分からないことは調べよう
あれから神剣について考えてみたが…どうもキナ臭い。
だってそうだろ?
筆記では負け越しているが実技では俺は負けたことがない
しかも俺は身分の高い貴族だ
そんな俺に神剣授与の話が来ないどころかどこの誰が神剣を承るかの情報も入ってこなかった
普通は噂ぐらいあってしかるべしだと思うんだが…
念入りに調べてみる必要がありそうだ
そしてもうひとつ
フィーが言っていたように俺の攻撃がベイルにあれだけ効果的なのも不思議だ
「通ル震天ノ響キ」は初級の無属性魔術だ、威力もさほど高くない
直接くらわせてやったから効くのは当然として神剣の加護?を受けている奴にあんなにも効くとか…フィーに言われるまで気づかなかったが確かにおかしい
全体的な身体能力の向上だけならあれだけ効いたのは分かるが打撃・魔力防御も向上していたとなると人体の急所への耐久力も向上しているはずだ。魔術も、あの場面で起き上がってこられたら困るので強めに撃ったが、死なれても困るので全力ではない。つまり、あの時ベイルは意識を失わずに俺に向かってきていてもなんの不思議もない。
何か原因があるはずだ
そんなことを下校中に考えていたらグレイに話しかけられた
「マルス様」
「なんだ」
そうだこいつらにも考えてもらおう一人じゃ仮説も立てられん
「神剣のことについて、情報を集めてもよろしいでしょうか?」
おっ、気が利くじゃないか
「あぁ、頼むぞ、俺も独自で調べてみる。それとなぜ俺の攻撃がベイルの奴に効いたのか予測は立てれるか?」
「了解しました、しかしマルス様の攻撃が効いた理由ですか?」
「神剣が言っていましたね、本来はあの程度では効かないと」
イアンもそのことに関して考えていたようだ
「申し訳ありません、私には…」
「…」
「イアン?」
グレイは仮説も立てれないようだが、イアンは何か思うところがあるようだ。
「イアン、何でも良い、思い浮かんだのなら言え」
「では、恐れながら…私はマルス様の魔術の顕在属性とベイルの潜在属性が対極的な関係にあるからではないかと愚考しました」
「ふむ」
この世界では魔力の属性は顕在属性と潜在属性に分かれている。魔術は誰でも全属性を使うことはできるが顕在属性は魔術を使う際、威力を出す為に必要な魔力が少なくて済む適正属性のことである。これは「鋒鋩の指針」とよく分からん名前のついた水晶型の魔道具に魔力を流せば簡単にわかる。潜在属性は隠されたもう一つの自身の属性で主に防御に関するものである。これは「隠匿の開示」という分かりやすい名前の同じ水晶型の魔道具に血を垂らせば知ることができる。そして弱点属性は命に関わるため他人に言うことはありえないことであり知っているのは自分だけで家族にすら言わないのが普通だ。
顕在属性は光・闇・火・風・地・水・無
潜在属性は影・輝・冷・凪・天・燈・全
と分かれている。下の潜在属性が上の顕在属性で攻撃されると効果が顕著に現れることとなる。しかし無と全は別である。無属性は効果的な属性はないが苦手属性もなく、効果は全ての属性に一定となる。全属性も似たようなもので苦手はないが効果を極端に抑制できる属性はない、という風になっている。
「イアン、俺は無属性魔術をベイルに放ったのだ」
「あ」
イアンは気づいたようだ、俺の放った属性魔術ではそれほどの効果的ではない事に。
「では、このような仮説は?例えば…」
グレイも何かを思いついたように仮説を発言するが、どうもしっくりこないものであった。
そうこうしているうちに寮につき、それぞれの部屋に向かうことになった
「「お役に立てずに申し訳ありません」」
「いや、責めてはいない、俺も分からんからな」
「「では、私たちはこれで失礼します」」
「あぁ」
さて、実のならない考察は後回しにして、父上に神剣授与について聞いてみるか
この一通の手紙が波乱を巻き起こす事になるとは…なんとなく予想はできた