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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
12/31

1-11 体育祭 1

 その日、七海はテーブルに置いてあるおにぎりとおかずを食べ、食器を洗って家を出た。霧江は朝からお弁当作りのために、篁の家に行っているのだろう。流水も朝早いらしく、既に家を出た後だった。

「おはよう!ナナ!」

 茜が元気に声をかけてくれる。

「今日はいい天気だね!気持ちいい!」

 二人がたわいもない話をしながら歩いていると、遊馬が走って来た。


「よー!あれ?道明‥は応援団か!」

「そそ!流水も応援団らしくって。おねーちゃん応援するんだ!って盛り上がってたんだけど、流水は2組だから赤なんだよね!」

 七海の言葉に茜と遊馬が笑い声をあげる。

「流水ちゃんかわいい!色違いって言ったら超ショックうけてそう!」

 茜が笑いながら言うと、七海も頷いて笑った。

「“えええええ!?でも!赤組だけど心は白組だし!”だって!」

 七海が流水の真似をして言うと、茜も笑ってしまう。

「かっわいいなー!‥けどさ、中学最後なんだねえ‥」

「それな!!入学したの一昨日くらいじゃねえの?って気分。」

 少ししんみりした茜に対し、遊馬が大いに同意した。

「「さすがにないわー!」」

 七海と茜が思わずハモり、お互いに顔を見合わせて笑う。

「中学最後、か。‥勝って気持ちよく終わりたいな!」

 そんな七海の言葉に、茜も遊馬も頷いた。


 着替えも終わり、開会式が終了した後はラジオ体操だ。

「何かさーラジオ体操みんなで踊ると楽しいねえ!」

「ラジオ体操は躍らないって!」

 流水の言葉にクラスメイトが笑いながら返す。小学校の時よりも人数が多く、何となくお祭りのようでワクワクしてしまうのだ。


 最初の競技は全員参加の徒競走だ。1年生から順に始まるため、流水たちも小走りになって入場門へと急ぐ。ラジオ体操のゆったりした音楽から、天国と地獄へと切り替わったためについ駆け足になってしまうのだ。

1年生の後ろには2年生が並び始め、押し出されるように1年生が徒競走の位置へ並んだ。各クラス背の順で2人ずつ4名の組み合わせで並んでゆく。

【それでは、全員による徒競走です!みんな頑張れ!!】

 そんなアナウンスが流れ、号砲と共に4名が走り出す。

「いけー!」 「がんばれー!」 「気を付けて―!!」

 父兄たちの声援もありつつ、1年生たちは必死で走る。


パンッ

 号砲の音と共に流水もダッシュだ。足は余り早い方ではない。それでも一生懸命走るのだが、走り始めるとつい笑ってしまう。

「あははは!」

 たまたま運が良かったのか、2位でゴールイン出来た。ビリになることも想定していた流水にとっては快挙だ。2位の旗の前でついぴょんぴょん飛び跳ねてしまう。

 1年生全てが走り終えると、順位の旗前に並んでいた全員が席に戻らされる。篁と環、霧江の姿を目ざとく見つけた流水はピースサインを掲げながら走って自分の席まで戻った。

 その後2年生、3年生と続き、七海が走る番になる。流水は思わず立ち上がってしまう。号砲と共にスタートした姉は、伸びやかに走り抜けていった。圧倒的な速さで1番にテープを切る。

(わ!やっぱりお姉ちゃんはすごい!)

