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20/22

第20話 強さの証明

 翌日。


 俺達は昨日と変わらず特待生試験が行われる闘技場に来ていた。

 翌日に再試験をするというシルヴァ王の発表もあってか、闘技場は昨日よりも人で溢れかえっている。


 開会式が始まり、まず最初に行われたのはシルヴァ王の演説だ。

 昨日の一件について、『ジークバルト・エアフリトは我々が送り込んだスパイである』こと『魔族を撃退し、拠点を1つ潰した』こと『エドラスは生きている』ということの説明が行われた。


 そして、こと特待生試験における第一試合は魔族撃退に貢献した2人の戦いから始まるのだ。


「はぁ……今度は心臓突き刺すなよ」


 実際に傷を負っている訳じゃないけど、痛いもんは痛いんだよな……。


「うるせぇ。嫌だったら避けろ」


 ったく……。

 ジークのやつは相変わらずだな。

 俺に対する心配なんてあったもんじゃない。


「俺はクソ魔族を前に、何も出来なかった。あんな化け物を倒したお前らは素直にすげぇと思う」


 な、何だ……?急に素直になりやがって……。

 それに、俺達が戦ったのは伯爵級だ。ジークが対峙した公爵級とは訳が違う。


「俺はこのままでは終わらねぇ。いつか必ず、お前らを超える。覚悟しとけ」


「……ああ、だが俺ももっと強くなる」


「……はっ、吐かせ」


 互いに顔を見合せ、笑う。


【スキル:魔剣召喚】

【スキル:雷元素】


 互いに剣を抜き取り、構えた。


『第1試合!!始め!!!!』


 俺とジークの本気の戦いが始まった。


 割れんばかりの歓声。

 ジークの魔剣と俺の神剣が激しくぶつかり合う。


 ……そして激闘の末、俺はジークに敗北した。


 ◇◇◇


 その後、再試験は恙無く行われた。

 迎えるは特待生試験決勝、その対戦カードは……。


「まぁ、こうなるよな」


 堂々たる風格で、燃えるような赤い髪をした圧倒的強者のオーラを纏う1人の少女。

 対するはいつになく真剣な面持ちで相手を見やる青髪の青年。


『特待生試験決勝戦!!!圧倒的な力を見せつけてきた両者がぶつかります!!』


 実況者の声が闘技場を割って入る。


『ジークバルト・エアフリトVS!!ヒリス・アルノシア!!!!!』


 〔ウオオオオォオオオオオ!!!〕


 割れんばかりの歓声が闘技場を中心として、首都ゲラードの街に響き渡る。


「……」


 口をへの字に曲げたヒリスがジークをジッと見る。


「……なんだよ」


「あんた、強かったのね」


「あ?何を今更」


 ヒリスはチラッと観客席のVIPルームに目を向ける。

 どうやら俺を見ているらしい。


「エドがあそこまで本気で戦っているのは久しぶりに見たわ。正直、エドが本気を出したら同世代じゃ私以外に勝てる奴はいないと思ってた」


「舐められたもんだな……だがまぁ、ギリギリだったな。あいつ、まだまだ強くなるだろうな」


 ?

 2人してなんでこっち見てんだ?


「ふっ、あんたも見る目が良くなったわね。それに、強くなるのはエドだけじゃないでしょ?」


「はっ!ちげぇねぇ」


 ヒリスは腰から剣を抜き取り構える。


「今回は勝たせてもらうわね」


「馬鹿言え、勝つのは俺だ」


『スキル《魔剣召喚》』


 ジークは亜空間から魔剣を召喚する。

 使う魔剣は何だろうか。

 ジークのスキルレベルから考えると3種類の魔剣を扱えるはずだ。

 昨日使った【エスドレイヤ】、そして今日俺との戦いで使ったのは【アルマディアス】という水属性を宿した魔剣だった。

【アルマディアス】は純粋な水属性の魔剣。魔剣の中でも上位クラスの強力なものだ。

 さて……何を使うのか。


 ジークが召喚したのは細長い片刃の剣……いや、あれは……。


「ふむ。あれは……刀か?」


 隣で試合を見ているシルヴァ王がそう呟く。

 あの刀の名は確か【剛魔天月】。

 かつてとある英雄が愛用していた妖刀だ。


「はい。【剛魔天月】日本……異世界の武器で妖刀と呼ばれる類の魔剣ですね」


「ほう、妖刀とはなにやら不穏な名称だな」


 異世界……つまりはここから何光年も離れた先にある俺の大好きな地球という星の日本という国で鍛えられた刀だ。


「妖刀とは大まかに呪われた刀の事です。剛魔天月の場合、使うと寿命が短くなるとか」


「なっ、寿命が!?それは大丈夫なのか!?」


「大丈夫です。あの妖刀はマナを吸い上げているんですよ。異世界人はマナを持っていません。なので、その代わりに生命力を吸い上げていたらしく、生命力を喰らい尽くし、寿命を奪う妖刀として恐れられていたのです」


