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第1話「Fragile」

あまね6歳。


小学生になったご褒美に父親から子供向けの絵画セットをプレゼントされた。


あまねは毎日スケッチブックに絵を描いた。


両親がスケッチブックを見てみるが、何を描いているのかよく分からないものが多い。何か才能でもあるのかと、近くの公民館で毎週開かれる絵画教室に通わせた。


教室で教えるプロの画家はあまねの才能に驚愕する。


基本的な技法を習い、画家の勧めに従って小学生向けのコンテストに出展し、世間の注目を集めた。


あまねは目と耳が良い。そしてそれらを頭の中で同列のものと認識していた。


毎日のように絵を描くも、枚数を重ねるごとに常人には難解すぎる内容となり、

10歳のころには全国レベルに有名な天才少女と呼ばれ、個展なども開催する程になる。


しかし、母親はあまねを愛していたが、無表情で友達も作らず、毎日あらぬ方向を凝視したりする娘にどこか不気味なものを感じ始めていた。


猫を写生しているあまねは、猫の姿ではなく鳴き声を色に置き換えて絵に仕上げていく。その様子を見て、あまねの母親は、娘が自分をどのように見ているのか考えるのが怖くなってきていた。


ある日の夕食前。窓辺で外を見ているあまねに声をかける。だが、あまねは窓の方を向きながらこちらを見ない。

つい、「あまね、ご飯だってば」と大声を出してしまう。


ビクッと体を震わせ、両耳を手のひらで塞ぎながら苦しそうな目で母を責める。


「ママ、お願い、大きな声は出さないで」


◆ ◆ ◆


あまね11歳。


あまねの母親は娘との距離感をうまく調整できないままだったが、大きな波風も無い平穏な日々を過ごしていた。


が、明らかにあまねの体調がおかしいことに気づく。


学校の健康診断では問題なかった。普通の子供よりも体格も良く、高校生に間違われる程だった。発育には問題ないはずだが、何かの病気だろうか。


かかりつけの医師のもとへあまねを連れて行く。


本人は別に何ともない、体調も普通、絵ばかり描いているから運動不足、と不調を否定する。

付き添いの母親の心配そうな顔もあり、では検査だけしてみましょうと医者が促す。


翌日、病院から母親だけ来て下さいと連絡が入った。

診察室にはいると複雑な表情の医者が目の前の席に座るよう手を向ける。


◇ ◇ ◇


「お母さん、落ち着いて聞いてください。……あまねさんは妊娠しています。詳しい検査をしないといけませんが、妊娠15週を過ぎている可能性があります」


「……え、どうして……何で」


「総合病院を紹介します。妊娠もそうですがカウンセリング対応も必要なのです」

「あの、あの……」

「お母さん、ショックでしょうけれど多くの大人があまねさんを守りますので落ち着いて下さい。まずは旦那様と相談して事態を共有して貰った上で、今後の事を話し合いましょう」


それと……と、一瞬言葉を選ぶ医者。


「妊娠の経緯について……何か心当たりはありますか」

「……いえ、まったく。学校と家の往復の生活ですし」

「わかりました。詳細な検査と並行してカウンセリングも行って貰うように紹介しておきます」

「……はい」

「あまねさん本人には妊娠のことは一旦伏せておきましょう。本人が気づいている可能性もありますが。……また、一足飛びに相手は誰だなどと問い詰めないように」


紹介状を受け取り病院を出る母親の顔色は真っ青だった。


会社にいる父親に連絡。緊急事態なので今日は早く帰宅して欲しいと伝えた。


家に戻りたくない。あまねの顔を見るのが怖い。

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