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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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草原、というか平原?で野営の準備。

この辺りは秋になって雨が増えると草がニョキニョキ伸びるらしいが、今は夏で雨が降らないので地面を這うようにして生えている。木はほぼ無い。

秋になる前に出発したかった理由の一つだ。雨が降る上にあちこち草が生い茂って視界が悪いのはちょっと。



「リーンはご飯の用意お願いねぇ」

「うん」

セオとケネスがテントの設置にかかり、イワンがドランへの報告書を書いている。毎日夕飯前に転移箱で簡単な報告書を送り、ドラン達がそれに返信するという決まりだ。旅の報告兼実験。

今頃家では皆ソワソワしているかも。

チラッとイワンの手元に視線を向けくすりと笑って焚き火の為の薪を収納鞄から取り出した。



夕食は特製干し肉と豆のピリ辛スープ、茹でた芋を潰して裂いた干し肉を混ぜた物、パンとチーズとベーコンだ。

焚き火でチーズを炙ってとろけたところでパンに乗せたベーコンの上に落とす。零さないように慎重にかぶりついた。

「うま〜。スープ辛いけどうま〜」

「干し肉、いい出来です」

セオは無言で食べている。あっという間にベーコンが無くなり悲しそうな顔で仕方なく芋に手をつけ、美味しかったのか目を見開いた後に芋もバクバク食べ始めた。ベーコン追加してあげよう。



チーズとベーコンを落とさないように悪戦苦闘してたらセオが二つ折りにして三つにちぎってくれた。なんでセオがやるとチーズはみ出さないんだろう。

首を傾げながらお礼を言う。

「手紙、ちゃんと届いた?」

「ええ。昨日も問題ありませんでしたし、やはり距離は問題では無さそうですね」

「そっかぁ」

昨日はイワンが三人の活躍を報告し、ドランからお手柄だとお褒めの返信が届いた。

今日の分は注意事項が山盛りで返信が来たらしい。内容を詳しく話さないところを見るとまた過保護全開になっているようだが。

リーンはコクリと頷き聞かなかった事にした。



テントを設置した。ご飯も食べて片付けもした。そうなれば次は寝る時間だ。

「イワンは何かあったら飛び起きる係だから、僕達三人で交代で見張りだね」

「…………」

「…………」

イワンが就寝中の常時警戒を言い渡されている。とてもナチュラルに。

二人がイワンを見ると笑顔で頷かれた。問題ないらしい。

今はただの爺だと言う割には元気過ぎる気がする。首を傾げるセオと慄くケネスに構わずリーンの話が続く。

「それで、順番はどうしよう」


順番。というか一人ずつの見張りなのか?

二人の視線が今度はリーンに向いた。戦闘は問題ないが気配が分からない人が一人居る。

「大丈夫」

リーンがニコニコ笑って頷くと同時にズザァァ!という音と共に周囲が高い土壁に囲まれた。

「うわぁ」

「坊ちゃん……」

「見張り要らねえ」

セオの言葉に「え」と瞳をパチクリさせた。




現在夜の八時ぐらい。起きるのを朝五時として一人三時間ずつの見張りだ。

これで天井もつけてしまえば見張りは必要無いけど、壁だけなので虫系の魔物は侵入してくる可能性がある。……かもしれない。あと壁をぶち破るやつとか、ドラゴンとか。

リーンの必死の訴えで見張りは必要と決定された。

天井つけたらいいじゃんとは誰も言わないでおいた。



寝たら起きないケネスが最初で次がセオ、朝ご飯の支度をするリーンが最後になった。

ケネスに堅焼きビスケットや干し果物を渡してテントの中に入る。セオの番になっても残っているだろう。

「ふふ。セオ起こしてね」

ニマニマ笑うリーンのおでこをペチンと叩いて「早く寝るぞ」と笑いマントに包まるセオ。

その横にリーンもゴロンと寝転がった。焚き火でも嗅いだ虫除けの草の独特な匂いが強く香るが不快では無い。


「坊ちゃん、寒くはありませんか?」

「大丈夫。あ、毛布出しておくよ。寒かったら使ってね」

モゾモゾと寝転がったまま鞄まで移動して毛布を出す。

クレアに見られたらしこたま怒られるがイワンは苦笑して見ている。大丈夫だ。既に寝息をたてているセオの隣にまたモゾモゾ戻ってマントに包まった。

「お休みなさい」

「はい。お休みなさい」




「おい」

低い声にパチリと目を開けた。暗い。えっと。

「見張り」

ぼうっとテントの天井を見上げていたが、セオの言葉で思い出した。そうだ見張り。

ゆっくりと起き上がって声を潜めてセオにお礼を言った。


交代で横になるセオにお休みの挨拶をしてテントの外に出る。外はちょっと肌寒い。

ビスケットと干し果物が渡した量のちょうど三分の一ぐらい残してあるのを見つけてふふと笑う。焚き火にかけてある薬缶からコップにお湯を注いで土の椅子に座った。

「静か」

見上げると高い土壁の上に満天の星空が広がっている。普段夜に外に出る事など無いので新鮮だ。




……暇だ。

何かする事は無いかな。二人はどうやって時間を潰したんだろう。うぅーんと首を傾げる。

あ、そうだ。この機会に気配とか分からないのをどうにかできないか試してみよう。そう思い周囲に注意を向ける。が、全く分からない。分かりそうもない。

草の音とか遠くの鳥の声は聞こえるけど。多分セオ達は忍び足で近付く獣や魔物にも気付く。気配?ってそもそも何。



ちょっと方向を変えてみよう。

リーンには有り余る魔力がある。一昨日魔力切れを起こした後に更に増えた気がする。たくさん使えば総量も増えるんだろうか。

よし。じゃあ魔力を使おう。

属性を指定せずに魔力を放出する。自分との繋がりは維持したまま、霧散しないように慎重にそのまま広げていく。

魔力が広がった範囲にある物の情報が流れ込んできた。

あれ。これ空間把握のスキル使ってる?でも、

「パキン」

ん?土壁の辺りまで魔力を広げたところで魔力が固まった感覚。……固まった?



見に行ってみた。目では見えないが確かに魔力が固まっていると分かる。触ってみるとちゃんと触れた。

「魔力の壁」

ぐるりと周囲を見回すと上にもある。土壁の内側にドーム状に魔力が固まって壁を作っていた。

そして空間把握のスキルが発動している。さっき魔力を広げた時点で魔力が壁の役割をして、周囲を探ろうと無意識にスキルを使っていたらしい。

魔力が固まる前の状態を維持できれば空間把握でどうにかなるかも。ウンウン頷き頑張ろうと気合いを入れた。


で、この見えない壁は何。


「あ」

魔力で不可視の壁を作る。そんなスキルがあったような。




テントの中でイワンが起きた瞬間首を傾げているのを認識する。テントから出てきてニコニコと近付いてきた。

「坊ちゃん、何をしたんです?」

「うーんと」

苦笑してなんて言おうか考えていると、テントでセオが飛び起きたのがわかった。キョロキョロしている。

そこまで認識したところで空間把握のスキルを切った。セオがテントを飛び出してきたし。


「おま、これ。なん……囲まれ?」

珍しく混乱しているセオを気の毒そうに見ていたイワンが口を開いた。

「恐らく、ですが。結界のスキルかと」

「うん」

「……は?」



気配を感じる練習してたらなんでかできたと言ったら、起こされたケネスも含めて全員にため息をつかれた。



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