オーデェンスは二人だけ!?過去最高に熱狂的なライブ開演!
大学病院。
瑠璃はベッドで横になり点滴をうたれている。
側には佐藤が待機しており、身の回りの世話をしている。
航がお見舞いに来た。
佐藤は察したように病室を出ていった。
「ねぇ、航。もっとこっちに来て」
いつもの瑠璃なら
「ちょっと航!こっちに来なさいよ!」
だったのに。か細い声で呼ぶ。
「瑠璃、大丈夫か?」
瑠璃は【デビルサイン】をした。
航はフッと笑って
「瑠璃は生粋のメタラーだな」
愛しさと庇護よくが混ざった感情で、もう少しで瑠璃の頭を撫でそうになった。
「わたしさ」瑠璃はポツリと話し出す。
「心臓に疾患があってね。文化祭で張り切り過ぎた反動が来たみたい」
「佳奈のせいだ!って言っておいてよ。あんな攻撃的なギター聴かせたからだってね」瑠璃は力なく笑った。
瑠璃は外を見ながら「わたしたちの出会いって面白いよね。シルバーメイデンのキーホルダーひとつだもん」と静かに言った。
「だけど、俺はそのお陰で瑠璃と出会えた。シルバーメイデンに感謝だな」
航は、俺、何言ってんだろう?これじゃ告白じゃないか。
「わたし、来週ね、手術なの。不安で…。瑠璃の大きな目から涙が溢れた。
航が元気付けようと差し出したデビルサインを瑠璃は握った。
「大丈夫。絶対に大丈夫」航は瑠璃の手を強く握りしめた。
航はなにか決意したように
「瑠璃、漫画でさ、よくあるのが、野球選手が病気の子供を励ますとき、手術が成功したらホームランを必ず打つから頑張れっての」
瑠璃は「そういうの聞いたことがある」と頷いた。
だから、俺は「瑠璃が手術頑張って退院したら、ライブをやる。この俺が!」
「航ってメタラーだけど、ギターもなんにもできないじゃん」瑠璃は笑った。
「いや、絶対にやる。瑠璃をヘドバンさせてみせる!」
「期待しないで待ってるね」
「ったくかわいげないな」
「佳奈!ギター教えてくれ!」航は頭を下げた。
「瑠璃と約束したんだ」
「航、ギターって簡単じゃないの。ほとんどの人が挫折する。ましてや6げんぎたーは初心者には絶対にむり」
佳奈はそう言った。
しかし、その次
「瑠璃のためなら仕方ないか。わたしたちと同じメタラーなんだから。いいよ。いちばん簡単なやつ教えてあげる。だけど厳しいよ?」
それから猛特訓が始まった。航は予備校も休み、放課後は遅くまで佳奈につきあってもらい練習をする。
指からは血が出る。薄い絆創膏を張りながら耐える。手首は固まり動かすと痛い。しかし航の心には瑠璃がヘドバンする姿が浮かぶ。
瑠璃の手術は成功した。
航は休日の体育館に瑠璃を呼び出した。
静かな体育館。
ガガガギャイーン!佳奈の暴力的なギターが鳴る。
ドラムが狂ったリズムを刻む。暴れるベース。
ボーカルがシャウトしたのを合図に航が現れた。
瑠璃を見る余裕などない。手元をずっと見ている。
佳奈が航を励ますように見る。
モーターベッドのメンバーも航に合わせるようにテンポを落とす。もはやメタルとはいえないものになってしまっていた。
サビに入る。航がソロをひきはじめる。
しかし、コードもろくにおさえらるないので、音にすらなっていない。
そのとき、瑠璃が飛び出した!
デビルサインを掲げ、長い髪を振り乱しヘドバンをし始めた。
モーターベッドの仲間もそれをみて、演奏のギアをあげた。佳奈が前におどりでる。膝をつきながら皮膚を突き破るような強烈なリフを引き始めた。
航はギターを置いて、瑠璃の横に移動した。
航も激しくヘドバンし始めた。
学校の体育館のライブ会場。
オーデェンスは二人だけ。
しかし、体育館は熱狂の渦に巻き込まれていた。
演奏が終わると、航と瑠璃は座り込んだ。
「瑠璃、手術あけにあれはやめろよ」笑う
「メタラーが手術ごときでヘドバンやめるわけないでしょ」
二人で笑う。
それを見た佳奈は、小声で「やっぱ航。かっこいいよ。だけど瑠璃には敵わないな。航のことよろしくね」
体育館から出ていった。
静かになった。体育館。
「ホントにやってくれるなんて思わなかった。めちゃくちゃ下手くそでヘドバンしずらかったけど」
瑠璃は微笑んだ。
瑠璃のためならなんだってできる。
え?
瑠璃をずっと守りたいなって。
デビルサインをした。
だってシルバーメイデンの【同志】だろ?
瑠璃は【同志】
もうちがうよ。航に抱きついた。
【メタラーカップル】爆誕!
瑠璃は大きな声は、だれもいない体育館に響きわたった。
おしまい
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