小噺3 愛しのポップコーン(フローレン&ロイアス)
フローレンとロイアスと、厨房の料理人さんたちと……(*^^*)
1/12追記:誤字脱字が酷すぎて我ながら呆れます(^^;; 見直しは三回はしてるんですけどね……
それでも見落とすのがパターン化しているようなので気付いた方は容赦なくお知らせいただけると助かります!
~愛しのポップコーン~
……おやつが食べたい。
いつもの焼き菓子も魅力的だけど、どれもこれもが高級品で、たまには下町的なというか、シンプルで素朴な味のものが欲しくなる。
そう、例えば。
甘いのではなくて、塩っぱいの。
……ああ、そういえば。
「いつかポップコーンを作ろうと思ってたんだっけ……」
「……というわけで、兄さま。今おヒマですか?」
「何が『とういうわけで』なのかは分からないけれど、時間ならあるよ?」
「よかったです。それじゃ一緒におやつを食べに行きましょう。……というか、調達に行きましょう、厨房まで」
「わざわざ厨房にまで行くの? 人を遣って部屋に運んでもらうのではなく?」
「はい! 調達というのは、自分たちで作りましょうっていう意味でもあるので!」
「作る……?」
訝しげな表情で問いかけてきたロイアス兄さまに『にっこぉ~』と満面の笑みで以て元気に返事をする。
「はい! 作るのですよ!」
いつか言ったこと、覚えてませんか、兄さま?
火の魔法を用いて熱することで作る簡単お菓子のことを。
今はもう水属性の兄さまに相反属性である火属性の魔法を使ってもらおうだなんて思わないけれど。
あの時のお菓子を作るっていう約束は叶えたいな、なんて。
だから今回は魔法は関係なし。
普通にひょっこりと厨房に顔を出して、お手軽シンプルな懐かしのお菓子を作って食べたいだけ。
大好きな兄さまと一緒にね!
「……というわけで! おやつを作りに『ドキドキ☆お昼の厨房突撃大作戦♪』なのですよ!」
「フローレンお嬢様……何が『というわけで』なのかは分かりませんが、わざわざお嬢様ご本人が顔を出す場所ではないですよ? しかもロイアス坊ちゃままでご一緒だとは……」
うん、さっきも同じこと言われた!
自分でも何が『というわけで』なのかよく分かってないから、そこはさらっと流してくれちゃってオッケーですよ?
「あのね、あのね! おやつが欲しいの! いつも食べているような焼き菓子とは違う、手軽に簡単にできて、シンプルでクセになる味のおやつが! できれば甘いのじゃなくて塩っぱいのがいいな!」
「甘いものではなく塩っぱいもの、ですか? それもおやつで……?」
「うん! だから……隅っこのほうでいいの。ちょっとだけ、厨房、貸してくれる?」
「いやいやいや、いくらお嬢様の頼みでもさすがにお嬢様ご自身に調理をさせるわけにはまいりませんよ! 言ってもらえたら我々が調理を行いますので!」
「えぇ~!?」
「『えぇ~!?』じゃないよ、レーン。料理長を困らせるものじゃない」
「むぅ~……」
自分でやりたかったのにぃ~……と、思いっきり剥れてみせるも、兄さまは心配して言ってくれてるんだよね。
私が怪我をするかもしれないから、と。
まぁ、そこは私のことなので例の如くやらかしますし?
張り切って空回りして火傷……とか超お約束だろうねぇ。
『大丈夫だから』と言っても絶対に信用してもらえないのは目に見えているから、ここは素直に言うことを聞くことにします。
聞き分けの悪い子にはなりたくありませんのでね。
な・の・で!
ここはレシピを提供しつつプロフェッショナルにササッと作ってもらうのですよ!
「乾燥とうもろこしとバターと塩、だけでございますか?」
「うん!」
「調理器具も蓋のあるフライパン一つでいいと?」
「そう! 少し深さがある方がいいからお鍋でもいいよ!」
不思議そうな顔をしつつも必要なものを用意してくれる料理人の皆さんにニコニコ笑顔で頷く。
これからおやつを作るというのに、挙げられた必要な材料や道具があまりにも少なすぎることに疑問なのだろう。
気持ちは分かる!
でもホントにこれだけなの!
フライパンにバターを適量落とし、そこに乾燥とうもろこしを一粒。
それを強火にかけて~……弾けるのを待つ!
暫くすると入れた一粒が『ポンっ!』と勢いよく弾けて膨らみ、それを見ていた人たちが『おぉ!』とどよめく。
「弾けた! 残りを入れて、全部! でもって蓋をして! サッと!」
「はっ、はい!」
急かすように言い募る私の言葉に、手際よくフライパンへと残りの乾燥とうもろこしが入れられていく。
全てを入れ終わると同時にフライパンの蓋をオン!
