記憶 2
(あれ……ここ)
神谷は、よく知ってる畳の部屋に自分が居ることに気づいた。
「気づいた?あなた気を失っていたのよ」
心配そうに、女性が神谷を覗き込んでいる。女性は神谷が起き上がるのを手伝うと、額の汗を優しく拭ってやった。神谷は少しぼうっとしたかと思うと、目からボロボロ涙をこぼし、ぐっぐっとしゃくりあげて泣き始めた。少しふっくらした優しい目元の女性は、もう大丈夫よと言って、神谷の背中を優しくさすった。
「……母上ごめんなさい。ふぐっ。僕が弱くって、ぐっ」
泣きながら謝る神谷を、母親は優しく抱きしめて、何言ってるのと言って顔を頭にくっつけた。
「あなたみたいな、優しくてお母さん思いな子、私は見たことないわ。……母は、この世で一番幸せ者よ」
神谷は一向に泣き止まなかったが、母親は優しく抱き寄せたまま、何も言わず背中をさすった。
ようやく神谷が泣き止むと、ぎゅるるると盛大にお腹の音が鳴った。神谷は顔を赤くして、お腹空いたと、母に顔を埋めたまま呟いた。
母親は、ふふふと笑って、部屋から出て行くと、暫くしてからお盆の上に神谷の大好きな卵焼きとおにぎりを持って帰ってきた。
神谷はやったあと嬉しそうにすると、手も合わせずにいただきますと言いながら、もう口に運んでいた。
「おじいさまが悪いのよ。私がここに嫁いだ事であなたを辛い目にばかり合わせて……神谷、本当にごめんなさいね」
母が悲しそうな顔をしてるのを見て神谷は、急いで元気なふりをした。
「じじさまは悪くないよ!母上がここに嫁がなければ、僕ら今みたいにいい生活は送れなかったんだから」
「でも、私達は、朝廷の中でも本当に身分が低いし……あなたがいじめられるのもそのせいなのよ」
母の表情は晴れ無かった。神谷は、なんだか元気が出てきて、母にお願いした。
「じじ様のお城に帰りたいな。ちょっとの間でいいから」
すると母の表情はほんの少し晴れて、お父様にお願いしてみるわと言い、立ち上がった。
「ゆっくり休むのよ」
母は神谷のモジャモジャした髪を優しく撫でて、部屋から出て行った。
ひんやりした風が神谷の頬を撫でた。
(取り敢えずここに居れば今は大丈夫)
神谷は全てたいらげて、また横になり、スウスウと寝息をたて始めるのであった。




