表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
80/139

理由

息吹は七之助の世話をしながら、百目数珠の訓練を始めた。尊治が言うには、息吹が百目数珠を使えるかは定かでは無いが、可能性はまだあり、訓練も無駄では無いと言う事だった。


百目数珠には、人の魂がやどっており、帝以外は簡単に制御できない事。

使えるようになっても、命は削られることが説明された。


息吹は、命が削られる事については不安で、怖かったが、今迄の様に逃げ出すのではなく、どうすればいいかよく考える事にした。


(戦にならなければいいんだ。……私が産まれた事で、色んな人の運命が変わったんだったら、またいいように変わるよう頑張ればいいんだ)


息吹は毎日百目数珠の部屋に連れて行かれた。


百目数珠はあいも変わらず気味悪く、部屋にいる間、息吹は何度も吐きそうになった。


息吹が数珠の前であぐらを組み、尊治が後ろに立って祝詞を唱える。すると数珠は青白く光り、その光は息吹の身体を包み込む。ただそれだけの作業を何度も続けられた。


「百目数珠には意志がある。……まだお前の封印が解かれていないから使えるようにはならんが、こいつに気に入ってもらえば、命を削る作業も少なくて済む。お前の事を数珠によく知ってもらった方がいい」


息吹にはなんとなく尊治の言ってる事が理解できた。


ーー数珠は生きている。


もし大きな力を持っているなら、とんでもない怪物だ。





毎日瞑想を続ける中で、息吹は、今までの旅の事、倭国に訪れてからのことを思い返していた。


(私には逃げちゃダメな理由がある)


息吹は、いつかの看板の上でトカゲに誓いを立てた事を思い出していた。


(私が逃げ出せば、誓いを破る事になっちゃう。……それに私を信じてくれた沢山の人を裏切る気がする)


息吹は逃げ出した時、その時は苦しみから解放された様に思えたが、いつも頭の中に浮かぶのは自分を助けてくれた人達の笑顔だった。


(コウテカさんもトカゲさんも、あのモグラのおじさんも私達の為に危険を承知で助けてくれた)


嘔吐を繰り返す息吹を見て、今日はもうやめるかと尊治が尋ねた。息吹は口をぬぐい、大丈夫と言ってまた目をつぶった。


(尊治様は利用するためでも、私に居場所を与えてくれた)


目を瞑ると、青い光が近寄って来ているのを感じる。


(七之助さんは、自分の命よりも私の事を優先してくれた)


激しい頭痛が息吹を襲い、手足の先が痺れて来る。


(お姉さんと神谷様は、命を救ってくれた。あったかく包んでくれた)


脳裏に二人の心配そうな顔が浮かぶ。胸の中に、暖かく確かな物がある様な気がした。


(先生が今まで守ってくれてたから……)


懐かしい笑顔を久しぶりに思い出した。会える事が出来なくなっても、一緒に過ごした時間が消える事は決して無いのだ。 ……どうして今まで、そんな簡単なことを忘れていたのだろう。


息吹は目を開け、数珠を見つめた。青い光は生きているかの様に蠢き、まるで息吹を値踏みしているかの様であった。だが、今はなんだか怖く無かった。息吹は初めて数珠に話かけた。


(百目数珠、お願い。……私に力を貸して!!)


光は青く輝き、息吹は目の前が真っ白になった。


(寒い……)


遠くで尊治が自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、ーーーそのまま意識は遠のいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