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蹴速、子宝に恵まれる。

大海編。開始。





 あの決戦から1月。無事噴火した火山騒動も一息つき、南海制圧に出ていた二神の者も戻ってきた。全てが普段通りとなった世。その中に蹴速の姿も有った。


「シロ、マシロがまた強うなっちゅうけんど、変な事してないよな」


「あああ当たり前じゃ。わしと蹴速の子に変な事など」


 何したんや、こいつ。


 対魔蹴速たいまのけはや。およそ人類最強の男。魔神シロ。およそ宇宙最強の魔神。その2人の子、マシロ。わずか1月で誕生した子であるが、もう10才くらいの大きさになっていた。


「健康ではあるんやな?」


「無論!見よ!このすくすくしい姿!」


 確かに。毎日、蹴速に有我に稽古を付けられて元気ハツラツではある。しかし強い。10才当時の有我と比較しても強い。あるいは当時の蹴速よりも。


「父様!母様をいじめてはいけませぬ!」


「おう。いじめてはおらん。話をしよっただけよ。怖がらせたな」


 蹴速は我が子をあやす。蹴速だって子を育てるのは初めて。二神、三鬼の家人に世話になりまくっている。三鬼の親御さんにも子育てを教授してもらった。


「元気か!マシロ!」


「神無様!」


 二神ふたがみ太郎花たろうばな八郎神無はちろうかんなが来た。マシロは基本、様付で呼ぶ。大人になってからの下克上が楽しいから、だそうだが。魔神の教育方針を疑うべきか否か。魔神の子を人間の定規で測るのも違うか。


「蹴速、俺達の子はあと9ヶ月後!大慌てにならぬようにな!」


「ああ」


 蹴速は気が遠くなりそうだった。行き当たりばったりで生きてきて、これほど後悔した事もない。少なくとも12人の子持ち。責任を取りきれるのか。


「要らぬ事を悩むな。計画通りに生きているなら、魔族の世よ。人間の計画で魔神が倒れるか」


「うむ。蹴速よ。わしらもわしらの判断に従っておる。おぬしにのみ判断を委ねたのではないぞ」


 確かに。家をどうする、という会議。結局こちらにもあちらにも家を構えた。高知県の田舎に一軒。二神、三鬼から行き来の容易な場所に一軒。今は主に、こちらで住んでいる。


 あれから魔族の侵攻はパタリと止んだ。ゲートをことごとく潰すのに魔神が同意してくれたからだ。これで下級魔族は出てこれない。フォーデス山の見張りも落ち着いたものになった。


 これからコウチはこの世界を制圧する、かどうかは知らない。魔神の力が1代限りのものかどうか。蹴速は何時居なくなるのか。万が一蹴速に一一人や二神、三鬼が付いた場合、コウチは消える。


 何もしない。刺激を与えず、住みやすくするしかない。3名家以外の上層部の考えとして、こう結論付けた。この考えは結局、コウチの住みやすさを整え、国力の増強にも繋がったので、悪い判断ではなかった。


「マアカ!飛べ!良し!いいぞお!」


 あちらでは、アカが子のマアカを鍛えている。マアカもすくすく育っている。


「マオミドリ」


 アオミドリは子のマオミドリに日が当たらぬようにしてやる。お昼寝の最中だ。


「マキ」


 キは子のマキと一緒に本を読んでいる。しばらくは絵本だ。もう少ししたらおとぎ話にも手が出るかもしれない。


 マクロは親のクロに背負われ、魔神の側に居る。すやすや寝ている。


 モモだけは蹴速との子を作らなかった。モモがそういう意味で好きなのは、魔神だけだ。


 人間を食べなくて、健康に問題はないのか。魔神、魔王に聞いてみたことがある。仕方がないことなら、他国を攻め取り、食料庫としても構わない。蹴速はそこまでは思っていた。


