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ヒロインは死にたくないので婚約破棄します!  作者: 朝比奈 呈
婚約破棄したいんです
24/117

24話・ギルバードは死んだの?

「あなた達っ」


 オルリーは腰に両手をあてて、倒れこむ四人の前に仁王立ちになった。ダリーら四人の侍女組はすくみ上がる。こちら側からはオルリーの背しか見えない。四人はオルリーを恐れながらも、こちらに向かって何か伝えようと口をパクパクしていた。


「待って。オルリー。お説教なら後にしてもらえる? 慌てて駆け込んできたくらいだから、皆には何かわたしに言いたいことがあるのでしょう?」


 四人に聞けば皆がぶんぶんと首を勢いよく縦に振る。それを見てオルリーは「仕方ありませんね」と、四人の前から退いた。四人はそれぞれ体を起こし、オルリーと目が合うとその場で綺麗に横一列となって正座した。

 わたしはとりあえずダリーから様子を聞こうとした。


「ダリー。何があったの?」

「お嬢さま。お気を強くお持ち下さい」

「ダリー。これ以上、どう気を強く持てと言うの?」


 ダリーは両手を握り締めてわたしを見上げる。その隣ではうんうんとマリーやリリー、リーズらが頷いていることからして、皆が言いたい事は同じようだ。


「ギルバードさまが……」

「ギルバードが何? また何か言ってきたの?」

「いいえ。ギルバードさまが……」


 ギルバードの名前を持ち出しておきながら皆が言い渋る。何なのだろう? 皆、あのギルバードに何か弱みでも握られてでもいるの?

 訝るようにダリー達の顔を順に見ていくと、リリーが涙を浮かべていた。


「やだ。どうしたの? リリー。まさかギルバードが刺されたとか言わないわよね? そのうち女性から刺されるかもって思ったことあったけど?」


 いつか来るとは思っていた。女性との浮名が絶えない男だ。後ろからグサッと刺されても仕方あるまい。自業自得だよね。思わずリーズを伺うと「まだやってない」と、言われた。まだと言う事はそのうちやろうと思っていたとか? 恐るべしリーズ。


「話が全然、分かりませんわね。皆、どうしたのです? 子供じゃあるまいし。主人に報告も満足に出来ないのですか? あなたがたは」


 オルリーが呆れたように言う。彼女はわたしに止められて説教を待て状態なのだ。痺れを切らしたようなボスの態度にリリーが震えながら言った。


「ぎっ、ギルバード……さ、さま……がぁ……深い眠りに……!」


 そこまで言うと、ハンカチをどこからか取り出して目元に宛がう。感受性の強い彼女はおいおいとその場で泣き崩れた。


「ギルバードが死んだの?」

「いえ、まだです」

「ギルバードさまは原因不明の眠りにつかれたそうです」


 それって昏睡状態と言うのではないだろうか? マリーが泣き崩れるリリーの背を撫でながら言う。


「ギルバードがどうして?」

「原因は分からないそうです。宮廷の自室にて起きてこないギルバードさまを心配して朝、様子を見に行った使用人が、ソファーの上で眠り続けるギルバードさまを発見して、エメラルドグリーン家に運び込んだようです」

「大丈夫かしらね? ジェーン」


 共に話を聞いていたナミアが心配して言う。わたしはこの時、そんなに大変なことが起きているとは思いもしなかった。


「そう。ギルバードはおいたが過ぎたようだから罰でもあたったんじゃない? そのうち目を覚ますわよ。心配なんかするだけ損よ。あいつはけろりと目を覚まして今日は何曜日だったかな? なんて言うに決まってるんだから」

「大したことないと良いわね」


 と、ナミアは不安そうな顔をしていたけど、それでもわたしは気にしていなかった。



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