表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/46

第五の罪源4

「ははっ、良いぜ、テメェは昔から透かした態度がムカついてたんだよぉっ!!」


 片手剣を抜き放ち、カインは構えを取る。俺はそれを確認すると同時に、加速の支援魔法が発動したのを感じた。


 一歩、カインの死角へ位置取りナイフを突き出す。

 二歩、相手に手の内は読まれている。難なく躱され空ぶった姿勢のまま、脇腹へ蹴りを入れる。

 三歩、姿勢を直し、再びナイフを構えて突きこむ。


「っ!?」


 カインに俺の手の内、つまり戦闘の癖はバレている。彼は蹴られた脇腹をかばうことなく、俺のいる方向へ片手剣を向けている。


 速い動きではなかった。カインの持つ、超人的な戦闘センスのなせる業だった。一方の俺はと言うと、想定外の位置にあった刃を避けようとして、三歩目を足を地面に着けてしまっていた。


「ぐっ――!」


 顔の左半分に、焼けつくような痛みが走り、左半分の視界が消失する。視界を奪われた恐怖で動きを止めそうになるが、俺は動きを止めなかった。


 そう、カインは知らない。俺の支援マスタリーが、Lv4になっていることを。


 四歩目、伸ばされた彼の腕へナイフを走らせ、手首の関節で切断、そして、雪の上を転がるようにして距離を取る。


「ぐあああああっ!?」


 カインが叫び声をあげ、うずくまる。取り落とした片手剣と、それを握ったままの左手が、雪の上で真っ赤な滲みを作っていた。


「ちっ……」


 とっさの判断で致命傷を与えられずとも、再起不能にしようとしたが、彼は用心深かった。利き腕を使わないとはな。


『ニール!』


 モニカとユナの声が左から聞こえる。しかし、そちらの視界は閉ざされたままだ。


「油断するな、俺が言えた義理じゃないが、カインは強いぞ」


 それに、八咫烏まで控えている。氷竜相手にリソースを使い切ったのが、今更ながら悔やまれた。


「そ、そんな事より! ニール、目が……!」

「右目は見えている。集中を切らすなっ」


 狼狽えるモニカを口で叱責するが、状況は全く良いとは言えなかった。戦闘リソースの不足、彼我の戦力差、負傷度合い、どれをとっても五分以上にはなり得ない状況だ。


「ニール、テメェ……よくも俺の手を……!」


 カインは立ち上がると、八咫烏に指示をして、赤色の怪鳥はひときわ輝いてその体に熱量を溜め始めた。


 金等級の魔物が今ここで全力で暴れたらどうなるか、それは火を見るよりも明らかだった。


 どうする? 急造杖は使い切った。加速のクールタイムは終わっている筈もない。倒せるほどの超火力があるはずもない。完全に手詰まりだ。


「死にやが――」


 諦めかけた瞬間、凄まじい爆発音とともに、八咫烏の身体に円形の穴が開いた。


「グ、グケッ……」

「な、なん……っ!?」


 それに驚いていると、八咫烏の身体に二つ、三つと急速に穴が開き、蜂の巣のようになっていく。


「グキャアアアアッ!!」


 ひときわ大きな鳴き声をあげ、八咫烏は地面に落ちてボロ雑巾のようになる。


「強欲者に堕ちたリーダーを追ってたら、なーんか懐かしい顔がいるじゃない?」

「ホントホント! モニちゃん元気だった? ニル兄は……何その顔!?」

「あらまあ、随分ハンサムになっちゃって……ま、おじいちゃんになっているよりはマシね」


 二つの人影が、親しげに話しかけてくる。その声には聞き覚えがあった。


「……サーシャ、アンジェ」

「久しぶりね、ニール」

「お疲れ様っす!」


 懐かしい、パーティメンバーの再結集に、こんな状況だというのに頬が緩むのを禁じ得なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