↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/34

ノリがいいのはわかってた

 ノリがいいのはわかってた、はずだった。

 だけど、なんでこんなことに!?


「よかったー、オズが服をちょっと直しただけで着られて」


 ど う し て こ う な っ た ! ?


 それは夏休み直前、一学期の終業式の日のことだった。




 この学院には年に3回、祭りとつくイベントがある。


 一つは夏休み直前、終業式の日に行う学院フェスタ。学生のきずなを深めると言う名目で、クラスごとにちょっとした出店をする。もとは一部のクラスが学院際の模擬店の予行練習をしたことで始まったんだとか。


 一つは学院祭。二学期が始まったら一月後にある、学院で一番大きなイベント。外国からもたくさん客が来ると言う。うちも両親は無理だけど兄弟が何人か来るみたいだね。


 一つは雪まつり。雪が少ないが寒さは半端ないからと、雪を魔法で出して遊ぶらしい。僕の国は雪が多かったから気持ちが今ひとつわからないのだけど、雪に憧れがあるのかな。


 それはまあそれとして。

 終業式の今日はいよいよ学院フェスタだ。

 準備に時間をかけていたと聞いてるけど、僕は最近まで体調が悪かったので、すべてクラスのみんなに任せていた。何をやるのかは当日のお楽しみ、と言われ、まあ模擬店だし大変なことはないだろうと思ってた。


 うん、思ってたんだよ。

 今の今まで……。


 今、僕の目の前にはメイド風の服を着たマネキンがある。

 まさかこれを着ろと言われる日が来るとは思わなかった。

 アン、こないだの君の気持ちがわかったよ。今日の帰りは君の勇気を称える。


「だってオズ、何をやってもいいって言ってたじゃないか」


 そういうのは隣に立つゲイブ。すごくいいこと言ってると思ってるようだけど、そのメイド服、似合ってないよ……。


「うわー、ゲイブ、雄ッパイすごいわ! 谷間できてる!」


 喜んでいるのは従者の制服に似た服のシンシア。小柄で可愛らしい彼女には制服がだいぶ大きい。兄から借りたと聞いて初めて兄弟が城勤めの侍従だと知った。行儀見習いをしているとか。そのうち会えるかもしれないな。


 それにしても、雄ッパイってなにさ……?

 たしかに、すごい胸筋が両脇からぎゅうっと抑えられて、胸に開いてるハートの窓から谷間をのぞかせてるけども!

 もう、こんなメイドさんいないよ……。胸に穴とか……。ある程度の年の女性や既婚者に着せたら嫌がらせじゃないの?

 あ、でもこの間アンが来てたメイドさんっぽい服も胸に穴が開いてたな。僕が知らないだけ?


 とりあえず分かったことは、僕たちのクラスの出し物は『メイド・従者喫茶』ってことと、服は男女逆ってこと。


「なんで!?」


 の問いに、全員がこう答えた。


「面白いから!」


 聞けば、こんな時しかできない服をと言う話が出て、ノリで決まったらしい。

 危うく男子のみ水着喫茶になるとこだったとも聞き、メイドさんでよかったと思ってしまった。いや、だめだろう、メイドさんでも!


 基本的に、魔法剣士科の男子はごつい。俺以外はみんないいガタイをしている。

 特に学級副代表(代表は僕。王族だかららしい)のゲイブは騎士団長の父がいる家系からか、俺より頭一つ大きくて体の幅は倍くらいだ。パン屋のジェフも子どものころから家業を手伝ったからか特に背中周りがすごい。


 そんな奴らが、メイド服と呼ばれるメイドが着ない服を着ているんだよ。

 スカート丈が膝上20センチで、膝より上のハイソックスをガーターベルトで引っ張って穿いてるんだ。

 胸にハート型の穴が開いてる、半袖のワンピースを着て、フリルたっぷりの白いエプロンとカチューシャをつけててね……。


 もう、どんなホラーより怖いよ!


 ちなみに、女の子たちは「着たいときは着られるし」と言ってメイド服は辞退。代わりに従者の服を借りてきたそうだ。従者たちからはものすごく喜ばれたと聞き、この国になじめるかちょっとだけ不安になったのは秘密。

 女の子たちもそこそこ鍛えているのでしっかりとした感じの子が多く、従者姿がよく似合う。特に女子で一番背が高いスズは男装の麗人って感じだった。


「じゃ、オズ、早く着替えてね」


 女の子たちがにっこりと笑って詰め寄ってきた。

 ものすごく怖かった。




 というわけで、今に至る。


 渡された服はこの間アンが着てたのに似ている。ポケットのところに大きなハートマークのついたスカートで、中にはフワフワのレーススカートが3枚重なってる。最初に会ったときのアンは10枚重ねてたのを思い出してにやけたけど、嬉しいわけじゃないよ。


 一人でもさもさと服を着たのち、鏡を見て、ため息を吐く。

 ウエストと胸元がガバガバ。このクラスだと僕ってガリガリなんだなと再認識した気がする。しょぼん。

 なんというか、全体的にすごくみっともない。アンが着たら似合いそうだけど、僕じゃ貧相すぎて泣ける。せめて雄ッパイほしかったな、ちぇっ。


 もう一度ため息を吐いた後、教室に戻ったら、クラスの全員が手を止めて僕を見つめた。

 ううう、視線が痛い。似合ってないのわかってるよう……。


 とか思ってたら。


「うわあ、かっわいいい!」

「こんなに化けるなんて!」

「まずい、惚れちまう!!」


 え、なに?

 後ろに誰かいるの?


 振り返った瞬間、全員に囲まれた。


「もう、男の娘でいくしかない!」

「今日は一日このままな!」

「うわあ、萌えるうう!!」


 よくわからないが好評だった!

 この国で生きていくのって難しいのかな、とまたまた不安になった僕だった。


 とりあえずアンには見られたくないけど、無理なんだろうなあぁ……。






読んでいただいてありがとうございます。


学園祭の時はメイドさんの服はクラシカルなロングにする予定。寒いからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。