 別に問題はないらしい。蹴速クラスを食えば、力は段違いに伸びるが、必要な事ではない、らしい。既に魔族の我が子も居る。子のためなら人間の犠牲も、別に問題ではないが。


「ダメだって、蹴速君。戦争も楽しいけどさー。蹴速君より弱いのと戦ってもしょうがないじゃん」


 アカに諭される。案外に理性的で助かっている。


「こいつらが大きくなったら、真面目に戦いたいよね」


「ああ。まあな」


 不思議だ。この手で、その臓腑を貫き、命を奪った相手が、おれと子を成している。


「どしたの?もっと子供欲しい?」


「いや、大急ぎで作らんでもいいやろう」


「だよね。時期を変えて作って、変化も見たいしね」


「蹴速君。マオミドリに、ほら。」


 マオミドリは寝入っていたが、空に手を伸ばしていた。その手を掴み返す蹴速。涙がこぼれた。


「蹴速君。大丈夫だよ。皆ここに居るよ」


「ああ」


「魔神様を屠る程の男が。全く」


 キも呆れたように見ている。横のマキも。


 実感は薄かったはずだ。いきなり腹が大きくなり、数日後に出産。生後1月で小学生くらいに。親になった実感は薄かったはずだ。おれは。


 こいつらすげえ。流石、おれの嫁。


「皆で遊園地でも行くか。結構大きくなったし」


「賛成!」


「いいね」


「構わない」


「何処に行くのじゃ?」


 蹴速には当てが有った。大家族で行けて、ある程度騒いでも問題ない施設と言えば遊園地。その中でも大規模な場所ならばあらゆる設備が整っている。あそこしかない。東京ダモクレスランド。


「東京に有る。いっぱい遊ぼう」


「ほほう。一度行ったな」


 魔神達は実はあちらの世界に行った事がある。蹴速の両親にも会い、色々な用事を済ませてきた。


「覚えておりません!」


「当たり前じゃ。まだ腹の中に居ったのじゃぞ」


 わっはっはと笑う魔神。あまり笑えない蹴速。ニコニコしている周り。


「俺達の腹が大きくなると行きにくくなるからな。いいと思う!」


 人間、神無からも了承を得られた。


「1日の事なら留守番も要るまい」


 神無は恐らく有我に気を使っている。有我が留守役を務めてくれれば心配はないが、たった1日で消えるようなもろい国はそれこそ要らない。一一人有我かずひと ういを煩わせるまでもない


「情勢は安定している。小競り合いすら起こっていない」


「なら、いいか」


「あの、心配なようなら私が」


「大丈夫よ。モモさん。三鬼の親父さんも居る。心配はない」


「そうですね」


 モモを安心させる。実際、三鬼華虎みき はなこだけではキツい。が、自分を押し殺させる事は蹴速が許さない。望んだ事ならばともかく、望んでない事はやらなくて、いい。おれが許す。


「祝寝も海鶴も中か」


「おお。昼飯を作ってくれておる」


「海鶴は大変だな」


「ああ。昼間はずっと水中よ」


 海鶴は室内プールに居る。この陸の温度に参りかけたのだ。空調を使えば何とかなるが、今度は人間が寒い。それでも祝寝も己黄も少し羽織るだけの事。嫌がりもしなかったが、海鶴なりに気付いた。無理をさせているのではないか。


 プール作ってて助かった。蹴速は、絶対無駄遣いだと思っていたが、そう言えば嫁は人魚だった。祝寝らの慧眼に感謝。


「俺は一泳ぎしてくる!」


 海鶴を気遣っての事でもあるが、多分に神無の趣味だ。体を動かすのは大好きだ。


「もう全快した?」


「ああ。何とかな」


 蹴速の足は動かなかった。しばらくはベッドの上で生活していた。それでも時間の経過によって徐々に回復し、今では全力で蹴る事も出来る。


「有我、マシロをどう思う」


「すごいよ。流石蹴速君とシロの子だね」


 有我も共に生活している。3名家の人間が一堂に会し生活しているこの家は、ある種の畏怖を以って他の住人からは見られている。


 ちゃんと対魔蹴速家行きバスも運行している。乗っている人間はチェックされるが。


「マシロが新しい魔神になるのかな」


「なります!きっと宇宙最強になり、全てを支配します!」


「立派じゃ!」


 べた褒めする魔神は置いておく。魔神シロは確かに魔界を好き勝手していたが、あまり人間界にちょっかいは出していなかった。その気になれば人間を根絶やしにするのは簡単だったろうに。


