ただただなかよくしている
ただただなかよくしている、国からの手紙にそう返事をしたためて送ったら呆れられた。
いや、だって、実際そうだし。
そもそも仲良くなくなって婚約解消したいとか言うより全然いいと思うんだけど、どうなんだろう?
そんな話を同じクラスのジェフの実家のパン屋で話をしたら、店番をしていた親父さんにすごく笑われた。
(ちなみに今日はアンは王妃様から女性限定のマナー講座があるとかで別行動)
シェフリーのパン屋は学院のすぐ近くの商店街にある。買ったものを食べていける場所があって、飲み物も安いので学生がよく利用するとのこと。女の子が好きそうなこじゃれたカフェみたいに雰囲気はないけど、なんだか落ち着く。学院に入って2週間しか経ってないのに常連になりそうだ。
「そりゃ、親御さんにしてみたら複雑だろう。自分の息子が相手の両親ばっかり褒めたら、大事に育ててきた自分たちっていったいみたいな気持ちになるもんだよ」
「そんなもんですかねえ」
ちみちみと紅茶を啜る。砂糖もミルクも入れない、安くて薄い紅茶は市井の味。王宮のものとはだいぶ違うけど、これはこれでいい。むしろ好きかも。
ジェフの親父さんは僕が王子なのを知っているけど、砕けて話してくれるのでそれもまた嬉しい。
最初、名乗った時はすごく驚かれた上に「うちの息子が何か粗相を!?」と土下座されそうになってびっくりした。どこの国でも王家ってあんまりいい目で見られてないんだなあ。雲の上の人とか言われたけど、あんな空気の薄いところには住みたくない。
「そもそもオズワルド様はうちの国に婿入りしたんだろ? 多少悪口を書いてやると喜ばれるかもしれないぞ」
「そうなんですか?」
「まあ限度はあるがな。親としては向こうもいいけどやっぱりうちが一番って言われたいもんなんだよ」
なるほどなー、としみじみしていたら、横にいたジェフリーが呆れた顔で僕たちを見た。
「親父、あんまりオズに変なこと吹き込むなよな。こいつ、卒業したら公爵様なんだから」
「おお、出世だなあ」
「出世というか、そういう条件がないとアンと結婚できなくて。僕はアンがいればどこでもいいんですけど、相手は王女ですからねえ」
「また始まった」
アンのことを考えて緩んだ顔を指摘される。いいじゃないか、アンのことなんだから。
「僕も王子だから色々大変だったみたいだけど、結局上のほうで決めてくれました」
「親に決められた結婚か」
「結婚は僕が決めましたからね。親は僕のためにいろいろ考えてくれたので感謝してます。国を出るときも泣かれちゃいましたよ。こっちでもアンを辺境に出すことでまだもめてるらしいです。いろいろ難しいですね」
ため息を吐く。
「なんか、いろいろ大変なんだな」
親父さんは困った顔で頭を掻いた。
「まあ、うちのジェフもパン屋を継いでくれるとばっかり思っていたら、魔法剣士になって騎士団に入るとか言い出したしなあ。魔法の素質が出たから半分諦めたけど、学院に入っちまったらなんだか寂しいよ」
「親父……」
「ま、弟が継ぐって言ってくれたけどな。それもどうなるかわからん」
そう言って、親父さんは僕とジェフの頭をぽんぽんと叩いた。
「でもまあ、親ってのは子どもが生き生きと自分のやりたいことをやってる姿を見るのが最上の幸せなんだ。そのために苦労するのは苦じゃない。むしろ楽しい。だからお前さんたちは自分の好きなように、他人に迷惑かけないで生きればいいさ。まあ、迷惑も度が過ぎなければかけて問題ないぞ」
パンが焼けた遠くに引っ込む親父さんを見送り、僕はジェフと笑った。
王宮だろうが市井だろうが、子どもたちがよい人生を送れるようにと親が頑張ってくれるのは変わらないんだなと思う。
僕がアンと結婚できるのはこういうできた大人のおかげなんだなと実感した。
読んでいただいてありがとうございます。
前々回のオズの口調がいきなり荒っぽくなっていて作風違ったと反省して修正しました。話には関係ないのですがすみません。
なかなか体調が戻らず、毎日更新できませんが、ぼちぼち行きますのでよろしくお願いします。