 クラスメイトたちとハイタッチを交わす姉を見ていると、つい頬が緩んでしまうのだ。


「あー!またお姉ちゃん見てる~!敵なのに~!」

 同級生にからかわれ流水はえへへと笑った。

「でもめっちゃ速いね!背も高くてカッコいいというか。確かに自慢したくなるの分かる!」

 そんな風に言われると、嬉しくてくねくねしてしまい、さらにからかわれるのだった。


【さて―次は!大縄跳び!!昨年の記録は19回!今年はこれを破れるか!?】

 学年ごと、クラスごとに分かれた大縄跳び。これは計3回チャレンジして、一番多く飛べた回数が記録される。流水達のクラスもかなり練習してはいたが、7回がベストスコアだった。姉のクラスが11回。そして2年生のクラスがまだ飛び続けている。

「じゅうはちー! じゅうくー! 」

 赤も白も学年も関係なく、父兄も声を揃えてカウントしている。

「にじゅうー!! にじゅういちー!!」

 「頑張れー!」「すごーい!!」 そんな声があちらこちらから上がり、一気に盛り上がった。

「にじゅうにー!! にじゅうさ‥あーーーーーーー!!」

 23回目でとうとう足に引っかかってしまい、大きなどよめきとため息が沸き起こる。


【昨年の記録更新です!2年2組!飛んだ人にも回した人にも惜しみない拍手をお願いします】

アナウンス後、生徒、父兄、先生方、全員から惜しみない拍手が送られた。2年2組も笑顔で手を振ってそれに応える。

「うっわあ!すっごい悔しい!!白組だから敵なんだけど!!30まで行けてたら!!」

 流水のクラスメイトからそんな声も上がった。そういう敵味方関係なく、喜んだり、残念がったり、それが何より嬉しいなと流水は思った。


【さあ!運動会の定番、綱引き!二年生全員参加です!】

 1クラス40名前後で学年2クラス。紅白で分かれ、そこから更に半分に分かれているので、少人数での争いだ。しかし、これはこれで勝負は白熱した。

「いけー!!」 「あ!引きずられちゃった!ケガしてないかな!?」 「頑張れー!!」

 流水も大きな声を張り上げ、ぴょんぴょんジャンプしては、周りの子たちと声援を送る。しかし全部見終わる前には、入場門へと移動しなければならなかった。

 1年生たちはそそくさと移動し、入場門から声援を送る。

【さあ!次は先生同士の綱引きだ!生徒に良い所見せるチャンスですよ!】

 いつもはワンピースにハイヒールな英語の先生も、ジャージにスニーカーで負けまいと必死だ。理科の先生はもうお年なので、ほどほどに頑張って欲しい。

「山田先生がんばれーー!!」 

「さっちゃんせんせーー!!」 

「おじじー腰痛めないでねーーー!!」

「こらーー西!!気合入れろーー!」

 特に3年生からのヤジが多い。流水たちはそんなヤジに大笑いしながら、きゃあきゃあ声援を送るのだった。


【2年生の皆さん、そして先生方お疲れ様でした!さて次は1年生による玉入れです!】

「玉入れ大好きなんだよね~!」

 しかしこの玉入れは少し変則だ。赤組の3年生が竿に取りつけたかごを持つ。白組の3年生も同様だ。グラウンドには大きな円が書かれており、その中で玉拾いをする3年生がそれぞれ3人。かごを持った3年生が逃げ惑う中、紅組は白組のかごに、白組は赤組のかごにそれぞれ玉を投げ入れるのだ。円の中の玉は、玉拾い係がせっせと円の外に放り投げる。

 号砲と共に2人の3年生は円の中を走り回る。そしてその外から1年生が玉を投げ入れる。

「きゃー!」 

「あーーはずしたー!」 

「にげられたーー!」

 1年生たちははしゃぎまわり、笑い声をあげて大騒ぎだ。逃げ惑う3年生も楽しそうに笑っている。

「なにこれ!!超たのしい!!」

 流水も大笑いしながら玉を拾っては投げる。玉拾いの3年生は、敵チームではあるが「頑張れ!」と声を掛けてくれた。

「ありがとーございます!!」

 流水は大きな声でお礼を言い、かごめがけて玉を投げた。


 玉入れは人気競技でもあるらしく、かご持ち係が交代しての3回戦マッチだ。かご係も面白く、ただ走り回る者、止まったかと思うと動き出す者、回り出す者までいる。3年生でもこの係は人気らしい。