「シロ。魔神て何?」


 有我の質問。蹴速も深く聞いてない。


「さて。魔神は敬称かの。何でも良かったのじゃが」


「どんなお仕事なの」


「気が向いたら生命を創ったり。気が向いたら星を作ったり。気が向いたら壊したり。そんな感じじゃ」


「ふうん」


 よく、分からない。それでは、まるで本物の神ではないか。


「わしは魔神じゃ」


「知ってるよ」


 たまに有我も魔神と戦う。あくまで稽古の一環として。なので死ぬまではやらない、が。本物の化け物だと思った。蹴速もそうだが、有我の最強の看板は、もう下ろしている。


「マシロは可愛いねえ」


「はい!」


「しっかりマオミドリもマキもマアカも守るんだよ。お姉ちゃんだからね」


「はい!将来の魔王ですもの!」


 まあ、間違ってはない。


 この子供達は本気で連携出来れば、その辺の兵を足止めする位は出来る。この家では無力だが。


「お昼だよー」


 祝寝すくねが呼びに来た。


「おお」


 おれと祝寝が居る。他にも少し増えたが、いい毎日だ。


 昼食を食べ終えた皆は、蹴速の話に乗る。


「ダモクレスかー。ヒーローショーが良いよね」


「子供の教育にも良さそうだ」


 祝寝とキが合意する。


「東京かあ。今度は何買おうかなー」


「特盛。もう木刀は要らない」


 特盛が前回、あちらに行った時、つい目に付いた木刀を片端から買い込んでしまったのを突っ込む海鶴うみづる


 そう、平特盛たいらのとくもりもまた、ここに居た。


 時折、我に返る。梅に付いてきて、魔神と蹴速の戦いを見て。何故おれはここに居るのか。確かに自分の足で来た道なのに。てか、子も作ってるし。親への紹介は、そのうちでいいか。名家じゃねえし。


 特盛を巻き込んだ梅は、そう大きく考えていなかった。最後まで来い、としか。


 三鬼梅みきうめは完全に当主となった。華虎が隠居し、三鬼本邸を守護するために。これで神無と梅の2枚看板で本部は立つ。有我は自由自在。好き勝手に動いてもらうために、本部には付かない。


 亜意と己黄はゲームに勤しんでいる。


「こおおおっ!」


「ぬあ!」


 声を上げながらプレイするそれは、バスケットボール。今はフリースローの勝負だ。・・・シュートのみで、この盛り上がり。流石己黄。


 青嵐亜意あおあらし あいはその後、蹴速の治癒をするという名目で蹴速の側に残り、何となく居着いた。


 黄金の少女、己黄みおは龍の化身である。親を失い、路頭に迷っていた所を蹴速と神無に拾われた。今は、この家の良き一員である。


 今すぐ世界征服が出来るこの住人達の生活は、爽やかなものだった。


遊園地特攻の日。


「皆忘れ物はないな」


「大丈夫!」


「うむ!」


「数えるよー」


 祝寝が人数を数える。総勢20名の団体だ。子は親が手をつないでいる。


「おっけ。行こうか」


 亜意が開けたゲートからあちらへと旅立つ。


 と言っても。ゲートの向こうには東京ダモクレスランドの姿が。以前行った東京。そして周辺地図を頭に入れ修正すれば、近い場所へのゲートを開くのは不可能ではない。


「すごい、亜意」


「だろ。あたしが一番だろ」


 亜意は自慢げだ。


「さあ。パンフレットをもらって各自チームで楽しむ!」


 言いつつ全員で動くことになるのだが。


 さあ遊ぶ!そんな時。


ごおおおおおお


 轟音。


「なんや」


「蹴速。津波じゃ」


「津波?」


 地震でもあったか?


