花見をするときは前もって場所を取っておけ
バレンタインデーが終わり、時が流れて3月の中頃になった。今アルス達が通う学校は春休みである。そんな中、部屋で漫画を読んでいた弓彦の携帯にラ〇ンの通知音が響いた。
「誰だ?」
携帯を見ると、なんと御代からの連絡が入っていた。
「……あれ?俺いつの間に御代会長とID交換したんだ?」
「私が代わりにやっておいた」
アルスの言葉を聞き、弓彦は大声をあげて驚いた。
「いや、いつの間にやったんだよ!?」
「お前がいない間に。それと、スマホを触る時はなるべく画面を綺麗にしておけよ。指紋が付いてる」
「……何でロックが解除できたんだよ」
「これだ。世界がお前の携帯のロック番号をメモした紙だ。忘れたのかここに落ちていた」
「あいつ、どうやって俺のロック番号知ったんだよ!?」
「それより、御代会長から何て連絡が来たんだ?」
「えーっと……天気もいいからお花見でもしない?だって」
「花見?何だそれは?」
アルスがこう聞くと、弓彦は考えながら返事をした。
「桜を見ることかな」
「桜?」
「あれの事だよ」
と、弓彦は窓から見える桜並木を指さし、アルスに見せた。
「おお!あの美しい木か!あれを見るとは、御代会長も暇なのか?」
「暇かどうか知らないけど、結構楽しいもんだぜ」
「ほうほう‼ではムーンと一緒に早速行くと伝えてくれ‼」
「あいよ」
その後、弓彦は返事を返し、出かける準備を始めた。
弓彦の家から少し離れた公園にて。そこにはもう大量の桜が咲いていた。だが、そこで花見をしているのはアルス達だけだった。
「いやー!今日はお花見日和ねー‼」
と、御代はご機嫌で手にしたジュースの缶を飲んでいた。
「そうですね。運よく周りに人もいませんし、のんびりとお花見ができそうです」
横にいる日枝は団子を手にし、こう言っていた。
「綺麗ですねお姉さま」
「そうだな。こうやってたくさんの桜を見ると、結構美しいもんだな」
ムーンとアルスはおにぎりを食べながら、桜を見ていた。
「花と飯を同時に楽しんでるよ……」
二人の行動を見て、すごいと思いながら三毛が呟いた。そんな中、なんか不自然だと思った弓彦は雍也にこう聞いた。
「どうして他の人はいないんですか?」
「会長が花見の為に、ここら辺の敷地を借りたらしいよ。だから、今日は俺たち以外は入っちゃダメだってさ。すごいね、会長んち。だけどさー、ナンパが出来ないからちょっと残念なんだよね」
「こんな時にナンパの事なんて考えないでくださいよ」
「えー?」
雍也はブーブー言いながら、手にしたジュースを飲み始めた。そんな感じで楽しい楽しい花見は続いていた。しかし、そんな空気をぶっ壊すバカが現れた。
「弓彦くうううううううううううううん!桜と一緒に私の桜も見てェェェェェェェェェ‼」
現れたのは自分の恥部を桜で隠し、弓彦に突進してくる世界であった。アルスは光の壁を出して世界を倒し、そのまま地面にめり込ませた。
「全く、前々回の話の教訓が全く生かされてないじゃねーか」
「ブッフォアッ‼」
世界は地面から起き上がり、口の中に入った土や桜の花びらを吐き出した。
「ちょっとー、今こっちはお花見をしているんだから、変なもん見せないでねー」
と、御代は世界にこう注意した。
「あ、すみません。じゃあ弓彦君を連れて帰りますので」
「まだ帰りたくない」
弓彦は世界からそっぽを向き、ジュースを飲み始めた。
「そんなぁ、弓彦く~ん」
世界が弓彦の腕を掴み、どこかへ連れてこうとした。その時、どこからか笑い声が聞こえた。
「いや~‼ほんっと綺麗だな。私の(ピーーーーーーーーーーーーーーー‼)」
「とんでもねー下ネタ言うなァァァァァァァァァァァ‼」
伏字が入るほどひどいレベルの下ネタを言ったショーミは、イータの手によって地面にめり込んでしまった。だが、ショーミはアルスの匂いでアルスが近くにいることを察すると、すぐに地面から這い上がった。
「おお勇者‼こんなの所にいたのはな‼我は運がいい。どうだ勇者?桜の下でやらないか?」
「地面に埋まってろ‼」
アルスの強烈な一撃が、ショーミを再び地面にめり込ませた。
「あーもー、静かに花見ができると思ったのに、変質者が来るなんて聞いてないわよ」
「あの、まさかその変質者に私も含まれてるんですか?」
「多分そう……」
三毛は変態扱いされてショックを受けているイータにこう言った。弓彦は御代の肩を叩き、こう言った。
「会長。あの馬鹿どもが来たからもう静かになんてできませんよ。追い出すこともできなさそうだし……」
「そうね……」
「テメーどさくさに紛れて御代会長の肩に触れてんじゃねーぞコノヤロォォォォォォォォォォォォォォォ‼」
日枝の怒りの咆哮と共に、弓彦は空高くぶっ飛ばされた。
そんなわけで、馬鹿どもも何故か花見に合流してしまった。だが、世界とショーミは地面にめり込んだままなので、結果的には常識人であるイータが参加することになった。
「まともな飯を食ったの……久しぶりだよ……」
と、イータは泣きながらおにぎりや唐揚げを食べていた。
「あの、普段何喰ってるんですか?」
「どぶ川にいる魚かザリガニ」
イータの悲惨な食の状況を知り、弓彦達は可哀そうにと思った。
そんなこんなで、楽しいお花見の時間は過ぎて行った。だが、自分達を放置プレイしたまま花見をしているアルス達の姿を察し、地面に埋まっている世界とショーミが怒りで震えだした。
「私達だって……」
「桜の下でキャッキャウフフしたーい‼」
と、下らねー願望を叫びながら、馬鹿どもは復活してしまった。
「チッ、意外と復活する時間が早かったな」
「今度は地面に埋めるんじゃなくて、宇宙にまでぶっ飛ばそうか?」
「そうしてくれ」
イータの返事を聞き、アルスはセイントシャインを構えて世界とショーミの元へにじり寄った。その姿を見て、慌てた二人は手元にあったヘルメットとピコピコハンマーを取り出した。
「何だそれ?というか、いつ持ってきた?」
「そこに落ちてたんだ」
「今から弓彦君とアルスを巡って勝負なさい」
世界の言葉を聞き、アルス達は戻って行った。
「いや、この流れだと勝負に乗るんじゃないの!?」
「あほくさ、やってられっか」
「花見の途中なので」
「おいコライータ‼お前何向こう側に行ってるんだ?戻ってこい!」
と、馬鹿どもがギャーギャー騒ぎ出したので、アルス達は勝負に乗ることになった。その光景を見て、弓彦は呆れて溜息を吐いていた。




