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記憶 3
小さな城に着くと神谷は、馬から飛び降り嬉しそうに老人の首に抱きついた。
「じじさま!」
「神谷、随分大きゅうなったのう。わしゃ嬉しいぞ」
老人の白髪はモジャモジャで、顔形は何処と無く神谷に似ていた。男性にしては背が低く、ちょっと小太りであったが、神谷をヒョイと肩に乗せた腕は太くしっかりしている。
「もういい歳なのでですから、あまり無理をなさらないでください」
神谷の母が心配そうに後ろから付いてきている。農業が盛んなこの地域では、馬糞などの匂いがきつく、宮中の者達は嫌がったが、神谷にとってここは自分が唯一殿様に成れる場所で、心から安らげる場所だった。
「じじさま、元気でしたか?」
「ああ、お前が帝になる迄は簡単にはくたばることはできん。どうだ、宮中の暮らしは?」
「……すごく勉強になります。兄弟も皆優しいです」
「ふふふ、そうか。お前は長兄に当たるのだから、帝になるのは決まってるんじゃ。皆、媚びを売って来てさぞかし大変じゃろう」
じじさまはガハハと豪快に笑い、意気揚々と城の中に入って行った。
(じじさまを悲しませられない……)
幼き神谷少年の心にも、この城の者達の期待は感じられた。
(大丈夫。僕には母上がついてる。どんな事だって乗り越えられる)
神谷は懐かしい城の空気を感じながら、使命感を募らせるのであった。