「あとは火にかけたまま揺すり続けて~。中身が全部弾けて膨らんだら完成だよ! 焦げちゃわないように気をつけてね?」
「かしこまりました、お嬢様」
「うふふ~♪」
ただ待つだけなのはつまらないので、フライパンの中身がポコポコ弾けていく様子を観察しようと、踏み台を用意してもらうことにした。
いつもより高くなった視界の先を見下ろし、今か今かと完成の時を待つ。
「できるまで蓋は絶対に開けないでね? あちこちに弾け飛んでいっちゃうから」
「えぇ……この勢いでは辺り一面に散らばってしまうでしょうなぁ……」
「そうなったらお掃除大変だよ~?」
苦笑する料理長にケラケラと笑ってみせる。
そんな私の隣では、兄さまも興味深そうにフライパンの中を見つめている。
「もしかして、前にレーンが魔法で作ってみたいと言っていたのはコレのこと?」
「はい!」
でも自分たちだけで魔法を使ってこっそりやるよりも、今みたいにこうして作ってもらうのを一緒に見ている方がいいのかも。
なんだかんだで、皆の反応が新鮮なんだもん。
作る過程で楽しめるっていいことだよね。
完成した後に皆で食べたらきっとすごくおいしいだろうな。
そうして。
ワクワクしながら待つこと数分。
フライパンの中身は全て、真っ白ほこほこに弾けて膨らんだポップコーンで埋め尽くされたのでした。
「きゃあ~、完成~~~♪」
感激のあまりはしゃぐ私。
それを苦笑しながら見つめる兄さまと厨房の料理人の皆さん。
テンション高すぎてごめんなさい。
久しぶりすぎて嬉しさが隠せなかったのです。
うぅ~早く食べたい!
適量の塩を振り入れ、万遍なく絡ませるように再びフライパンを揺すってもらう。
そうしてお皿の上に広げられたポップコーンからは絶妙な香ばしい香りがふんわりと漂い、空きかけの小腹を程よく刺激してくれる。
「わぁ~い、いただきま~す♪」
サッと手を伸ばし、二欠片ほど摘んでぽいっと口の中に放り込む。
う~ん、懐かしいわこの食感。
カリッとサクッの中間くらいにふわっと感が混じっているようなこの不思議な感じ。
映画のお供、大好きでした!
いや、今でも大好きです!
コーラがないのがちょっと残念だけど、オレンジジュースと一緒に摘むのも意外と合うかもしれない。
「……行儀が悪いよ、レーン」
「待ちきれなかったんです。でも、とってもおいしいんですよ? 兄さまも食べてみてください。はい、あーん」
「ん」
二欠片ほどをロイアス兄さまの口元に運ぶ。
『ダメ』って注意されるかと思ったけど、そのまま食べてくれた。
「これは……あっさりとした味で食べやすいね。想像していたものとは違ったけれど、これはこれでおいしい」
「でしょう?」
兄さまの反応がよかったことに笑顔を返しつつ、作ってくれた料理長を始めとした厨房の皆さんにも食べてもらうことにした。
最初こそ初めて目にするポップコーンに戸惑っていたようだけれど、一度口にしてしまえば反応はガラリと変わる。
簡単で手軽なシンプルなこのおやつは、なかなかに好評だった模様です。
まぁ貴族の邸には似つかわしくない素朴すぎる見た目のおやつだけど、おいしいものであることに変わりはない。
たまにはこういうシンプルなおやつもいいもんだよ?
というわけで、これからも食べたくなったら作ってもらうことにした。
───そして……
「なんでだろう……?」
「はい? 何がです? フローレンお嬢様」
「どうして、見た目シンプルなおやつなのに。器が変わるだけでこんなにもオシャレなおやつに見えてくるんだろう……?」
「器がおしゃれだからではないのですか?」
そう。
私の目の前には今、とってもオシャレに見えるポップコーンがちまりと鎮座している。
まるでスワ●●スキークリスタル製品のような、美しいカットが施されたカクテルグラス風の器に少量盛られたポップコーン。
器一つ違うだけで『どこぞの高級クラブです?』と言いたくなるような、それはそれはオシャレなおやつに早変わりですよ。
「レーン」
「何ですか、兄さま?」
「料理は見た目も大事だよ?」
「? そうですね?」
「それには器も大きく関係してくる」
「?? そう、ですね……??」
「公爵家の者に出すならば、それなりのものでないといけないことは理解できるね?」
理解はできる。
できる、けども……
これ、ポップコーンだよ~?
前世では紙コップにザラッと盛られてるのが普通だったよ~?
こんなオシャレな器に盛られて出されても違和感しかないってば!
「料理は目で楽しみ、香りで楽しみ、舌で存分に味わうものですからね」
「尤もだな、エルナ」
「恐縮ですわ」
……うん。
やっぱ、貴族にポップコーンは似合わないわ。
────これをスプーンで食べろとか、ワタシ的には有り得ませんからーーーーーーーー!!!
この愛すべきおやつは、下町とかで気軽にのほほんと食べ歩きするスタイルくらいでちょうどいいのだ……─────