「消してくる」


「わしも行こう」


 蹴速と魔神が跳ぶ。やって来る高さ100メートルの津波を蹴り壊す。打ち壊す。これで安心して遊べる。


 と思いきや。津波の底から、何かが現れた。


「ギョギョギョ!!」


 でかい、わけの分からん生き物だ。人魚ではない。


 蹴速は海鶴を連れてきた。


「あれ、何か分かるか?」


「分からん。もう少し喋らせてみてくれ」


「やと。シロ」


「ふむ」


 魔神シロは正体不明の生き物を少し弾いた。数キロ海面を跳ね飛んだ生き物はプカーと浮いた。


「あらら」


「しゃーない。海鶴。殺さん方がいいか?」


「さて。こちらの海は詳しくない。だがそこまで重要な者がこんな浅瀬に来るとも思えん。構わんだろう」


「ふむ」


 シロは海鶴に頷き、生き物を消滅させた。


「じゃ、遊ぶか。海鶴もありがとうな。無理を言うてすまんかったぜ」


「構わん。夫の助けも良い妻の条件。やりがいが有ったぞ蹴速」


「そう言ってもらえると助かる」


 蹴速と海鶴の横に、キスを待ち構えるシロ。手助けをしたので、だろう。海鶴の健気さに感動していたのに。でも、一緒に戦えて満更でもない蹴速は心を込めて口付けた。


「うひゅひゅひゅ」


 先程の生き物に勝るとも劣らない声を上げたシロはマシロの元へ。ちゃんとマシロは己黄が見ていてくれた。


「すまぬの己黄」


「いや!うむ!」


 当初、魔神への態度を決めかねた己黄だが、つまり妹だ!と思い返し今に至る。


 そして一行は夕暮れまでたっぷり遊んだ。


 帰りがけ、


ごおおおおおおお


「またか」


「マシロは預かるよ」


 有我がシロからマシロを受け取る。寝入っているのだ。


「すまんの有我」


「じゃ、ちょっと行ってくる」


 また海鶴を連れ、蹴速とシロは跳ぶ。


「今度はおれがやる。シロは後ろへ行かんよう見張ってくれ」


「うむ」


 蹴速は生き物をちょこっと蹴った。数百メートル吹っ飛んだが、生きているようだ。


「ギョギョ!」


「ふむ。仲間を殺したのはお前か、と言っている」


「ああ。と伝えてくれ」


「ギョギョギョ!」


「許しがたい。海王の許可を得るまでもなく、この海のハヤブサ、サンゴロックが貴様らを屠り去ってくれよう。我が仲間、海のタカ、パールハートの美しさを奪った罪、万死に値する。悔いるがいい、泣くがいい。貴様らに許されたのは、ただ絶望のみよ」


