44話・きみたちのことはもとから信用していない
「ジェーン。残念だったわね。あなたが手にするはずだった王位も愛する人もわたくしが頂くわ」
「別にわたしは王位など望んでいない。ルイの御世が続くことを望んでいたわ」
「あらあら負け犬が何か言ってるわ。わたくしは初めからあなたが気に食わなかったのよね。父王は娘のわたしよりも姪であるあなたのことを一番気にかけていた。何が違うと言うの? あなたとは三つしか年も変わらないと言うのに……」
恨み言を言われてもわたしにはさっぱりだった。メアリーは派手な美人として社交界を賑わせていたし、元王女とはいえ、沢山の独身男性に囲まれるぐらい異性には人気があったはずだ。
「それは仕方ないさ。きみには一滴も王の血など入ってないのだからね」
「はあ? 何を言い出すの? ルイ。負け惜しみなの?」
ルイがメアリーを見据えた。メアリーは吼えた。それに応えずルイは命じた。
「ギルバード。反逆者たちを捕らえろ」
「はっ」
きょとんとするメアリーと、勝利を信じて疑わなかったオックスはギルバードとそれに従う衛兵達に拘束された。ふたりはその場で後ろ手に縛られ、膝をつかされた。
「お、おまえ。裏切ったのか? ギルバード?」
「裏切るも何も、僕はきみたちのことはもとから信用していない。陛下に全て報告済みだ」
「そしてそのことを我らは陛下から聞かされていたのさ」
ギルバードのあとに、サーファリアスが続いた。これはルイの指示のもと、宰相、侍従長、ギルバードの四人によって仕組まれたものだと言うことらしい。メアリーとオックスは悔しそうにギルバードをにらみ付けた。そこへ暢気にもギルバードの後ろから入室して来た体躯の良い衛兵が彼の肩をポンッと叩いた。口ひげが豪快な熊のような男だ。
「ギルバード。こっちは終わったぞ」
「ありがとう。義兄さん。わざわざ済まなかったな」
「いいって事よ。おっ、姫さん。大丈夫だったか?」
熊男はわたしに気が付き声をかけてくる。わたしはその声に自分がルイを抱きしめたままだったことに気が付き慌てて離れた。熊男はそれをどこか可笑しがるような様子を見せながらも追及はしてこなかった。
彼は似た目は熊みたいな男だが、末弟思いの気が優しい男だ。 皆が突然この場に現れた熊男にぎょっと目を剥いていた。何者だ? と、いう顔をしている。
「ガルムさま。あなたも係わっていたのですか?」
「まあね。滅多に連絡して来ないこいつが、手を貸して欲しいだなんて連絡を寄越したものだから俺の部隊を連れてきた。父には許可をもらってな」
「ありがとうございます。助かりました。ガルム副将軍」
彼の役職を言ったことで宰相達はガルムが何者であるか気が付いたようだ。彼は貴族籍を持っていないので社交界に一度も顔を出したことはない。でも将軍職にあるエメラルドグリーン侯爵の息子二人が衛兵の要職についていたことを思い出したらしかった。




