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異世界勇者は〝調律者〟に勝てない  作者: tanahiro2010
第二章

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Prologue





「取り敢えず、最初は我らの国を滅ぼすのが良いと思います」


 目の前に立つ、元暗殺者的なサムシングだった現僕の手下君が言う。


 ――いや、一応君の故郷だよね……?


 若干の違和感というか……こう、なんか覚悟がガンギマリ過ぎてるというか……。

 さっきまでは愛国心が爆発してそうなこと言ってたのに、僕の仲間になった瞬間国を捨てるようなことを言ってしまうその代わりざまに引きつつも、僕は言った。




「――それじゃあ最初は、君たちの国を滅ぼそうか」


 いやほら、引いたのとそれに納得するかは別だから。それに引いたのってこの祖国を簡単に捨てる手のひらドリルにびっくりしただけだから。

 ぶっちゃけ、この世界に魔王以外の勇者の敵はいらないからね。

 いや、僕的にはいたほうがなんか勇者くんたちに色々ドラマとか出来そうだし面白いと思うんだけど、どうやら僕の上司的なサムシングたる神々には気に入らないらしく、さっきから「消せ消せ~」みたいな感情ガヤが永遠と送られてくる。


 だから、まぁ。

 〝調律者〟としてのデビューは無事成功したし。……多分成功したし。


 ――次の舞台は、敵国さんにしようと思う。


 僕ら……ではなく勇者たちに悪意を向けたこと、存分に後悔してもらおうじゃないか。



 ……。


 …………。


 ………………。



 ――それはともかく早くガヤ送るのやめてくれないかな。

 普通にうるさいんだけど。




 ◆




 ということでやってきました。ミニステルアリスくんの故郷、アレスト帝国だ。


 とりあえず最初はこの国に関して調べつつも、どこから壊すのが面白いかいろいろ探してみようかな、と思っている。


 ぶっちゃけ、多分もう僕より強いのなんていないと思うんだよね。

 ほら、魔王さんだって多分僕よりは下だし。

 ていうか、多分僕が潜ったダンジョンが頭おかしかったんだと思う。


 でもなぁ……あれ、神様曰く、チュートリアルダンジョンだったらしいよ。

 おかしいでしょ。チュートリアルにしては強すぎだと思うんだ、僕。

 最初の最初から死の危機を感じてたからね? いやまぁ、それくらいしないとレベルは上がらないし、しょうがないんだろうけどさぁ。


 なんかもっとこう、僕の因子特性を使ってレベルアップしやすくするとか、神々の権能を使って僕だけレベルアップしやすくするとか、そんなのしてくれたらよかったのに。


 まあ、そんなことがあったら僕は実戦で動けてなかっただろうし、今思い返せば普通に戦うのも楽しかったし、あれはあれでよかったんだけどね。

 というたぶん、今はこんなことを思ってるけどあの時は戦うの楽しかったし、もし本当にレベルアップが簡単になってたら僕怒ってたと思う。知らんけど。



 ――とまぁ、神々が聞いたら「何言ってんだこいつ」ってなりそうなことを考えつつも、近くにあった焼き鳥屋さんから一本焼き鳥を拝借する。



「あの……代金は払わないのです?」


「うん? 何のこと?」


「いや、今普通に焼き鳥屋さんから一本くすねてた気が……」


「あぁ、それね。ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃ犯罪じゃない。ほら、僕の腕の動きをみえた人、多分君たち以外にいないでしょ?」


 というか、割と真面目なんだこの手下君たち。

 ミニステルアリス君以外は名前覚えてないけど、これだと僕の性格には合わなさそうだなぁ。


 ほら、別にばれなかったらいいんだよ。ばれたってまぁ、つぶせばいいんだ。

 僕が〝調律者〟だとか、〝現人神〟だから、とか。そんなのは関係なくて。


 ――この国だって、どうせすぐ僕に滅ぼされるんだから。


「どうせあと少しでなくなる国なんだし、何をしてもいいんだよ」


「それは……」


 若干引いてる様子を見つつも、拝借《窃盗》した焼き鳥を口に入れる。


「おっ、おいしい。これは僕好みの味だ」


 あの焼き鳥店の店主だけ、殺すのやめとこうかな?