「あー!!にげられたーー!!」

 流水も息を切らしながら玉を拾い、必死で投げる。2年生や3年生、父兄たちからも声援と笑い声が上がって3回戦が終わるころには皆、完全に息が上がっていた。

「やっばい!超面白かった!!」 

「私3年生になったらかご係やりたい!!」

 そんな会話をしながら再び入場門へと歩いて行く。そして再び流水たちも参加の競技だ。競技数自体は少なく全員参加が多い。


【次はー台風の目です!1年生から3年生まで!2人1組でぐるぐる回りますよー!回る回数はサイコロ次第!張り切っていきましょう!】

 赤組には赤組の先生が、白組には白組の先生が、スタート地点から50mの所にいる。ロープの両側に結び目があり、二人が端を持って先生の所まで走り、その場でぐるぐる回転して戻り次にロープを渡すゲームだ。

 先生二人がサイコロを振り、サイコロの数だけ回転することになっている。回転数を拡声器で伝えてくれるのだ。

「白4回!」 「赤2回!」

 言われた回数を回り、再びダッシュで戻って来る。回数が少ないためにさほどふらつくこともなく、戻って来た。そうして何組かがスタートした直後


【はーい!ボーナスステージでーす!今からサイコロが2個になりまーす!時間は3分!!】

 「白12回!」 「赤2回!」

 それぞれ6と1のゾロ目が出たために、生徒たちから悲鳴と歓声が上がる。12回まわった白組はへろへろになりながら何とかロープを渡す。

「白4回!」 「赤11回!」

 今度は赤組がへろへろになる。皆笑い、叫び、声援が飛び交った。流水は幸いにもボーナスステージからは外れ、3回まわっただけで済んだ。それでも少しだけ足はもつれたが、次の人にロープを渡す。

 七海は7回転で、少しよろけつつもクラスメイトと支え合い、笑いながら次へと渡し、茜が4回転でしっかりとした足取りで渡す。遊馬が11回転したのにも関わらず、ダッシュで次へ渡したのは圧巻だった。道明は5回転で、こちらも危なげなく次へと渡した。


【それではここで午前の部は終了となりまーす!目が回った皆さん、お昼を食べてしっかり回復しましょう!】


 七海と流水は篁たちの席へと行き、シートに座り込んだ。隣のシートには茜家族がいて、両親と弟、妹も来ているらしい。

「こんにちは!あー!透くんに灯ちゃん!見に来てたんだ!」

 流水は両親に挨拶をした後、弟と妹に声を掛ける。

「うん。来年おれも中学だから、ちょっと見てみたくって!」 

「わたしもついでー!」

 流水と茜の弟は1年違い、茜の弟と妹も1年違いである。七海も茜両親に挨拶をして、早速シートに座り込んだ。

「ただいまー!あ、ナナ隣だったんだ!お祖父さん、お祖母さん、霧江さん、こんにちは!」

 トイレに行っていた茜が少し遅れてシートに座る。


「玉入れ楽しかったー!」

 にっこにこで流水が報告すると、七海も笑顔になる。

「あ、クラスの子が“あれ七海の妹?玉渡したらありがとうございます!だって!かわいいじゃん!”って、そう言ってたよ。」

 七海に言われ、流水は嬉しそうだ。

「え?でもね、その人、一応敵なのに“がんばれ”って言ってくれたんだ!あ、おねえちゃんやっぱり足速いねえ!徒競走見てたらクラスの子が“おねえちゃんかっこいい!”って。“そりゃ自慢したくなるよね!”って言われて嬉しかったんだ!!」

