15.手の妬ける奴?!
幸せな新生活に浸っている時間は、私たちにはないみたい。
普通なら、結婚式後には、新婚旅行がつきものなのに・・・
早朝5時。大きな目覚まし時計の音がした。
「・・・ん」
ベッドの中で背伸び・・・
私の横では、修二さんが眠っていた。
結婚する前から、一緒にこうやって眠っていた。
・・・でも、なんか違う。
気持ちの問題なんだろうけど、誰にも見せないこの寝顔がたまらない。
「…もう、起きたのか?」
見つめていると、修二さんが目を覚ました。
「もう起きる時間ですよ、今日は就任式があるでしょう?」
そう言って微笑むと、
「そうだったな・・・新婚に浸る時間もないな」
そう言って私を抱きしめた。
「修二さんは、青木財閥・青木コンチェルンの社長ですよ?しっかりしてください?」
「たまには、2人きりで、デートくらいしたいだろ?」
「毎日がデートみたいだから、そんなこと思いません。いつでも修二さんの傍にいますから、それだけで幸せです」
私の言葉に、修二さんから笑みがこぼれた。
「そう言ってもらえると、ホッとするよ・・・」
…そっとキスをした。
もう、何度このキスをしたか、数えきれない。
修二さんの言葉も、行動も、私を愛していると、言ってくれてるみたいだから、毎日が幸せいっぱい。そう思っている事、修二さんには伝わっていますか?
・・・修二さんは、一足先に仕事に出かける。私は修二さんを玄関まで見送る。
「行ってらっしゃい、また後で」
「行ってくるよ、気をつけてこいよ?」
行ってらっしゃいのキス。
…それをなかなかやめない修二さん。
「修二さ・・」
遅れちゃいますよ。
「離れたくない」
「子供みたいな事、言わないでください」
言葉とは裏腹に、私の頬は真っ赤、それを見た修二さんはクスッと笑った。
「…後でな」
…やっと出かけてくれた。
私も行く準備をしよう。
…一度、会社に用事をしに行った私は、他の皆より少し遅れて、雅也が社長になる会社、青木CPに向かった。
中に入ると、社員が慌ただしい。そんな中、修二さんを見つけた。
社長まで顔色変えて、何があったのかしら?
「社長、どうしたんですか?」
私の気づいて、修二さんが駆け寄ってきた。
「雅也を見なかったか?」
・・・え?
「会社の中にいるんじゃないんですか?」
「さっきまではいたんだが、式が始まるっていうのに、見当たらない・・・
ったく、何を考えてるんだアイツは?!」
…また事件です。
「とにかく探しましょう。上の階は探しましたか?」
「大勢で探しているんだが…もう、見ているはず」
「私、見落としがないか、上に行ってみますね?」
「悪いな、頼む」
私の頭をくしゃっと撫でて、走って行ってしまった。
雅也はどこに行ってしまったのか。私も動き出した。
青木CPに入ったのはこれが初めて。
手当たり次第にドアを開けていく。最上階の社長室にも、姿はなかった。
・・・最後に行けるのは屋上だけ。
・…そっとドアを開けた。
やっぱり、どこにもいない。
「雅也のバカ!どこに行ったのよ?!」
誰もいない事を良い事に、叫んだ私。
もう始まるっていうのに…私はドアの方に向かって歩き出した。
「誰がバカだって?」
・・この声は?!
変な所からひょこっと顔を出した。
「雅也さん!何してるんですか?!もう始まりますよ、みんな必死に探してます」
そう言いながら、雅也に近づいた。
また座り込んでいる雅也を見ると、
座ったまま、手を握りしめている。・・・その手が少し、震えていた。
私はそっと雅也の手を握りしめる。
「カッコ悪ィよな、緊張して、手なんか震わせて・・・」
雅也の言葉に首を振った。
「大きな会社の社長です。責任も重大・・・でも雅也さんなら大丈夫。
私を教会から連れ出せちゃうんですから」
そんな私の言葉に、雅也はクスッと笑った。
「言ってくれるね?」
雅也が私を見つめた。
「雅也さん?」
・・・・・?!!!
「いただき」
「な、何してるんですか?!こんな時に」
・・・雅也が私の唇を奪った。
「これがアンタに触れる最後だ」
「・・・」
「兄貴みたいにカッコよくはないかもしれないけど、いいとこ見せるからな」
そう言って雅也は立ち上がった。
「雅也さん」
「ちゃんと見届けてくれよ、オレの雄姿?」
「…はい、ちゃんと、見届けます」
「結婚おめでとう」
その言葉を残して、雅也は屋上を出ていった。
…私は少し遅れて、会場入りした。
・・・修二さんの横に腰かける。
「雅也は?」
「いましたよ、そろそろ出てくるんじゃありませんか?」
・・・ステージでの雅也は、さっきとは別人のようだった。
しっかり社長だ。…そう思った。
就任式、パーテイー、すべてが終わった。
「すみれ、帰るぞ?」
修二さんが私の肩を抱き寄せた。
「私、とっても幸せです」
「どうした、急に?」
私は修二さんを見上げて微笑んだ。
「みんながちゃんと、自分の道を歩き出したから」
「雅也を叩き直したのは、すみれだな?」
「フフ、そうかもしれませんね」
「オレも幸せだ」
修二さんが足を止めて、私を見つめた。
「世界一の女を手に入れたから」
「大げさですね?」
「俺には、世界のどこを探しても、すみれ以外いないから、世界一だよ」
「ありがとうございます」
「今も、これから先もずっと、オレの傍を離れるなよ?」
「・・・はい」
幸せな時間も、苦しい時間も、共に、歩んでいきましょうね。
私だけの貴方と・・・
次が最終話です。お楽しみに(*^_^*)




