思ってもみない事
息吹は聞き慣れない言葉が並んでポカンとした。尊治はツカツカ、宝珠と呼ばれるものの前に近づいた。息吹にもこっちに来るよう目で促した。
「この宝珠を得る為、俺の母は、帝に近づき俺を産んだ」
尊治の顔は、影になっていて、息吹にはよく見えなかった。
「此れは、多くの贄と大鷲を犠牲にして作られた、法力の結晶だ」
息吹は、青い光に吸い込まれるように宝珠に近づいた。光はさほど強くなく、宝珠は生きてるようにも見えた。数珠と呼ぶには、あまりにも大きく、息吹が肩からかければ丁度良さそうな大きさだった。
「俺は、こいつに選ばれ無かった」
尊治の声には、自嘲してるようなものがあったが、幼い息吹は気づかなかった。
「選ばれるってどういう事?」
「今の帝は、こいつに選ばれ戦乱の世であった倭国を統一した」
息吹はなんだかよくわからなかったが、一生懸命理解しようとした。尊治は宝珠を掴み息吹の肩にかけてやった。意外と重くて息吹は少しよろけたが、なんとか踏ん張り、宝珠にそっと触れた。
「俺はお前が現れた時、この宝珠をお前なら使えるかもしれないと思った」
息吹はびっくりして、宝珠を外して尊治に突き返した。
「私には荷が重いよ!」
息吹は思いの外大きい声が出て気まずかったが、なんだか急に宝珠が気味悪く感じたので尊治に宝珠を突きつけた。尊治は、少し黙ってから、宝珠を受け取り元の場所へ返した。
「だが、未だにお前は法力も使えん無能な厄介者だ」
尊治は少し笑っていた。それは、自嘲するわけでもなくただ可笑しくて笑っているようだった。息吹は、どうでもいいから早くここから立ち去りたくて思ってもみない事を口走ってしまった。
「こんなの使えなくても、私、尊治様の役に立てるよ。私、しゆう(紫勇)に入るから大丈夫」