 反撃を食らった七海は真っ赤になり、水筒のお茶をごくごく飲んだ。隣のシートの茜がくすくす笑っているのも気になっているらしい。


「二人とも楽しそうだったし、よく頑張ったなあ。」 

「本当に。見てるこっちも楽しかったわ。」

 篁と環に言われ、二人も笑顔になる。

「さあ!頑張って作ったからたくさん食べなさいな!」

 霧江がお重を開けると、おにぎりや卵焼き、唐揚げ、生春巻きのサラダ、色とりどりのおかずがぎっしり詰まっていた。

「「わーーー!!いただきまーす!」」

 七海と流水は争うようにおにぎりやおかずをつまむ。煮物もあれば、ミニハンバーグもあるという豪華なお弁当だ。

「美味しい!!この卵焼きは霧江さん!」 

「このハンバーグはお祖母ちゃん!」

 誰が作ったのかを当てながら、次々と食べていく。霧江と環は顔を見合わせ微笑み、篁も目を細めて二人を見ていた。


「‥なんか、これがもう中学最後なんてね。あっという間だったなぁ‥」

 しみじみと七海が呟き、今は誰もいない校庭を見やる。

「わたしも再来年には同じこと、言うのかもねぇ。」

 流水が笑顔でそれに続く。

「ははは‥年々1年過ぎるのが早く感じるものだ。焦らんでいい、じっくりと今の時間を味わえばいい。辛いことも、楽しいことも、たくさん刻んでな。」

 篁はそう言って二人を見た。

「そうよ。とにかく今は、“今この時間”を楽しみなさいな。振り返ったときに、それが宝物になるわ。」

 環もそう言って穏やかな笑みを浮かべる。

「今が一番楽しい時だもの!感傷に浸るには早いわよ!」

 霧江につんっとつつかれて、七海は笑顔になった。

「そうだよね!ありがとう、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、霧江さん。リレーではアンカーになったの。頑張るから見ててね!あとは創作ダンスも!」

 そんなふうに談笑していると、道明の両親と遊馬の両親がそろそろと近づいてきた。

「こんにちは、来られていると聞いてご挨拶に参りました。」

 道明の父、孝之介が来て会釈をする。それに倣って遊馬の父、駿も会釈をした。

「そんな改まらんでいい。今日は孫の体育祭を見に来ただけだ。‥それより家の孫が世話になっているな。」

 篁が笑顔で答えると、孝之介と駿も笑顔になる。

「こちらこそ。」 

「うちの息子がご迷惑をかけていないといいのですが。」

 五十嵐家は両親共に開眼していないため、七海の父、蒼介との繋がりのほうが強いらしい。篁達が談笑しているため、霧江は保冷バッグから容器を取り出した。


「はいこれデザート。」

 霧江が別で用意していたのは濃厚なベイクドチーズケーキだ。

「おいしそー!!」

 容器の中には一口大に切り分けられたチーズケーキが詰まっている。

「うま!!」 「超美味しい!!」

 その言葉に茜の兄妹が反応してこちらをちらちら眺めてくる。霧江が笑いながら「どうぞ」と差し出すと、二人は礼を言って取り、口にした。

「おいしいーーー!」 

「これ好きーーー!」

 そんな二人の様子に立夏はにこにこして、「どうぞ」とデザートを分けてくれた。こちらは果物とクリームのクレープ包みだ。

「美味しいーー!」 

「わーー!お口の中が贅沢!」

 子供たちはデザートを食べ比べては笑い、美味しいと言っては笑った。霧江と立夏もお互いのデザートを褒め合い、そのまま談笑している。

 篁と環はそんな様子を見ながら、たまに訪れてくる一族の父兄と挨拶を交わし、少し話しては笑っていた。


 穏やかな談笑をしていると、しばらくして流水が立ち上がった。

「えへへ!私はこれから応援合戦の準備にいってきます!頑張るから見ててね!!」

 ふと見ると、道明も立ち上がっており、目が合うと笑って手を上げた。流水と道明が一緒に校舎へと入っていく。


 昼休憩が終わる頃、まずは白組が先に校庭へと入場してくる。先頭は応援団長の道明だ。上背もあり、体格もがっしりしているために学ランが似合っており、迫力も満点だ。女子も同じように学ランを着ているが、少し大きめなのでカッコ可愛い雰囲気になっている。