「なるほどなぁ……。それにしてもエドはやはり博識だな!異世界の知識まで有しているとは!」


 やべっ、ちょっと語りすぎたか。


「は、はは……エドラス様に色々教えて頂いたので……」


「ほう、エドラス様は異世界にも精通しておられるのか」


 シルヴァ王はえらく関心しているが、ただの趣味なんだけどね。


 しかし、まさか妖刀を召喚するとは。

 そもそも別の世界の武器を召喚するのは簡単な事じゃない。並大抵の精神力では召喚の反動に耐えられず廃人になってしまう。歴戦の猛者でも難しいとされているのに、それをこの歳で……末恐ろしいな。


『それでは!!!決勝戦!!!始めぇええ!!!!!』


 割れんばかりの歓声と戦いのゴングが鳴り響く。

 その瞬間、雷電を纏ったヒリスが消えた。

 そして、ジークの背後に現れる。


「見えてんだよ」


「っ!!」


 ジークのやつ、迫る剣を受け止めずに、受け流した……それに、受け流して体制を崩させた後、そのままカウンターまで。


「ふーん」


 ヒリスは受け流された事に驚きながらも体制を立て直す。


「そんなもんか?」


「ふん、そんな訳……ないでしょ!!」


 ◇


 2人は再び肉薄し、剣戟を繰り広げる。

 目にも止まらぬ剣の応酬、もはや学生のレベルをゆうに越えている。


「エド、この戦いどう見る?」


 シルヴァ王は試合を見ながら俺に問いかける。

 どう見る……か。


「そうですね。ヒリスは剣術、ステータス、スキル全てにおいて高水準。対するジークは魔剣の力でステータスはヒリスを上回りましたが、剣術は恐らく同等ですが……スキルの差がどうしても」


「ふむ。では、ジークは負けると?」


 シルヴァ王は片眉を上げ、にやりとこちらを見る。

 この顔、試してるな。


「……いえ、最初の段階では"圧倒的不利"という状態でしたが、今は"多少不利"というレベルまで差を埋めることができてます。なにか切っ掛けがあればもしかしたら……」


「ははっ!流石の慧眼だ!どうだ!エド!やはり、次期宰相に……」


「お断りします」


 ガハハと豪快に笑うシルヴァ王だが、現宰相であるエルドさんの目の前で言うのはどうかと……。

 と思いチラッとエルドを見るが。


「エドラス様であれば今すぐ変わったって問題ないですね」


 あ、あれ……?


「んんっ……まぁ、この試合どう転ぶかはわからないですね」


 でもまぁ正直な話、ヒリスが負ける姿なんて想像できないんだよなぁ。


「それに、もうすぐ決着がつきそうだ」


 武舞台に目をやると相も変わらず五分の戦いが繰り広げられている。だが、若干ジークが押され始めている。


「マナ切れが近いな」


 ◇


「はぁ……はぁ……」


「あら、もうバテたの?」


「うるせぇよ……」


 舌打ちをしてヒリスを睨む。


「その魔剣、消耗がすごいみたいね」


「はぁ……まぁな。だが、まだまだこれからだ」


「ふん、私は別に長期決戦に持ち込んだっていいんだけど……それじゃ、釈然としないものね!」


 ヒリスは剣を構え、残るマナを解放した。

 闘技場中の空気が一変する。

 圧倒的なまでの重圧、空気がピリピリと肌に響く。


「さぁ!きなさい!!」


「はっ……バケモンかよ」


 ジークは冷や汗をかきながらもゆるりと刀を構える。


 ◇


 あの構えは……霞の構え?

 ジークのやついつ日本の剣術を……。


「はっはっは!!ジークめ!その剣術を会得していたか!これは予想外だ!」


「陛下はあの剣術をご存知で?」


「知ってるも何も、あれは【ルーカディア剣術】。かの三英雄が1人『ゲラード・ルーカディア』が考案した片刃専用の剣術だ」


 ゲラードの剣術?

 あのガキいつの間にそんな独自の剣術を……。


「その当時、全能神エドラス様から異世界の片刃剣術の極意を教えてもらったそうだ。それを自分なりの解釈を加え『ルーカディア剣術』となったそうだ」


 俺が教えた……?

 ん?そういや、大昔漫画を読んで得た知識を我が物顔でガキ共に教えたような……?


 ま、まさか真に受けてそのまま剣術として応用したのか……?


