18話 びっくりするほど唐突で
ちょっと落ち着いたので、部長たちを追って、目的地の前に到着。まだ部長は職員室の前にいた。
この後の展開が(あの的内でも)怖いらしく、震えているそいつを連れて部長たちは職員室へ入っていった。
2分ほど経って、小平先輩だけが出てきて僕らに手招き。
「あ、はいっ」
意図を理解し、篠宮君と一緒に職員室に入る。
(──なんというか、なぁ)
許しはしない。僕はこれから事実を先生に伝える。
とは言っても、だ。
(不憫だなぁ)
僕を下に見続けたせいで、こんなことになるなんて、想像だにしていなかったのだろうな。
的内の顔面は、まさしく『蒼白』になっていた。
◆◆◆
結局、的内は入学早々に謹慎処分をくらい、反省文まで提出する羽目に。
──『羽目に』という言葉は不要かな。今日が、小学生の頃から僕のことをいじめてきたツケを払う時だったのだろう。
と、考えを巡らせるよりも、まずは。
「今日はありがとね、篠宮君」
職員室から出て、廊下で感謝の意を伝える。
篠宮君が気付いてくれていなかったら、僕は確実にあの場で殴られていた。
部長たちも気づかなかっただろうし。
「いいよ、気にしないで。当然のことをしたまでだよ」
「……すごいね、篠宮君は」
本心からの言葉。
僕が篠宮君の立場だったら、同じことができていただろうか。
「すごくなんか、……ないよ」
「え?」
あ、あれ、なんか地雷踏んじゃった?
なぜか少し顔を落とし、小声になる篠宮君。
「帰ろっか、安喰君」
「う、うん……」
落ち込んで──は、いないようだけど。
なんだろう、この暗めな雰囲気は。
なぜかギクシャクしながら、昇降口へと向かう。
◆◆◆
「……よし」
「ん?」
靴を履き、昇降口を出てすぐに篠宮雲が口を開いた。
「ちょっとだけ、時間、ある?」
「もちろん。どこか寄ってく?」
言ってから思う。
僕たち、まだそこまで仲良くないかな、と。
少なくとも、一緒にどこかに行く仲ではないよな、とも。
「いや、その、ちょっと聞きたいことがあって。その、朝……」
「朝? ……ああ、朝ね! ごめんね、高崎さんが変なこと言って」
「あ、それはまあ、いいんだけど」
あれ、じゃあ何のことだろう。
「その、安喰君って、高崎さんと付き合ってたり、する?」
「……へ?」
おずおずと、そんなことを訊いてきた。
これは──つまり、そういうことだよなぁ。
「ううん、付き合ってないよ。えっと、ただの友達だから安心して。高崎さんはフリーだと思うよ」
「あ、いや、えっと、そうなんだ。ああいや、そうじゃなくて」
「……?」
目を瞑り、拳を握りしめて『うん、よし』と小さな声で呟く篠宮君。
校門に向かう足を止め、周りに人がいないことを確認するように目線を動かし、最後に僕をじっと見て。
「ボクが好きなのは、高崎さんじゃなくて」
また、拳をぎゅっと握って。
「ボクは君が好きなんだ、安喰君」
◆
「え、……え?」
言葉が出てこない。
びっくりしすぎたからだろうか。
唐突な告白に、なんと言えばいいのだろう。
「えっと、ぼ、僕を?」
聞き間違いじゃないのは分かっているけれど。
思わず、そう訊き返していた。
「……うん」
──数秒の沈黙。
その間に、今朝みたいに篠宮君の顔が真っ赤に染まっていく。
ああ、なるほど。紅潮するとはこういうことをいうのか。
って、そうじゃなくて。
返事をしなければいけない、──なのに、言葉が出てこない。
そんなことをぐるぐると考えていると。
「ご、ごめん!」
「え!?」
ばひゅーっ、という効果音が出そうなくらいのスピードで、走って去っていく篠宮君。
えーっと。
「どうすればよかったのかな……」
独り言が、ポロリとこぼれた。




