、新入式担当の先生がこう言った。ムーンは返事をした後、どうやってまとめようか考え始めた。
それから数分後、新入式が始まった。最初に二年と三年の校歌合唱、その後は校長先生による無駄に長い話が始まった。弓彦は疲れで睡魔に襲われていた。そんな時、岳人が弓彦の背中をつねって眠気を吹き飛ばした。
「ありがとな、岳人」
「このまま眠ると……やばいことになりそうだから」
「やばいこと?」
その時、弓彦は背筋に何か嫌なものを察した。横を見ると、発情した世界が弓彦を見つめていたのだ。弓彦は察した。もし、寝てしまったらあいつに襲われると。
「それでは、新入生代表のスピーチを行います。ムーン・ローレリアさんお願いします」
司会者の言葉を聞き、アルスは驚いた。
「おお! ムーンが代表か!」
アルスは驚きとともに喜んでいたのだが、ムーンはまだ話をまとめていなかった。もう自分の番になる。こうなったら、やるしかない。ぶっつけ本番だと思ったムーンはスピーチ台の前に立った。
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