33話(閑話)・王妃の茶会2
母としては五宝家の子息という自覚を促がすものだったのかもしれないが、母には悪いが過剰な期待を掛けられても応えられないことは自分が良く分かっていた。
お茶会には自分以外の五宝家の子息達も来ていた。父親が宰相を勤めるアンバー家の自分より七歳年上のサファリアスを筆頭に、彼と同い年の、父が侍従長を勤めているアクアマリン家当主の息子アズライトに、自分と同じ年で父が辺境伯であり、前王妃の実家であるルビーレッド家の当主の子息オックス。そしてもう一人パール家の……と、視線をめぐらすと、一人の美しい少女が視界に入ってきた。自分より確か二つ年下だと母からは聞いていた。銀色に輝く髪に青い瞳。一目であれがパール家の令嬢に間違いない。と、思った。
五宝家はみな、それぞれ家名にちなんだ髪色を持つ。アンバー家は金髪、アクアマリン家は青みがかった紺色の髪、ルビーレッド家は赤茶の髪、パール家は銀髪。そしてエメラルドグリーン家は緑色の髪。でも、ギルバードは母が婿をとったせいなのか、一族がもつ緑色とは異なった。その為、幼い時から母の持つ緑色に似せた髪色に染めるのが習慣となっていた。
皆がギルバードや、他の五宝家の子息達を見つけて群がる。王妃主催のお茶会だというのに王子や王妃には誰も近付けなかった。王妃たちの傍には侍従長や宰相、辺境伯らが先を争うように王妃の世話を焼き、他の者たちは苦笑していたのだ。
それを見て近付こうとする者はいない。ギルバードの母ですら「呆れたものですわね」と、顔を顰めたくらいだ。これは王妃さまが他の貴族達との交流する為に企画されたものだと言うのに、御三家の当主は過保護なくらいに王妃さまに付き纏っていた。
これにはこのお茶会に招かれていた高位貴族達は失笑するしかなく、「あのお三方のなかにエメラルドグリーン侯爵や、パール公爵が含まれていなくて良かった」と、囁きあった。
当時、子供だったギルバードにその意味は分からなかったが、後で知ることになる。そのことが原因でアンバー家、ルビーレッド家、アクアマリン家は当時の王の怒りを買い、蟄居を申し付けられて代替わりを余儀なくされた。そのせいで御三家は若き当主が誕生したのである。
当時からジェーンは楚々とした少女で大変美しかった。貴族の汚い部分を目にする事なく育ったのであろう清楚さがにじみ出ていた。世俗の穢れとは無縁の聖女と言っても通用するような真っ白な存在に見えた。
その彼女は、誰もご機嫌伺いに近付かない王妃の前に歩み寄り、膝を折った。最初の口上は聞き忘れたが、「ご招待いただき有難うございます」と、王妃に挨拶をしてみせたことで、悪夢から覚めたように皆がわらわらと後に続いた。
彼女は王妃に挨拶を済ませると、母親の傍にいながら所在なさそうにしていた当時十歳だった王子の手を引き、お菓子のあるテーブルの前へと連れ出した。王子は彼女に懐いているようでジェーンと手を繋いではしゃいでいた。それを他の貴族らは微笑ましいものを見るように見守っていたが、王妃さまのことを気にかける者は誰もいなかった。




