序ー4話
両親を亡くし親族の家で育てられたヒデは、内向的な性格となってしまい友達も作れずに中学を終えた。そして突如遺産が入ることになった彼は高校合格を機に思い切って自立することになったのだ。それから彼の人生は上向きになり…不思議な漆黒の猫との出会いが彼の人生を変えて行く。
そして高校の同じクラスで知り合った漆黒の猫の美人主人と予期せぬ大冒険が始まった。その異世界での試練を経てヒデは知らず知らずに現実世界でも成長していくインキャの冒険譚である。
この物語は『序・破・急』の3章からなり、その続きは『ドロイドサイリウムー本編』へと繋がっていく。
ヒデは帰り道で、『なんだかんだ言って、みんな、あのハーフのエリカとかいう子に夢中なんじゃないか!?
あいつらアニメがそんな好きなわけじゃないみたいだし僕の聖域を汚すなんて許せん! まあ、でも清水は好きなのかな?! しかし、なんか違和感あるな。心がわざつくというか・・・とりあえず明日行ってみて居心地が悪かったら辞めるとするか・・・』とインキャぽくネガティブになりつつあった。
そして、すでに17時を回っていたため帰りがけに『ほか弁』を買って自分のお城に帰ったのだった。
「ただいま!」
ヒデは誰もいない部屋ではあるが、今までの癖で、それと1人だけでも寂しさを感じないようにという呪いで、
「行って来ます!」と「ただいま」だけは誰もいない部屋に向かって言うようにしていたのだった。
まずは机に座って、お茶を急須で入れての晩御飯タイムだ。
「今日は海苔弁に食後のデザートにはチョコパイ! いいね〜1人住まい! で、インスタントコーヒーでフィニッシュ!」
そして、食後はお宝のタブレットでカラゾンプライムでのアニメタイムなのだ。
「くくく、これって幸せ!! 本当はこんなアニメを一緒に鑑賞できる彼女がいればいいのだが・・・
いや、これはやっぱり1人で観ていた方が楽しいのかも?? でも、ゲームだったら2人でもいいか・・・」
などど、思い浮かべながら観ていたらいつの間にかに時間が経ってしまっていた。
「そうだ、寝るまでまだ少し時間があるから、満天堂のスケッチで異世界冒険RPGでもやろうかな。」
こうして一人暮らしを始めたヒデは、今までの居候時代と違い誰にも気兼ねせず好きな時間に好きなことができる生活にやっと人生の楽しさを感じ始めていた。
そして、ユニットバスの小さなバスタブの中で今日1日をボーッと振り返ってみたのだった。
「しかし、部長の石井先輩ってどんな人なんだろう??」
彼は『異世界モノ』や『冒険モノ』が好きであった。特にまるでヨーロッパ中世にあるような城壁に囲まれた可愛い街並み設定の冒険者モノには目がないのだ。
常々『あんな世界に住んでみたいな〜 絶対エルフの彼女が欲しいな〜 』とか思っているのである。
そして、いざとなったら戦えるようにと、(まあ、そんなことはあり得ないのだが)西洋剣術を動画を見ながら密かにイメトレもしているのだ。
朝が来て2日目の登校だ。
教室に入っていくと、すでに隣の野崎エリカは座っていた。
ヒデは、小さな声で「おはよう!」と言いながら自分の席に座った。
「おはよう! ねえ、石塚君、あなた漫研に入るわよね?」
『やば!女子に話しかけてられてしまった!緊張しちゃうな! でも勇気を振り絞って』
「うん、そのつもりだよ、君は?」
「私もそうよ。」彼女は昨日さっさと帰ってしまったヒデが心変わりでもしたのかと思っていたようである。
「よかった〜 他の子達はあまりアニメ好きじゃなさそうだから・・・考えるところあったのかなって。」
彼女の観察は鋭いとは思ったがとりあえずインキャ特有の無言でいた。
そして、ついにその日の放課後、ヒデを含めたクラス5人のメンバーは漫研に体験入部をしに部室を訪れたのであった。
するとそこには初日にすでに入部を決めたという2人の女子もいた。
「あーら、あなた達も入るの? なんか、オタク度数低いわね!!」とのっぽの女性が怪訝そうな顔をしている。
もう1人のザアマスメガネ(昔の教育ママのような)をかけた片割れが、
「まあ、でも先輩方は2人しかいないから、部員が多い方が部費が出るって言ってたからいいんじゃないの?」
「これで9人になるんでしょ? あと1人で10人になるわね!そうするとフルで部費が出るらしいわよ。」
「まあね、その部費で合宿なんかに行っちゃったりして!」と言いながらクスクスと笑う姿が少し不気味であった。
すると「なるほどね! 夏合宿なんかいいよなー じゃあと1人集めようぜ!!」と須藤が言い出したのだった。
「それはそれで大歓迎だよ!とにかく、みんな!取り敢えず1ヶ月よろしくな!」と浜田先輩がまとめようとすると…
須藤が、「ところで浜田先輩、田中部長ってどんな人なんですか??」
「部長? うーん、コスプレマニアでお忍びでよくコミケとかにも行ってるよ。」
「へえー 女の子のコスプレを見にいくんですか?」
「いや、自分でやるんだよ。」
「えっ、部長って女性なんですか??」
「そうだよ。」
「えー!!!」とみんなが驚いている。
「ほら!」と言って浜田は部長のコスプレ写真を自慢げに見せた。
「えーっ 部長ってチョー可愛いじゃないですか!!」とすかさず清水が反応した。
「えー ほんとだ!カワイイー!!」エリカもかぶりついて見ているのだ。
「私、アニメみたいな可愛い女の子って大好きなんですよー!!」
そして、ヒデはそのコスプレ写真にやられて無言になっていた。
すると、須藤が「俺、部長に挨拶したいんですが、いついらっしゃるんですか?」と下心見え見えで聞いてきた。
「うーん、わからないね・・・ まあ、君たちが真面目に毎日ここに来ていればいずれ会えると思うよ。」
「わかりました!! がんばります!!」男達の表情はこの時ばかりは真剣であった。
「じゃー、みんな、浜田先輩も! もう1人入った想定で夏休みの温泉合宿の候補地を決めましょうよ!」とノッポの斉藤が言い出した。
「うん、うん、いいねー やっぱり温泉じゃないかな〜!」と片割れのメガネの工藤が相槌を打った。
「というか、温泉に決まってるの??」とエリカが言うと、
「えー、エリカちゃんはどこに行きたいのかな??」と須藤が聞いてきた。
「だって、私たち若いんだし、それに夏だから海なんかいいんじゃないのかな!?」
「いいねー!!」と言いながら清水は水着姿のエリカをイメージしているようだ。
すると、ノッポの斉藤は「だったら、チーム分けすればいいんじゃないか?」と言い出しちょっと険悪なムードになってきてしまった。
意見が割れた一年生が救いの手を求めて浜田先輩を見ると・・・
腕組みしながら居眠りしているではないか!?
「まじ・・・」
そして、須藤が、「それじゃ、みんな、これ、まだ時間がたっぷりあるから持ち帰って考えることにしようぜ!
それにまずはあと1人集めないとな!」と提案し、その場は取り敢えず収まったのであった。




