表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
82/94

82

リーンが受けてきた依頼は土ネズミ五匹討伐、角ウサギ三匹討伐、ピースネイク三匹討伐、それと薬草二種の採取依頼だった。全て街の西側の草原、街の近くで達成可能だ。


「依頼って五個まで一緒に受けられるんだっけ~」

「うん。達成出来ないとペナルティだけど」

「問題ねえだろ」

それぞれ依頼を受けてから達成するまで期限が二~三日あるが、討伐依頼は小物の魔物だし薬草も普段よく採っている。今日中に達成できるだろう。

「じゃあ行こう」

ニコニコ笑うリーンに二人も頷く。なんとなく周囲で見守っていた冒険者達に手を振ってギルドを出発した。




門のところにいる兵士に首のプレートを見せて街の外に出る。冒険者は街の出入りにお金がかからない。

ものすごく首を傾げられて一人ダッシュで冒険者ギルドに確認に行ったが無事に出られた。若い兵士さんありがとう。


「土ネズミは草原に穴を掘って暮らしてるんだって」

「それモグラじゃねえの」

「ネズミなんだって。あとピースネイクは緑色の蛇だって」

「これぇ?」

ケネスが左手にブランと小さな蛇を持っている。

「それ」

リーンがコクリと頷く。

街から出て十歩ぐらいで一匹討伐終了した。保護色な上に小さいのでとても見つけ難いと聞いたのだが。

額にある大きな鱗が討伐証明だが、後で纏めて処理しようと収納鞄に入れる。



今回受けた依頼は薬草の納品依頼と倒すだけの討伐依頼の二種類。依頼の種類はそのほかに護衛や労働などもある。

討伐依頼は討伐証明に決められた部位を提出することで達成となりそれ以外で取れる素材は冒険者達の自由にしていい。但しその分討伐依頼の報酬は安い。

といっても今回の獲物のような小物の魔物は討伐証明の部位のほかは小さな魔石ぐらいしか取れないが。

角ウサギは唯一肉が売れる。これはマルツ村の周辺にもいてリーンも何度も食べたことがある。なかなか美味しい。



そうして説明しながら歩く間にもリーンの空間把握にネズミや蛇、角ウサギの存在がバンバン感知されている。

なんか、いっぱいいる。

チラリと両隣を見ると二人も気配に気付いているようで既に獲物にそれぞれ鋭い視線を向けていた。

「うん。解散」

言った瞬間セオが飛び出しケネスが続けざまに矢を撃つ。

自分も手のひらに魔力を集めながら、こんなにすぐ帰ったら門番さんにまた変な顔されるなと思った。




「どうされました?こちらは納品および買取のカウンターですが」

不思議そうに首を傾げるギルド職員の前に薬草の束とネズミの尻尾などの討伐証明となる部位を出す。今回は魔石と角ウサギの肉も一緒に売るので一緒に。

「終わったので」

「……は?」

「終わったので」

もう一度同じ台詞を言ってコクリと頷く。職員が慌てて出された物を確認しだした。


「……おい、チビちゃんらさっき出てったんじゃ」

「おう。その後すぐ門番来ただろ」

「マジで?……え。マジで?」

後ろがザワザワしている。というか自分の呼び名は『チビちゃん』で固定されてしまったんだろうか。

由々しき問題だと眉を寄せていると職員から問題無く依頼達成だと声をかけられた。



報酬の銀貨と大銅貨一枚ずつ、銅貨二枚を受け取ってありがとうと返事をした。合計11,200ルク。依頼5件達成と小物の魔石11個、肉の納品全部合わせて報酬はこんなものだ。

そして普通の冒険者は一日かけて1~5件の依頼を達成するという。冒険者は基本的に数人でパーティを組んでいるので、人数で割ったら一人いくらの稼ぎになるのか。駆け出しが宿屋に泊まるお金を節約するのも頷ける。


