45話・ギルバードのついた嘘
「余からも礼を言う。副将軍、貴殿らの協力のおかげでこうして反逆者を捕らえる事が出来た」
「勿体無いお言葉にございます。陛下」
ガルムは深々と国王であるルイの前で一礼した。宮廷には近衛兵はいるが、こういった荒事には慣れていなかった。近衛兵達は貴族の子弟達が宮廷社会を学ぶ為に、行儀見習いも兼ねて入隊するようなものなので、いくら武芸に優れていたとしても所詮、模擬戦でそれを披露するぐらいで実際には危険な仕事は回ってこない。
それとは逆に衛兵とは実力主義なところがあるので、身分問わず誰でも入門出来るものの、結構高難度な修行をさせられるらしく、それについていけない者は近衛兵に回されたりするとも聞く。
ガルムはその衛兵を任されている副将軍の地位にあり、将軍である父エメラルドグリーン侯爵が動けない時は、彼が代わって指揮をとるのだとギルバードからは聞いていた。
「ちょっと待ってよ。ギルバード。あなた、あれも嘘なの? 王の血を引く者だって亜麻色の髪を見せ付けたじゃない」
「そうだ。私はきみの地毛が亜麻色だってことは知ってる。きみは王の落とし種なんだろう? だから私達に言い寄ってきたんじゃないのか?」
焦るメアリー達に、ギルバードは自分の髪をもちあげて笑いかけた。彼は緑色の髪の鬘を被っていた。その下から現れたのは亜麻色の髪の毛で驚く。
ガルムは訝るように見ていたが、ルイや宰相や侍従長らは顔色一つ変えなかったので彼らは知っていたようだ。
「いやだな。あれはきみ達に信用してもらう為に付いた嘘さ。亜麻色の髪に染色したに決まっているだろう。ただ、亜麻色は特殊な色だから、陛下のようにすぐに色が抜けなくて厄介なのさ。しばらくこうして緑色の髪の鬘を被って過ごす羽目になった」
ギルバードの地毛が亜麻色になっていて驚いたけど、染めたと聞いて納得した。亜麻色の髪はそうそう世の中に出回ることはない。亜麻色の髪を持つということは王族を示すのだから。そこまで考えてわたしはある事に気が付いた。
「どうしてメアリーは亜麻色の髪をしていないの?」
素朴な疑問だった。世の中には母親似、父親似なんて言葉が存在する。わたしは実際、父親に似た。でも、母から聞いた覚えがある。王家の亜麻色とは特別なのだと。王家の男を父に持った子は必ず亜麻色になると。実際にわたしの亡き母は、亜麻色の髪をした美しい女性だった。




