24話・ギルバードは死んだの?
「あなた達っ」
オルリーは腰に両手をあてて、倒れこむ四人の前に仁王立ちになった。ダリーら四人の侍女組はすくみ上がる。こちら側からはオルリーの背しか見えない。四人はオルリーを恐れながらも、こちらに向かって何か伝えようと口をパクパクしていた。
「待って。オルリー。お説教なら後にしてもらえる? 慌てて駆け込んできたくらいだから、皆には何かわたしに言いたいことがあるのでしょう?」
四人に聞けば皆がぶんぶんと首を勢いよく縦に振る。それを見てオルリーは「仕方ありませんね」と、四人の前から退いた。四人はそれぞれ体を起こし、オルリーと目が合うとその場で綺麗に横一列となって正座した。
わたしはとりあえずダリーから様子を聞こうとした。
「ダリー。何があったの?」
「お嬢さま。お気を強くお持ち下さい」
「ダリー。これ以上、どう気を強く持てと言うの?」
ダリーは両手を握り締めてわたしを見上げる。その隣ではうんうんとマリーやリリー、リーズらが頷いていることからして、皆が言いたい事は同じようだ。
「ギルバードさまが……」
「ギルバードが何? また何か言ってきたの?」
「いいえ。ギルバードさまが……」
ギルバードの名前を持ち出しておきながら皆が言い渋る。何なのだろう? 皆、あのギルバードに何か弱みでも握られてでもいるの?
訝るようにダリー達の顔を順に見ていくと、リリーが涙を浮かべていた。
「やだ。どうしたの? リリー。まさかギルバードが刺されたとか言わないわよね? そのうち女性から刺されるかもって思ったことあったけど?」
いつか来るとは思っていた。女性との浮名が絶えない男だ。後ろからグサッと刺されても仕方あるまい。自業自得だよね。思わずリーズを伺うと「まだやってない」と、言われた。まだと言う事はそのうちやろうと思っていたとか? 恐るべしリーズ。
「話が全然、分かりませんわね。皆、どうしたのです? 子供じゃあるまいし。主人に報告も満足に出来ないのですか? あなたがたは」
オルリーが呆れたように言う。彼女はわたしに止められて説教を待て状態なのだ。痺れを切らしたようなボスの態度にリリーが震えながら言った。
「ぎっ、ギルバード……さ、さま……がぁ……深い眠りに……!」
そこまで言うと、ハンカチをどこからか取り出して目元に宛がう。感受性の強い彼女はおいおいとその場で泣き崩れた。
「ギルバードが死んだの?」
「いえ、まだです」
「ギルバードさまは原因不明の眠りにつかれたそうです」
それって昏睡状態と言うのではないだろうか? マリーが泣き崩れるリリーの背を撫でながら言う。
「ギルバードがどうして?」
「原因は分からないそうです。宮廷の自室にて起きてこないギルバードさまを心配して朝、様子を見に行った使用人が、ソファーの上で眠り続けるギルバードさまを発見して、エメラルドグリーン家に運び込んだようです」
「大丈夫かしらね? ジェーン」
共に話を聞いていたナミアが心配して言う。わたしはこの時、そんなに大変なことが起きているとは思いもしなかった。
「そう。ギルバードはおいたが過ぎたようだから罰でもあたったんじゃない? そのうち目を覚ますわよ。心配なんかするだけ損よ。あいつはけろりと目を覚まして今日は何曜日だったかな? なんて言うに決まってるんだから」
「大したことないと良いわね」
と、ナミアは不安そうな顔をしていたけど、それでもわたしは気にしていなかった。




