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第十八章:魔力母線と安全弁(マナ・バス・アンド・ヒューズ)-1

 扉が閉ざされた瞬間、まるでアーガスと世界の間に見えない壁が築かれたようだった。

 この檻の中で時間は音もなく流れ、指の隙間から零れ落ちる砂のように過ぎ去っていった。

 瞬く間に、二年が経過した。


 彼は十歳になっていた。


 窓の外では、秋の葉が燃え尽きた灰のように枝から剥がれ落ち、またひとつの厳しい冬の到来を告げていた。

 風に巻かれ、土へと還る枯れ葉。それはアーガスの心にある、砕け散った希望の残骸のようだった。


 アーガスの部屋は、寝室というよりは、彼自身が選んだ流刑地だった。

 かつて整頓されていた机は、今や記号だらけの羊皮紙と、ねじ曲がった金属屑に占領され、狂気じみた錬金術師の実験室と化していた。

 空気には魔力の過負荷オーバーロード特有の刺激臭が染み付いている。苦い雷の落ちた後のような臭いは、この部屋の背景音のようだった。


 彼はこの狭い世界に自らを閉じ込め、狂おしくも孤独な戦争を続けていた。

 行き場のない罪悪感の出口を探すために。

 彼は創らなければならなかった。

 「役に立ち」、「安全で」、そして絶対に「誰も傷つけない」ものを。


 それは知的好奇心のためではない。栄光のためでもない。

 これは家族への無言の償い(アトーンメント)。

 一人の子供が、自分なりのやり方で捧げる懺悔だった。


 彼は兄トールの古い教科書から、飢えた者がパン屑を拾うように、この世界の基礎的な魔法ルーンを学び取った。

 実験は、最も単純な「重ね合わせ」から始まった。


 最初の試みは『微光ディム・ライト』の術式。

 深夜の部屋。頼りない蝋燭の火だけが揺れている。

 彼は息を殺し、慎重な熟練医師のように、高価なミスリル線を使って二つの『微光』ルーンを並列に繋いだ。

 期待が胸を満たす。

 一つのルーンが光るなら、二つ繋げば二倍の輝きが得られるはずだ。


 だが、恐る恐る魔力を流し込んだ結果は、絶望的なものだった。

 現れたのは明るい光源ではなく、風前の灯火のように明滅する、惨めな白い光の塊だけ。

 その光は死にかけの蛍のように弱々しく、神経を逆撫でするような「ジジジ……」という雑音を発していた。

 まるで彼の無知を嘲笑うかのように。

 十秒も経たずに光は消え、失敗よりも耐え難い静寂が残った。


 二度目の挑戦は『浄水ピュリファイ』。

 今度はルーンを刻んだ三枚の銅板を並べ、木の板に固定した。

 その瞳には贖罪のような期待が燃えていた。この実験が成功すれば、心の中の罪も洗い流せるかのように。


 しかし、魔力を注いだ瞬間。

 流れ出たのは、銅の錆が混じったような汚濁した水だった。

 水流は途切れ途切れで、色も悪く、単体のルーンよりも遥かに質が悪い。

 これは浄水ではない。汚水を製造しているだけだ。


 彼は呆然と、目の前の失敗作を見つめた。

 次の瞬間、二年間溜め込んでいた怒りと挫折が火山のように噴火した。

 彼は装置を掴み、壁際へ力任せに投げつけた。


 ガシャンッ!


 銅板が壁に当たる乾いた音が響き、木っ端が飛び散る。砕けた夢のように。


 彼は壁に背を預けてズルズルと座り込み、両手で顔を覆った。

 兄トールの、屈辱と苦痛に満ちた顔が、制御不能な記憶の奔流となって脳裏に浮かぶ。

 かつて温かかったあの瞳は、今は氷のような冷たさと、他人行儀な色しか宿していない。


(たった一つ……『役に立つ、安全な良いこと』さえ、僕にはできないのか)


 やはり自分は、災いしか生まない「侵入者」なのだ。


 この二年間、彼は同じ堂々巡りを繰り返していた。

 試行、失敗、絶望、そして再試行。

 並列、直列、環状接続……考えうる限りの組み合わせを試したが、得られたのは明滅するガラクタと、濁った水溜まりだけ。

 失敗するたび、自己否定のナイフが彼の心を深く切り裂いていく。


 夜が更ける頃、過去の記憶が潮のように押し寄せる。

 トールの無言の涙。父の誤解による怒り。母の諦め混じりの溜息。

 それらは無慈悲な波となって、彼を孤独の深海へと沈めていく。

 彼はこの家の中で、最も徹底した孤独者であり、最も理解されない存在だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

台湾出身の作者です。


職人が伝説級の道具アイテムを鍛え上げるためには、

技術だけでなく、赤々と燃える「炉の火」が不可欠です。


私にとって、皆様からの応援と☆☆☆☆☆評価こそが、

この物語(アイアンソーン工房)を燃え上がらせる最高の燃料となります。


ぜひ下にある【★★★★★】をタップして、

アイアンソーン工房に火をくべてやってください!


それでは、次の章でお会いしましょう!

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 台湾出身の作者です。 職人が伝説級の道具(アイテム)を鍛え上げるためには、 技術だけでなく、赤々と燃える「炉の火」が不可欠です。 私にとって、皆様からの応援と☆☆☆☆☆評価こそが、 この物語(アイアンソーン工房)を燃え上がらせる最高の燃料となります。 ぜひ下にある【★★★★★】をタップして、 アイアンソーン工房に火をくべてやってください! それでは、次の章でお会いしましょう!
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