16話・美しい薔薇には秘密がある?
16話はちょっと改稿しております。
「一体、何なのあいつ」
「お嬢さま。如何なされました?」
自室に戻ってきたわたしは、苛立つ気持ちを抱えたままソファーへと腰掛けた。そこへ同い年で気心が知れている侍女のダリーが声をかけてきた。
「聞いてよ。ダリー。あいつがね、また来たのよ。どこから湧いてくるのやら」
「あいつとはギルバードさまのことですか?」
「もちろんよ」
ダリーは苦笑していた。わたしはそれに構うことなく続けた。
「しかも、婚約破棄は受理されないだなんて。どういうこと?」
婚約破棄したと思ったのに。と、愚痴るとダリーが訝るように見てきた。
「どういうことですか?」
「わたしにもそれが良く分からないのよ。あいつ、婚約破棄は教皇さまに認められてないから保留だなんて」
「教皇さまが? 保留? 本当の話ですか? ギルバードさまが嘘をつかれているかもしれませんよ。公爵さまがお戻りになられてから確認されては?」
「そうするわ。あいつの婚約前の不実な行動により申し立てたのだから、何だか納得いかないわ」
ダリーはわたしの目の前に紅茶を入れたティーカップを置いた。それにはわたしの好きな甘いはちみつが入っている。
「まずは気分を落ち着かれては如何ですか?」
「はああ。美味しい~。ダリーありがとう」
ダリーにお礼を言うと、どういたしまして。と、言いながら彼女が聞いてきた。
「そういえば先ほどスティールさまがどなたかとお戻りになってきて揉めているような様子だったのは、ギルバードさまだったのですか?」
「そっちは違うわ。オックスさまよ」
「オックスさまってあのメアリーさまのお従弟の?」
ダリーが目を丸くする。彼女の反応に当然よね。と、思う。
「そうなの。怪しいわよね? わたしとギルバードとの婚約破棄を聞きつけて、薔薇の花束を抱えて求婚にいらしたのだけど」
メアリーさまとわたしは仲が良いほうではない。四年前の王妃さまが主催する茶会で揉めたことがあってから、わたしは彼女を苦手に思っていた。
「その薔薇の花束をね、ギルバードが彼に付き返してしまって……」
「それは当然ですね」
珍しくもギルバードの取った行動を認めるような発言をしたダリーを見れば、彼女は物騒なことを言い出した。
「あの毒草使いのルビーレッド家ですよ。薔薇に何か仕込まれていたとしたら危なかった所です。あのヤリチン男にしては及第点をあげますわ」
「ダリー。つまりルビーレッド家からの贈り物は手にしてはいけないということ?」
「はい。お気をつけ下さい。ジェーンさま。何を仕込まれているか分かったものではありませんから。それにあのメアリーさまのご夫君方の死の話はご存知でしょう? 亡くなられた皆さまのご遺体は墓の下にはない。皆、あの屋敷の薔薇の下で眠っているのだと我々侍女仲間の間では評判ですよ」
「そっ。それって単なる噂なのよね?」
なんだかゾッとした。先ほど渡されそうになった美しい薔薇は、その亡くなられた方の上に咲いた……。
「驚かせすぎましたね。失礼しました。ジェーンさま。噂話ですのでどこまで本当かは分かりませんよ」
わたしが顔を青くして手にしたティーカップをかちゃちゃ鳴らしてるのに気が付いたダリーが慌てて訂正してくる。いやあ。そんな話を聞いた後では、いくら噂話だと言われても気になっちゃうわ。
もし、わたしがそれを気付かずに受け取っていたとしたら、ダリー達は理由をつけて処分していたかもしれないけど、わたし少しの間だけど花束持ってしまっていたし。
補足説明◆薔薇の色の花言葉。
黄色は友情。平和。愛の告白。
オレンジは無邪気、魅惑、絆、信頼。
緑色は穏やか、希望をもち続ける。
紫は誇り、気品、尊敬。
緋色は灼熱の恋。
濃紅色は内気、恥ずかしさ。
紅色は死ぬほど恋焦がれています。
黒色はあなたはあくまで私のもの。けして滅びる事のない愛。永遠の愛。
虹色は無限の可能性。
絞り模様は満足。
ドット柄は君を忘れない。
えっ? ドット柄? あるの??




