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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
2章

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27/32

5話 ラナァ、突如伸びる


「入学式の様子はどうです?」


 イリナがドキドキしながら質問した。

 ここはラナァが根付いている聖域。

 今日もいい天気で暖かく、ラナァは幸せを満喫していた。


「学園長が挨拶してるー」


 ラナァが分体ラナァの情報を得ながら言った。

 今日はアヴァロン魔法学園の入学式で、シエルが出席している。

 もちろん、シエルのポニーテールを括っている分体ラナァも一緒だ。


「人類唯一の7星というやつか」


 アビスは香箱座りしている。


「人間のくせに妾より上とは生意気なっ!」


 パメラがプンプンと怒って腕を組んだ。

 ちなみに、パメラはイリナの頭の上に座っている。

 イリナはいつものようにラナァの真ん前に陣取っていた。


「それより」イリナが言う。「寮生活は想定していませんでした。大丈夫でしょうか?」


 アヴァロン魔法学園は全寮制なので、シエルが次に聖域に戻れるのは夏期休暇だ。

 アヴァロン魔法学園のある魔法王国は、ヴェルテール王国がある大陸とは別の大陸だが、季節は同じだ。

 ヴェルテール王国から真っ直ぐ東に向かえば、魔法王国がある。


「大丈夫じゃろ」とパメラ。


「心配あるまい」アビスが言う。「ラナァがいる」


「そうですね。ラナァがいるので、ケガや病気などは心配していません。あたくしが心配しているのは、シエルのメンタルの方です」


「よく分からん」アビスが言う。「たかだが数日離れるだけだ。メンタルもクソもあるまい」


 チッチッチ、とイリナが人差し指を振る。


「多感な時期の人間の子供は、その数日……いえ、数日どころか100日以上ありますが……とにかく初めての環境ですし、シエルは少し心が弱い部分がありますし、病んだりしないかなと」


「イリナは心配性じゃのぉ」パメラが言う。「ラナァに毎日報告してもらえば良かろうに」


「まぁ、それはそうですね」イリナがラナァを見詰める。「シエルが安心してのびのびと生活できるように、助けてあげてくださいね」


「はーい♪ のび♪ のび♪」


 ラナァがクネクネと揺れながら茎を伸ばす。

 ぐんぐん、ぐんぐん伸びるラナァ。


「え? ちょ、ラナァ、どこまで伸びる気です!?」

「どこまで伸びる? ラナァはどこまで伸びる? ランランラーン♪」


 ラナァは楽しく歌いながらずんずん伸びた。

 やがてラナァは雲を突き抜け、それでもまだ伸び続け、惑星の外へ。

 それでもユラユラ揺れながら伸びに伸びて、惑星系の外側へ。

 何もないなぁ、なんて思いながらラナァは限界まで伸びてみることに。

 そうすると、気付いたら別の惑星系に到達していた。


「あ、誰かいるぅ」


 ラナァは円盤の中に人間っぽい存在がいることを確認した。

 その人たちは目がアーモンド型で大きかった。

 ラナァは円盤に向けて葉っぱをフリフリ。


 円盤の窓から、目の大きい人たちが手を振り返す。

 彼らは異星人なのだが、ラナァに異星人という概念はない。

 聖域から遠くにいる目の大きな人たち、と認識しただけ。


「ラナァこれ以上は伸びられないみたい」


 今のラナァの能力では、隣の惑星系まで伸びるのがやっと。

 いつかこの世界の果てまでいけるかな? とラナァは思った。

 そして、まぁいけなくてもいいけど、とも思った。

 どっちにしてもラナァは幸せなのだから。

 で、ラナァはパッと元の大きさに戻った。


「おかえりなさいラナァ」イリナが言う。「どこまで行ったんです?」


「んー、星まで」

「「星!?」」


 イリナ、パメラ、アビスが驚いて目を丸くした。


「さすがラナァだ」アビスが言う。「ワシですら、星までは飛べん」


「凄いのじゃ! 今度、星を持って来てほしいのじゃ!」

「いいけど、星って大きいよ?」

「どのぐらいじゃ? 妾では持てないぐらいか?」

「持てなーい!」

「では残念だが諦めるとするかのぉ」


 パメラは意外と諦めが良かった。


「あたくしだったら持てます?」

「むーりー」

「そうですか。星は遠くにあるから小さく見えるだけ、ということですね」


 イリナが言うと、ラナァがウンウンと頷いた。



 シエルはとっても落ち込んでいた。

 なぜなら、入学式で新入生代表挨拶をしたのだが、噛み噛みだったのだ。

 ここはSクラスの教室で、すでに入学式は終わっているのだが、シエルはずっと引きずっていた。


(元孤児でいじめられっ子のあたしには難易度が高いよぉ……)


