百目数珠
長く美しい髪が、サラサラと川が流れるように揺れた。息吹はやはりボンヤリついていっていた。乾いた風は少し冷たく、息吹は少し身ぶるいした。尊治は、立ち止まると息吹先に入るよう促した。そこは薄暗く、狭い石畳階段が、永遠に続いているように見えた。
息吹は振り返り、首をブンブン振って拒否したが、尊治に睨まれると、階段を降りざるえなかった。尊治は扉を閉め、先を歩いた。いつの間にか小さな灯りを手にしている。
(また、牢屋かな)
息吹は逃げ出したかったが、扉を閉められた為ついて行くしか無かった。
もうどれくらい降りたのだろうか。尊治は一言も発さなかった。それが余計に息吹の不安を募らせた。あの時さっさっと布団に戻っておけばよかったと後悔した。
しばらく降りると、大きな扉の前に着いた。そこは青い炎に照らされ、巨大な鬼の像が二体扉の前で仁王立ちしていた。息吹は怖すぎて、もう一回厠に行きたかった。足はガクガクし、拳を握りしめても、震え止まらなかった。鬼の形相は、息吹が見た事も無いくらい険しく、大きな牙も、むき出しの目玉も、今にも襲いかかってくるんじゃないかという感じであった。
尊治は素早くいくつかの印を結び、祝詞を何やら唱えた。
すると、扉はギイイイと、音を立て勝手に開いた。尊治はツカツカと進むと何か光る物の前で振り向いた。
「我ら宝珠、百目数珠だ」