 ……まあ、無理か。顔も覚えてないし、多分しらん間に死んでるでしょ。


 というか……。


 焼き鳥はおいしいけど、《《それ以外が屑なこの国の人間を生かすなんて》》、なんか生理的に嫌だしね。





 ――あぁ、もったいない。


 探知能力によって察知した――〝それ〟。


 ちょっとだけ僕が楽しみにしていた要素だった、っていうのに。


 ――いらいらするなぁ、これは。


 もしまだあったら、使って遊べるかと思ってたのに。


 ――――もう、これは殺すしか……ないか。


 僕は、それについて気配を追いつつも――。





 ――たぶん、《《この世界で初めて怒りを燃やすのだった》》。





 ◆ ◆ ◆




「――ふむ。つまり……結城よ、そなたは刺客に敗れそうになったところを――例の、転移直後に消えた〝清水 彼方〟に助けられた……と。そういうことじゃな?」


 ――リバース王国王城。その、医務室にて。


 結城は今、王からの質問……否。尋問を受けていた。


「……はい。俺は……二人を、守れなかった。俺の力じゃ、刺客を倒すことができなかった。あそこであいつが来てくれたからなんとかなったけど……俺だけじゃ、絶対に負けていた……負けて、いました」


 負けるその直前を思い出してか、結城はその顔をゆがめ、こぶしを握る。


 ――初めてだった。あそこまで、れっきとした〝負け〟を感じたのは。


 この世界にきて、初めての実戦。

 地球ならば、しょうがない、と言われるところなのだろう。


 しかし、ここは異世界。

 地球のようにやさしくなく、人がいとも簡単に死ぬ――異世界だ。


 今回は彼方かなたが――絶好のデビュー機会という――餌につられて来たゆえに助かったものの、もしきていなかったら結城は簡単に、禁術を使用したミニステルアリスに殺されていただろう。


「……もっと、力がいる」


 守りたい、仲間を。


 いきなりあらわれ、刺客をいとも簡単に蹴散らしていった清水のように。


 力が欲しい……仲間を守れる、そんな力が。



 ――結城は思考する。

 どうして、彼方はあそこまで強くなれたのか。


 結城が見た限りでは、彼方は本気を出していなかった。

 ……本気を出さずして、簡単に禁術を使った刺客――ミニステルアリス――を圧倒していた。


 ――……ってことは、清水はすでに俺よりもレベルが高い……?


 だとしたら……どうやって。

 転移して訓練も受けていないのに、どうやってレベルを上げたんだ?


 ――まさか……あいつはすでに、《《実戦を経験していた?》》


 結城だって、ダンジョンや魔物という概念は知っている。


 それがこの世界に存在するかは考えたことがなかったものの、そういえばこの世界に召喚されたのは〝魔王〟を倒すためだったのだ。


 ゲームで倒せば経験値をもらえる魔物や、潜れば効率的にレベルアップできるダンジョンがこの世界にあったところで、何ら不思議はない。



「……王様」


「なんじゃ?」


「この世界に……ダンジョンってありますか?」


 ――あいつがもしダンジョンでレベルアップできたなら……俺にもできないことはないはずだ。


 結城は考える。

 清水だって、〝勇者因子〟を持っているはずだ。

 なら、同じ〝勇者因子〟を持っている俺だって、同じ方法を使えばレベルアップ――強くなることが可能なのではないか、と。


「ダンジョン、か。……あぁ、ある」


「なら……行かせてください。俺は、もっと強くなる」


「……わかった。ならば、アドルフにも言っておこう」


 そうして、結城はダンジョンにもぐることを決意するのであった。



 ――ちなみに、彼方が〝勇者因子〟でなく〝現人神因子〟を持っていたが故にレベル上限が取り払われており、あそこまで強くなれた、ということを知るのは、もっと後のことである。


 〝勇者〟はあくまで神のおもちゃ。

 神のお気に入りのおもちゃたる〝調停者〟――〝清水 彼方〟に、勝てるわけがないのだ。




あとがき――――

というわけで、プロローグ。

昨日更新しよう書いてたんだけど、ちょっと間に合わなかったので。

ごめんね、許しておくれ。学校と仕事で忙しいんだ。

あ、そういえば。今章からはおそらく不定期更新になるかなと。

できれば二日に一回くらいは更新したいので設定は変更しました。

それでは第二章も、お楽しみいただければ幸いです。


コメントとか星評価、いいねやフォローよろしくお願いします!

特に星評価はカクヨムとっぷのおすすめに出やすくなるらしいので、やってくれたら嬉しいです!

コメントは単純に僕が喜びます。テンション上げながら返信するんで待っててね。

ではまた、次章で会いましょう。

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