「まだ続くんか」


「もう数分だ」


「重要なポイントは」


「無い」


 海鶴の言葉を聞いた蹴速は、海鶴が通訳し終えるのを待っていた生き物をさっと殺した。


「すげえ時間の無駄やったな」


「全く」


「海王というのは知っているか、蹴速」


「いや?一度も聞いたことがない。はっきり言うて新興の小物やろう。今までおれが一度も聞いてないなんて。しかもこんなのを手先にしておって」 


 そう。少数精鋭ならば、有りうる。が、尖兵がこれでは。


「気にするまでもなかろう」


「やな」


「ふむ」


 海鶴は多少気になった。海王というもの。海神とは違うものか。海竜とは。だが、見物に行く暇はない。頼めば、蹴速は何とかしてくれるかも知れないが。


「気になるか、海鶴」


「うむ。知りたい。海の者を」


 言葉が出てしまった。


「そうか。じゃ明日にでも行くか。海」


 蹴速は忙しくない。適当にぶらぶらしてても問題ない。


 学校はやめた。あちらの世界に居を構える以上どうにもならない。故に今持ってる教科書を元に、祝寝に教えてもらい勉強している。


 祝寝はこっちの実家に幾度か戻り、学習の方法を考えた。その際には、蹴速と祝寝の父のやり取りも勿論有ったが。とりあえず片端から参考書、学習書の類を買い漁り自習する事にした。そして祝寝の噛み砕いた事を蹴速に教えていく。


 海鶴が勉強したいなら、行くのが道理。


「今日は帰るぜ」


「ああ」


「うむ」


 亜意の開いてくれたゲートで家に帰る。今日も良い日だった。


 その頃、海底。


「ギョギョ」


「ギョギョギョギィ」


「ギョーギョ」


「ギョギョヨ」


「ギョ」


 戦慄である。


 翌日。そのようなこと露知らず、蹴速達は海岸に居た。


「すまんな超騎士ワンナイト


「いえ。これも私の望み」


 イギリス最強の兵、超騎士がそこに居た。超騎士はイギリスに、世界漫遊の願いを出していた。無論叶えられなければ、イギリスという国は消える事になるが。


「おれも来て良かったの?」


 世界有数の兵、ジン。本名は長いので、丁寧に解説する。ジーニアス・エンペラー・カイザー・フォーエバー・シューティングスターと言う、蹴速と同格の怪物だが、同時に蹴速の嫁達の妹として可愛がられている。以前より人と付き合えるようになった。アメリカの超科学チームと超魔術チームの混血児。最強の兵を目標に作られたスーパーサラブレッドだが、予定以上の能力は持てなかった。現在最強の兵、対魔蹴速超えを叶えられなかったため、失敗作として宙ぶらりんになっていた所を両親に引き取られる。両親はジンがアメリカを背負って立つことを信じている。


 ジンも超騎士も昨日の遊園地に同行していた。というか、一緒に住んでる。


 母国へ滅多な真似もしたくないが、蹴速と一緒に居られないのであれば、ま、仕方あるまい。


 超騎士は自己犠牲が嫌いだった。


「おれ達に結界を張って、水中でも行動出来るようにする。正直、お前の言葉でなければ、信じられん」


「論より証拠。やってみましょう」


 言うと超騎士は海中に。


 全身が沈んだ所で、出てきた。その身体には、水滴1つ付いていない!


