目論み
倭国の中にも、平地のところ少しばかりあった。中でも海に面した場所は、多くの人々が住み、暮らしていた。朝廷が暮らす宗里もまた、海に面し、多くの人々で賑わっていた。
格差の激しい倭国にとって、朝廷の人々は青藍の遣いとされ、人々が目にする事は滅多になかった。朝廷の人々も 、下界の人々は同じ人間とは認めておらず、自分達は選ばれた者達と信じ込んでいた。
「知ってるけえ、今、お上は病に伏してるらしいがやあ」
「ばあかあ言うでねえ、青藍様のお遣いが病なんぞにかかるわけがねえだあ」
「うんだよ、きっと青藍様にい選ばれたんだあ、お上も立派にお役目果たされたんだべ」
だが、平和が訪れた事が皮肉にも、朝廷への畏敬の念を薄れさせた。まことしやかに、朝廷の帝も、同じ血の流れる人間では無いかと噂され始めたのだ。
唐草の傘を目部下に被り 、団子屋でモクモクと団子を食べる者がいた。多くの者で賑わう宗里で、彼を気にかける者はいなかった。
男は立ち上がり、そのまま宗里で最も大きな城に向かって足を運んだ。
(やはり 、 朝廷の力は弱まっている。……機は熟した)
この男こそ、月光に照らされたあの美しい人、尊治であった。
(あいつは、まだ法力を使うことはできんが、戦力としては十分だ。我が紫勇にいれても、いい頃合であろう)
尊治の表情は変わらなかったが、美しい漆黒の切れ長の目はギラギラと光っていた。
息吹が、七之助と尊治に心を許し始め、逃げる機会を失っている間にも 、彼らは、一族復興へ着々と準備を進めていた。
(俺は、一族の怨念から自由になってみせる……どんな犠牲を払っても)
ーー漆黒の瞳には、闇が存在していた。自由なカラスの子もまた、その闇が背後に迫っているのであった。




