白衣の挨拶
邦夫は救急車で近くの救急病院に搬送された。駆け付けた救急隊員も、顔をしかめるほどの残り香ならぬ残り屁だった。
邦夫は、看護士にビンタされ意識を回復するのだった。
「な、なんだ。ここは、屁の国か?」
邦夫は、気が動転していた。
「良かった、意識回復ですね。かなり臭いオナラを嗅いだようですね。」
そう話す看護士は、麻美ゆま似の可愛い白衣の天使だった。邦夫は、顔がにやけていた。
どうやら、臭い屁とゆで卵で鼻と呼吸を瞬間的に遮断されてしまったようだ。
あの屁をこいた男は「俺はなんにも悪くないよ」と、すぐさま立ち去ったとの事。
翌日の夕刊各紙社会面に小さく、「高田馬場にスカンクおじさん?」の記事が掲載された。
邦夫は、白衣の天使を見つめながら、小声でつぶやいた。
「あの屁っこき野郎、ありがとう。」
バイト先の店長が、近所の噂を聞き付けて病室にやって来た。工事現場で使うような防塵マスクをつけている。
「邦夫、大丈夫か?」
「店長?臭いのは俺じゃないですよ。」
白衣の天使は、病室の入り口で微笑むとナースセンターに戻った。
邦夫は、大事を取って一晩入院し、翌朝は病院からバイトへ歩いて向かった。
病院の入り口花壇に植えられた黄色い花が綺麗だった。