 グスン、と半泣きのシエル。

 ちなみにシエルたちSクラスの生徒は10人で、全員が自分の席に座っている。


「さて、私がみなさんの担任になりましたローラ・ハリスンです」


 教室の前で、女性教師ローラが淡々と挨拶した。

 ローラは紺色のローブを羽織っていて、丸い大きなメガネをかけている。

 髪の色はオレンジで、髪型は普通のロング。

 特にオシャレやなんかはしていない。

 見るからに知的な魔法使い、という雰囲気だった。


「先生は現在5しぇ……失礼、5星魔法使いです」

(教師でも噛むんだぁぁぁぁぁぁぁ!!)


 シエルはビックリして目を丸くした。


「あら? 5つ星ですって?」赤毛の令嬢がバサッと扇を広げながら言う。「さすがはSクラスの担任ですわね」


(だからどうして扇を広げるのぉぉぉぉ!?)


 貴族の考えること分からなぁぁぁぁい、とシエルは思った。


「みなさんはSクラスですので、5星になれる可能性は高いと言えます」ローラが言う。「特に今年は粒ぞろいですし」


 ローラはシエルを見て、アデリタを見た。


「当然ですわ!」赤毛の令嬢が扇を自分の胸に当てながら言う。「魔導名門グラッシ伯爵家の長女、このコーデリア・グラッシ様がいるのですから!」


「元気がいいですが、少し黙ってくださいね」


 ローラがニッコリ笑いながら言った。


「あ、はい……」


 赤毛の令嬢コーデリアはしゅんとして頷いた。


「さて、みなさんには順位が付けられています」ローラが淡々と言う。「現在の1位はシエル、2位はアデリタ、3位はヘルトで、コーデリアは4位ですね」


「ぐぬぬ……わたくしが4位……」


 コーデリアは扇を畳んで、ギュッと握りしめた。


(てゆーか、もう生徒の名前を覚えてるんだ! すごっ!)


 シエルはとっても感心した。

 シエルはアデリタの名前しか知らなかった。


「この4人はSクラス10人の中でも特に抜けていますが」ローラが鋭い目で言う。「テストの結果次第で順位は入れ替わります。最悪、Aクラスに落ちる可能性もありますので、真面目に授業を受けましょうね。先生は真面目な生徒は好きですが、不真面目な生徒は嫌いです」


 アヴァロン魔法学園は完全実力主義で、クラスによって待遇が違う。

 例えば、Sクラスの生徒は全員が1人部屋を与えられている。

 ここでは身分もお金の有無も何も関係がない。

 ただただ魔法使いとして優秀か否かが全てなのだ。


「さて、それでは1位から順番に自己紹介をどうぞ」


 ローラが言って、シエルが慌てて立ち上がる。

 そして噛み噛みで「シエルでしゅぅ」みたいな情けない自己紹介を終えた。

 アデリタは和やかな雰囲気で自己紹介。

 そして次はイケメン少年ヘルトの番。


「知っている人もいるだろうけど、僕はヴェルテール王国の王太子ヘルト・ホーイフェルト」


(んんんんん!? 王子様!? あれぇ!? ヴェルテールってあたしの住んでる国じゃない!? んんん!? あれれ!? ヴェルテールの王子って、もしかしてラナァに求婚したあの王子!?)


 シエルは驚愕し、頭の中が軽いパニック状態になっていた。


「ま、この学園じゃ身分に価値はないみたいだけどね」とヘルトが肩を竦める。


 そんな動作までイケメンだった。

 なんで違う大陸で自国の王子様と同じクラスになるのか。

 もしかして運命……? とか考えて頬を染めるシエル。

 しかし。


(って、ライバルがラナァじゃ勝ち目ないや)


 速攻で諦めたシエルであった。


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