新入生
「新入生代表、アンジェラ=エル=アーネット」
こう締めくくられた挨拶のあと、大きな拍手が沸いた。
もちろん僕も手を叩く。多分どの学生より一生懸命叩いてると思う。
「あれが婚約者殿か?」
隣の男子学生が顔を近づけて囁く。
先ほど親しくなったばかりのゲイブリアル=ハービーは第三騎士団の騎士団長を父に持つ子爵令息だ。その隣で口笛を吹いたのがジェフリー=レイノルズ。こっちは町のパン屋の息子だと言う。なかなかバラエティに富んだラインナップだ。
アンが言った通り、この学院には身分差とか関係なく実力主義なのだろう。たしか席順で今回の試験結果がわかるって話だ。僕はクラス席左側の一番前だから王族特権(もしくは接待)だから関係ないとして、隣のゲイブは成績優秀なんだろう。これから学ぶいろいろなことが楽しみで仕方ない。
同じクラスには女性騎士を目指す女の子もけっこういる。この国では女の子もたくさん騎士になってるって聞いて最初は驚いた。
僕の国では女性騎士は女性王族の警護をするわずかな者だけだ。女性が騎士になると体力的なとかいろいろ言ってたけど、単に女性用に設備を整えるだけの環境がない。未だに男性を女性が支えるのが当たり前みたいな風潮があるのも一因だと思う。
だから僕がこの国に婿入りすると言う話は、後で聞いたんだけど、相当もめたらしい。父上は息子を生贄に出したようなものだと苦い顔をしていたというし、母上は泣いたと言う。あの母上が会議とはいえ公の場で涙ぐんだって聞いた時はビックリしたよ。
とかいうとこの国の女の子は「男尊女卑!」って怒るけど、決して女性の立場が低いわけじゃない。むしろ父上は母上に頭が上がってない気がする。女性にしかできない仕事もたくさんあるしね。
この国と僕の国は女性の仕事に始まって違うところがたくさんある。
でも、相容れないわけじゃない。
実際に隣にいるゲイブは自己紹介してからアンのことで冷やかしてくるし、後ろにいる女の子たちも国のことを聞かれたりしてる。ジェフリーは休みになったらパンをご馳走してくれると店に招待してくれてるから町に行く楽しみもできた。
もちろん、魔法剣士科の授業以外にも、結婚後に領地を治めるための勉強もあるので自由時間は少ないと思うけど、その勉強はアンと机を並べてできる。それだけですごく頑張れそうな気がする。
ボルト王国を離れて新しい生活に不安がないわけじゃないけど、衣食住は不自由なくあるという恵まれた環境なのできっと大丈夫、だと思う。
まあそれはそれとして。
壇上で堂々と新入生挨拶を読み上げた僕の婚約者はとても眩しい。ほんと、後ろから光がさしてるみたいだ。女神かよ。あああ、お辞儀をそんなに深くしちゃだめだ。スカートの中が見えたらどうする!
そんな女神は段の上から目で僕を探し出すと目を合わせてうれしそうに笑った。
僕もにこりと返したけれど、正直気が気じゃない。
だって、あの笑顔、ここにいる男子全員のハートをわしづかみにしたに違いないんだから。
読んでいただいてありがとうございます。
ミニスカートでステージに上がって、国旗にお辞儀したらスカートの中身心配になりますよね……。
って言う話です。




