七海の誕生日 おまけ
茜と道明、遊馬が帰宅した後、流水が隣の和室に鷹也を手招きで呼び寄せる。
「鷹兄、鷹兄、ここ座ってー!」
流水は鷹也を座らせ、袋から取り出した何かを頭に、ジーンズの後ろで何かを、それぞれ取付けて満足したようだった。気になった鷹也が触ろうとしたのを「ダメ!」と制し、先に部屋を出て振り返る。
「鷹兄きて!!」
不思議そうな表情のまま、七海とさくらの前に現れた瞬間。七海は呆然とその場に立ち尽くし、さくらは持っていたスマートフォンを取り落とした。
185センチという長身の無愛想な男の頭には黒猫の耳、黒猫のしっぽがひょろりと揺れているのだ。
「かっ!かわいいいいいいいいいい!!」
七海が夢中でシャッターを切り、さくらは真っ赤になったまま呆然と黒猫を見ている。流水もけらけら笑いながら写真を収めた。
「‥どゆこと?」
困惑顔の黒ネコに、流水の腹筋が限界を迎えた。しかし静かに近寄って何事か囁く。怪訝そうな不服そうな表情を浮かべた鷹也がため息をついた後。
「…にゃー」
一言鳴いた。ローバリトンの不機嫌そうな「にゃー」に、流水は爆笑しながら動画に収め、七海は真っ赤になって顔を覆う。そしてさくらはその場に崩れ落ちた。
「そいや七海、これプレゼント。」
鷹也だけが全く動じることなく、プレゼントの箱を七海に手渡した。七海は笑いすぎて涙を流しながら受け取り、相変わらずさくらは床にへたりこんだままだ。
「あっ‥ありがとっ‥うっふふっ‥あははははは!」
箱を開けてみると、今流水が腕につけているベビーGの色違いだ。
「かわいい!!水色のいいなって思ってたの!!」
そして思わず鷹也を見上げ、再び笑いの発作に苛まれる。
「‥とっていい?」
憮然としたまま呟く兄に、流水は黙って首を振った。
七海が一足先に自宅に帰り、鷹也とさくらと流水が後片付けをする。ようやく耳としっぽを取ってもらえた兄は、ホッとしたらしい。
「七海が楽しそうでよかったな?」
姉のことを流水がずっと気にかけていたことは、鷹也も勘付いていた。
「うん!!ありがと!鷹兄もさくらちゃんも!手作りオードブル、超美味しかったよ!!」
流水が輝くばかりの笑顔で言い、鷹也とさくらも笑顔で頷く。
「あーでも‥」
「お姉ちゃんには内緒!‥鷹兄やさくらちゃんまでが、料理あんなにプロ級に上手だと知ったら泣いちゃうよ!」
鷹也は困ったように頬をぽりぽりかいている。
「あ!さくらちゃんにはお礼に黒ネコさんの写真と動画送るねっ!?」
「っ!?」
さくらは困ったような嬉しそうな表情を浮かべ、それでも微かに頷いた。
そして流水が帰宅した後
「おねーちゃん!」
七海の部屋のドアをノックして部屋へと入る。七海は柴犬のぬいぐるみを抱え、スマホの写真を見ながらニヤニヤしていた。
「わ!!な、なに!?」
「これ私から!おとーさんとおかーさんからの動画つき!」
そう言ってフォトアルバムを渡した後、自分の腕時計をちらりと見せて「おそろいだね!」とばかりに笑った後、部屋を出た。
「七海、お誕生日おめでとう。あれから少しは落ちついたかい?‥何が起きたとしても、パパは七海の味方だ。離れていても君のことを忘れることはない。何かあったら電話しておいで。時間なんて気にする必要、ないんだからな。また夏休みに会おう!」
「ナナちゃん、お誕生日おめでとう!貴女は頑張りやさん!それはちゃーんと分かっているから、ちょっとは自分を可愛がってあげて?そうじゃないとママが死ぬほど甘やかしちゃうんだからねっ!また近い内に家に行くから、みんなで焼き肉行くわよ!」
両親からの言葉に七海は泣き、笑い、そしてぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
後日談
流水から送られてきた黒猫の写真と動画を見た両親たち
父 蒼介
「はっ!?前からそうじゃないかと思ってたが!やっぱりあいつはにゃんこ!!」
母 雅
「か、か、か、かわいい!これはもう待ち受け!!鷹にゃーーん!!」
さくら
「ちょっとこれは‥心臓に悪すぎます。‥パソコンにも保存しないと‥」
そして黒ネコ本人は、そんなことをすっかり忘れていたのだった。