「どうしたエド?なんとも言えん顔をしているが」


「イエ、ナニモ……」


「一般的な剣は両刃だ。片刃の剣は扱いが難しい上に刀は『異世界人が好む』って理由で毛嫌う者が多くてな」


 まぁ、剣術の原型となっているのもその異世界の知識だけどな……。


 ◇


(踏み込めないわね……この感じどこかで)


 ヒリスの脳裏にはエドラスと対峙した時の大太刀用剣術が浮かんでいた。


「ふぅ……」


 ジークは五感を最大限研ぎ澄ます。

 ヒリスの呼吸のペース、僅かな表情の動き、一挙一動に注意を払い、マナの流れを読む。


 最早2人には闘技場の歓声すら耳に入らない。

 シンと静まり返った2人だけの空間。

 両者様子を見て、機を待つ。


 ジークの汗が頬から滴り、落ちる。


 そして、水滴が弾けた。


 刹那。両者がその場から消える。


 ヒリスは懐に潜り込んできたジークに対し、剣を振り下ろした。

 それに対し、ジークは下段から切り上げヒリスの剣を弾く。


「オラァ!!!!」


 〔ガンッ!!!〕


「なっ……!!」


 ヒリスは剣を弾かれ、大きく仰け反り体制を崩した。

 隙あり。


「って、思っちまうよな」


 追撃せずに、1歩下がるジーク。

 そして、ヒリスの脚がジークの眼前を通過する。

 体制を崩されたフリをして視覚外からの一撃を与えるつもりだったのだ。


「むっ……」


「足癖の悪いやつだ」


 お互い数歩後退り、再度勢いよく迫る。

 下段からの斬り上げ、切り返し袈裟斬り、体制を崩さすために、足払いをしようとするがそれに対してもヒリスは尽くに対応する。


 2人は顔を見合せ笑う。

 ジークの顔色が悪くなっていっている。もう限界だ。

 2人が考えることは同じ。


((次で決める!!))


 互いに肉薄し、渾身の一撃を放つ。


「スキル:雷王【天雷】」


 ヒリスの纏う雷電の猛々しさが更に増していく。


「ルーカディア剣術【猛虎】」


 ジークは一際多くのマナを消費し、ステータス強化を施す。


 互いの剣が衝突する。

 とてつもない衝撃だ……。


 〔ピキッ……〕

 観客席を守っていた結界に亀裂が走る。


「……陛下」


「ああ。結界スキルを更に強化しろ!!本気で対応しないと破られるぞ!」


 まさか、陛下直属の結界スキル持ちのバリアにヒビを入れるとは。


「ぐっ……」

「くっ……」


 ステータスは拮抗している。

 この両者譲らぬ鍔迫り合いに終止符を打つとしたらそれは、剣術における技量と戦場での経験値の差だ。


「くっ……オラァァ!!!」


「っ!!」


 押し返すジーク、しかしヒリスはあえて力を抜き受け流す。


 〔カンッ!!〕


 そして、ジークの剣を絡め取り、弾く。


「終わりよ」


 剣を失い跪くジークにヒリスは剣を大きく振り上げた。


「……ああ、終わりだ!!」


 その瞬間、とてつもない量のマナがジークから沸き上がり、形成された水が一面を支配する。

 そして、目から鼻から血を流しながら2本目の魔剣を召喚した。


【魔剣:アルマディアス】


「2本同時展開!?」


 馬鹿か!!

 マナ回路がぶっ壊れるぞ!

 あいつの負けず嫌いはそこまで……。


 隠された左手には魔剣が握られいる。

 周囲のマナは水へと変化し、魔剣に収束する。そして、ヒリスへと強力な突きを放った。


「俺は……負けねぇええ!!!」


 その強力な一撃を前に、ヒリスは慌てることもなくジークを見る。


「悪いわね。私も……負けられないのよ」


「なっ……」


『轟雷』


 目を覆いたくなる程の光と凄まじい轟音が響き渡る。

 あの技は……俺がディルナーデ相手に使った技か。


「さすがヒリスだ」


 砂煙が舞い上がる闘技場の中央。

 やがて、煙は晴れていき、特待生試験トーナメントの優勝者が現れる。


 剣を振り下ろした、燃えるような赤い髪の少女。

 油断することない瞳は相手を見据え、間違いなく勝ちを確信した後、剣を鞘に収めた。


「俺の……突きよりも……遥かに速い……」


「ジーク。あんたは強いは、本当に。でも、私の方が強かった。ただそれだけよ」


「はっ……」


 その場に倒れるジークは武舞台から離れるヒリスを一瞥し、瞳を閉じる。

 完敗。その2文字が頭を過ぎったが、ジークは満足そうな顔をして意識を失った。


『決着!!!!特待生試験!!優勝は!!!』


 大きなモニターにヒリスが映し出される。


『若き救国の英雄!!ヒリス・アルノシア!!!!』


 〔ウォォォォオオオ!!!!!〕


 割れんばかりの大歓声。いい戦いだった。

 ちゃんと急所を外してるし。

 なんかジーク倒れたまんまめっちゃ血流してるけど……あ、回復スキルの魔道具が発動した。

 まぁ、大丈夫だろう。たぶん。


 さて、ヒリスを迎えに行くか。


戦闘後、ジークを回収に来た試験の警備員。


騎士A「な、なぁ、こいつ生きてるよな……?」

騎士B「急所は……外れて……る?」


ジーク「はや……く……上級……かい…ふ……く……」


騎士A.B「「や、やばい!!!!」」


ジークは一命を取り留めた。

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