50話・宰相と侍従長の後悔してること
ルイの母親が低位貴族出身の令嬢だったことから一時、彼らの父たちはそれを危惧して陛下との仲を強く反対してきた頃があったのだ。そのことで五宝家にも亀裂が入ったことがある。
亡き前王は王太子時代に、許婚であるルビーレッド家の令嬢を良く思わず婚約破棄をしようとしたことがあり、それを他の五宝家に説得されて結婚した経緯があった。そのせいか王妃とは不仲で、王女に恵まれても陛下の王妃に対する態度は冷たく変わらなかった。
陛下は傲慢な王妃の事を嫌っていた。娘が生まれてからは彼女を追い出しにかかった。王妃は最後まで権力にすがり振り落とされないようにしがみ付いたが、それまで味方をしてくれていたはずのアクアマリン家やアンバー家にも見放されてしまった。
彼らは王女の姿を見て王妃の不貞に気が付いたのだ。五宝家の当主として王の血を引かない者に従うことは出来ない。王妃から見れば彼らの態度は掌を返したように見えただろうが、彼らにしてみれば信頼していたはずの王妃に裏切られた思いでいっぱいだった。
王妃が追い出されると、彼らは新しく王妃として迎えられた女性に今までの非礼を詫びて仕える様になった。新しい王妃は心優しい女性だった。人柄が良く宮廷で働く皆をよく気遣った。そのおかげで今まで前王妃の疑心に溢れギスギスしていた宮廷が明るいものとなっていた。王妃はパール公爵夫妻とも仲が良く、お互い子に恵まれると交流が増えた。
王妃の評判が上がる度に、元王妃はそれを妬み恨んだ。彼女は王妃の悪口を言いふらし出した。王妃を支えるべく陛下の命で従っていた宰相、侍従長、辺境伯とはただならぬ仲にあるのだと。特に自分の兄である辺境伯が、新しい王妃に甲斐甲斐しく仕えているのを見て裏切られたと思っていたらしかった。
その辺境伯はというと、表向きは心を入れ替えて王妃に仕えている振りをしながら、妹を王妃の座から追い払った王や、王妃、そしてその王子憎しと復讐の機会を伺っていた。
しかし、王や王妃には常に宰相や侍従長らが付き従い、傍に置くものも念入りに見定めていたので隙がなさそうに見えた。そんな折、王子付きの女官が結婚適齢期にあるのに気が付いた。女官職は大概、貴族令嬢たちが花嫁修業も兼ねて行儀見習いの為につくので、結婚退職するものが少なくなかった。
そこで彼は裏から手を回し、王子付きの女官数名が同時期に結婚するように仕向けた。その為、新たな女官を雇うことになり、彼は自分の手の者を送り込んだ。その者に周囲にばれないように、王子の食事や飲み物に微量の毒を混ぜるようにさせた。
彼はいきなり致死量の毒を与えて王子を死なせるようなことは避けた。あくまで微量の毒を与え続けて、見た目には彼の体が弱っていくようにしたのだ。王子はすぐに寝付くようになっていき、皆がそのせいで王子は体が弱いからだと思いこむまでになっていく。
その頃にはルイ王子の側近として傍に仕え始めたサーファリアスや、アズライトでさえも気が付いていなかった。