「すごい。空気はどうなる?」


「それも作ります」


「とんでもない。見くびっておったぜ。本当にすごい」


「うん!すごい!」


 ジンからの掛け値なしの賞賛。超騎士もいささか顔が緩む。


「では参りましょう。海鶴」


 メンバーは蹴速、海鶴、ジン、超騎士、亜意、アカ。


 シロにはいざという時のために、残ってもらった。出来れば蹴速かシロのどちらかは家に残しておきたい。


 あの家に攻め込む戦力が、この世に有るかどうか。無いのだが。


「海底なんてワクワクするね蹴速君!」


「おお。おれも初めてよ」


 この人員の中で、弱いと言えるのは亜意のみ。亜意は可能な限り厚く守ってやってほしいと言ってある。


 進入する一行。海の中は、暗かった。


「明かりを点けます」


 現在、超騎士の結界は各々繋げてある。ゆえに結界を通して声が伝わる。その厚みは1ミリで数トンの圧力に耐えられる。結界を200万枚ほど使った特別性のケーブルだ。


 外に放り出した結界ポケット内にランタンを設置。一行はチョウチンアンコウを模したような集団となり進む。


 海鶴は自由自在に泳ぐ。普段とは違い素肌に水が触れないので、若干不思議だが、それでも久しぶりの海だ。海は、良い。


 進むこと1時間。そろそろ海面が遠い。あの変な生き物の気配はない。


「見つけて、どうすんだ?」


「ん。話を聞く。後は海鶴の好きなようにさせる」


「ふーん」


 初めての海底散歩。何の収穫もなくとも、楽しい。


「お、ダイオウイカ」


「食べれる?」


「美味しくないらしい」


「へー」


 アカが一口。


「・・不味い」


「ひゃはは」


 楽しげに笑う亜意。


「イカはスーパーで買うべきか」


「いえ。レストランで良いでしょう」


「海鶴に作ってもらうか」


「ふむ。祝寝と作ってみるか」


あははは


 真っ暗の海でも、話し相手が居れば何とかなるものだ。


おうん


 音。恐らくでかい。はっきり聴覚に伝わってきたわけではないが。


「蹴速。何か来る」


「ほう」


 蹴速、アカは前に出る。超騎士、亜意、海鶴、ジンは後方に。


「ギョギョ!」


「こないだのやつや」


 強いて言えば、貝殻を被ったタコか。馬鹿でかいヤドカリと言うべきか。


「海鶴」


「ああ。何者か、と問うている」


「人類最強、対魔蹴速。用事はない。邪魔をすれば殺す」


「ぎょぎょぎょ」


 海鶴の人魚語。そういえば初めて聞くな。


「ギョイ!」


「御意では、ないよなあ」


「うむ。片腹痛い。海王デミコラーゲンクラーゲンの支配する海に於いて人類種ごときが。いずれ侵攻しようと計画していた日本だが、その面白い冗談に免じ、即提案してやろう。貴様の跪く日を楽しみにしているぞ。言い忘れたが我が名は海のヘビ、ノリブルー。貴様らを地獄に導く名よ。覚えておくがいい」


「まだ続く?」


「ああ」


「どうしようか」


「敵でしょ?」


「うーん。しらみつぶしも面倒い。案内してくれんかな」


「ぎょぎょぎょ」


「ギョー」


「自ら人質を申し出るとは、臆病者め。だが良い。貴様の国が落ちるのを見せてやろう。人類種最強とやらの貴様には打って付けの罰ではないか」


「ちょろい」


「海鶴すげー」


「海鶴すごい!」


「すごいです海鶴」


「ふふ。照れるな」


 一行はノリブルーを加え、海王の座する海の国へ歩む。


「ギョウ」


「ぎょぎょ」


「なんて?」


「もっと早く進めないのか。このままでは腹が減って仕方がない。試しにそこの女子でも食ってやろうか。と、言われたので、急いては事を仕損じると返した」


「おっけー。良いぞ海鶴」


「海の国が見えたら食ってもいい?」


「ああ。腹を壊さんようにな」


「大丈夫大丈夫。こいつもそれなりに強いはずだし」


 アカは健康的に食欲旺盛だった。


 歩くこと5時間。


「ギョギョ」


「到着した。あの光り輝く王城こそ、海王の宮殿」


「海鶴。ちょっと見学していくか」


「ふむ」


「えー」


「ああ。こいつは食べていいぞ」


「わーい」


 でかいタコは、足を数本残し、この海から消えた。


「んー。不味くはない、かな。やっぱり祝寝のご飯が一番美味しいよ」


「ふむ」


 なんとなしに、微笑む蹴速。


「ねえねえ。アカばっかり食べて、おれ達食べてないよ」


「確かに。お弁当にするか」


 今日は各自カバンを持っている。中には祝寝、己黄の作ってくれたお弁当が。


「美味しい。流石祝寝さん」


「はい。私も見習いたいものです」


「うん!美味しい!」


「あたしも料理するか・・?」


「美味い」


「ふ。この卵焼きは己黄だな。美味いぞ、己黄」


 皆満足。海鶴もご満悦だ。


「そろそろ行くか」


 海の国へ。

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