なるほどと頷きながら掲示板の前にいる二人の元へ歩いていく。今は人が少なくなったし今度は三人で依頼を選ぼう。




午前中に三回、計26件の依頼を達成したところでランクがFランクに上がり受付と納品のカウンターにいるギルド職員に虚無の顔で拍手と共に祝われた。

「Fランクだって」

「わぁ~達成感がない」

「門出たり入ったりしてただけだしな」

門番達にこいつら何やってんだという視線を向けられながら往復したのだ。門番達は段々訝しげな顔になり、ギルド職員達は段々虚無の顔になっていった。


二回目からは受けた依頼以外の依頼品も取ってきて戻った時に依頼を受けて即納品なんかもしていたのでこの件数だ。

戻った時には依頼が無くなっていたりしたのもあったが収納鞄に入れておけばいつか使うだろう。


「じゃあ次……の前にお昼ご飯行こう」

「だねぇ。また依頼追加された後にしよっか」

「肉食いてえ」

周りで見守っていた冒険者達がガクッとなる。快進撃続けるんじゃねーのかよという空気を全く気にせず三人は何を食べようかと相談しながらギルドを出ていった。



お昼は屋台で肉がこれでもかと乗ったパンとリーンは野菜たっぷり、セオ達は肉の塊が入ったスープを食べた。

美味しそうな匂いが漂う食堂なんかもあったが、夜にアマート達が美味しいお店に連れていってくれる約束なので屋台にした。屋台もあれこれと売られていて楽しい。


よし。午後も頑張ろう。




「Eランクの依頼も受けられるね」

「草原のちょい奥か森かぁ」

「森、魔物残ってんのか?」

掲示板の前で相談。Fランクになったので受けられる依頼が増えたが先日スタンピードが起きて森の魔物は大量に討伐されている。セオの言うように数はだいぶ減っただろう。

それと、掲示板の横に森の魔物の素材は一時的に買取価格が下がっていると注意書きが。

「ん。草原の奥行ってみようか」

そういうことになった。



門番達にこいつらまた来たのかという視線を向けられたが、革製に変わったプレートを見せたら一気にギルド職員と同じ顔になった。

「あー……マジか。頑張ってこい。うん」

若干投げやりに見送られて門を出る。


「今度は亀とトカゲだっけ~?」

「あと蛇な」

「えっと。ヘルバトータスっていう犬ぐらいの大きさの亀と、ウィーペって紫の毒蛇と、岩トカゲ……」

常々思っていたが、かっこいい名前がついている魔物とそのままの名前の魔物の違いはいったいなんなんだろう。

急に首を傾げて何か考え込み始めたリーンの背を二人が押して歩かせる。いつもの事だ。



今回は討伐依頼は毒蛇一匹と岩トカゲ三匹、そのほかに毒蛇の毒袋の納品と亀の血と肉、甲羅の納品依頼を受けている。

亀は血抜きして丸ごと納品だ。

岩トカゲは上手く岩に擬態するので見破るのが難しいらしいが、気配と空間把握で三人共分かるので問題無いだろう。



先程までより草原の奥に歩いていって早々に毒蛇と岩トカゲを見つけた。蛇はケネスが遠くから弓で撃ち、岩トカゲはセオが普通に斬って三匹共倒した。触った感じは完全に硬い岩だったんだけど。

そして亀。今リーン達三人は甲羅の中に引っ込んだ亀を囲んで顔を見合わせていた。



「引っ込んじゃった」

「セオこれ斬れない~?」

「甲羅斬ったらマズイだろ」

うぅーんと首を傾げる。これ、そのまま持ってっちゃダメだろうか。……ダメな気がする。

「あ」

そうだ、岩トカゲに使おうと思ってたけど。

リーンが水魔法で亀を水球に閉じ込めるとしばらくして顔を出しジタバタと暴れ出した。

すかさず水を消しセオが首をはねる。

「さっすが~」

「わ、わ、血集めなきゃ」

ワタワタしながら桶を出してそこに亀を斜めに入れた。血抜きが終わったら血を瓶に移して終わりだ。


「向こうにも亀いんぞ」

「えぇ、うわほんとだぁ」

終わりだと思ったら追加らしい。亀は同じ納品依頼が3件あったのでもう一匹追加しても大丈夫。

「じゃあ、はい」

桶をもうひとつ出してセオに渡す。あっちはまだノソノソ歩いているのでセオなら気付かれる前に倒すだろう。

「ん。行ってくる」

「じゃあ俺はそっちの草掘り返してくるねぇ。根っこの納品依頼出てたし」



こうしていくつかの納品物と討伐証明を手に街に戻り、午後の一回目で早くもEランクに上がった。午前中の分で結構な数のFランク依頼を達成していたせいらしい。

再び虚無の顔で祝われた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