その後は紅組。やはり全員が学ランスタイルであり、先頭の応援団長も背が高い。後ろの方からトコトコと流水が歩いて来たのを見て、七海がついニヤけてしまう。

「かっ!かわいいい!!」

 思わず口に出してしまい、篁や環、霧江までもが笑ってしまう。小柄な流水には学ランが大きすぎて子供が大人の服を着ているように見えるのだ。


【それでは応援合戦が始まりまーす!】

 白組・紅組がそれぞれ隊形を整え、白組には吹奏楽部が、紅組には軽音部がついている。紅白組は互いに向き合って礼をし、正面に向き直った。


 道明の号令から始まる、定番の三三七拍子。白い手袋が眩しく、キレのある動きと道明のよく通る声、そしてホイッスルが響き渡る。

最後の掛け声「オー!」で一度停止した後、吹奏楽部の演奏が始まった。誰もが耳にしたことのある洋楽に合わせ、拳を振り上げ足踏み。足踏みのタイミングに合わせた大太鼓がズンっと響き、まるで足踏みによる振動のようにすら感じた。そして全員の動きが完全にシンクロしている。

「‥うわぁ‥完成度たっかい‥」

 七海は思わず呟いた。ダンスと武道が渾然一体となったような、見ている此方側が圧倒されるほどの迫力である。観客席は静まり返り、全員が一挙一投足に見入ってしまっている。

「ヤーーー!!」

 最後に全員の掛け声とその場での正拳突き。団長の道明が空手をやっているだけに、その型も迫力も段違いだった。

 一瞬の静寂後、「ワアアアアアッ」という歓声と、割れんばかりの拍手が送られる。正拳突きのまま静止していた道明の掛け声で、「気をつけ」から「礼」まで。これも全員が完全にシンクロしていた。

 再び惜しみない拍手が送られ、一礼した後その場で待機する。


 紅組も団長の号令から始まり、定番の三三七拍子。白組の重厚感とはちがい、活動的で爽やかな動きだ。

 そして軽音楽部の演奏が始まった瞬間、全員が動き出す。

「ソーラン節だ!‥南中ソーラン?これもアレンジかな?」

 ベースとギター、そこにドラムまでが入り、滅茶苦茶にノリの良い音楽になっている。誰からともなく手拍子が始まり、観客全員にまで広がった。

「わ!流水すごいすごいすごい!」

 七海は流水の動きに見入ってしまう。真面目くさった顔をしているが、たまに口元が緩む。

「ふふふ‥流水ちゃん、本当に楽しいのね!」

 霧江の言葉に七海も笑いながら頷いた。白組ではあるが、全員が手拍子をしている。白組ほどシンクロしきれてはいなかったが、それでも観客席を巻き込んでの演技に盛り上がる。

「やーーーー!!」

 停止後のかけ声もちょっとだけバラついた。それでも七海は笑顔で拍手喝采を送った。「なおれ」の後に流水が七海に向かって笑顔でちょっとだけ手を振ってくれる。つい七海も笑顔になって手を振り返した。


「流水ちゃんかわいい!あの学ランはちょっと反則じゃない!?」

 茜の言葉につい七海がニヤけてしまう。確かにかわいい。連れて帰りたい。いや連れて帰るのだが。

「あの応援団の人たちのって、学ランっていうの?」

 茜の弟が聞いてきたので二人は「そうだよ」と答える。

「以前はあの学ランが中学の制服だったのよ。数年前にちょうどブレザーに入れ替わったのよね。」

 霧江が思い出したように言うと、環も頷いた。

「えー、おれ、あっちのが着たかったなー!」

 弟の透は口を尖らせて文句を言う。ブレザーよりも格好良く見えるのだろうか。

「応援団のあの学ラン、OBの人たちの寄付って聞いたかも。・・そう考えると、何か感慨深いわねえ。それより白組の団長さんは道明くん?カッコいいわあ!」

 立夏の言葉に七海も流水も笑った。


「ミチくん、空手やってるだけあってさ、何か動きにキレがあるっていうか、迫力あったね!」

「うん!ああいうときの道明は確かにカッコいい!」

 二人はそう言って笑い合い、次の競技に参加するため早々に席を立った。家族から声援を受け、二人は手を振りながら走って行った。




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