§第18話後編 浜の攻防(3)
暁 はぁ!アハハハハ
暁はちょっとアホの子になっている。ん?うまくいったのか?朔次はこの妄想大活劇を知る由もなく、ただ釣られてヘラヘラ笑いながら、
朔次 ハハハ。で?どうだったんだ?ん?
暁 あぁこれっすね。アッハハハ ダメだったっすよ。なんと!わが社の優秀なアンチジャマーに邪魔~されちゃいました。アハハハハ
皆 んなにぃぃぃぃぃ
暁 あいぃぃぃぃぃ
もちろん、秒で暁の頭を囓っている。朔次が。このおっさんの動きはなんなんだ。
ライウ あと一分!もうだめだ
朔次 諦めるな!考えろ!何か方法があるはずだ
暁の頭を囓りながら朔次が叫ぶ。だから器用だな!
朔次の声で沈みかけた皆の目が活きてくるから不思議だ。潤がさらなる策を提案した。
潤 こちらからアクティブに誘導できませんか?
朔次 それだ!どけ。俺がシステムコード知ってる
朔次は暁が使っていた通信器に駆け寄った。今度こそ自分で仕事をするのか朔次。頭を囓られていた暁は勢いですっ転んだ。転がる転がる転がる暁。痛かろうがちょっと嬉しそうな暁。うん……なんかもう……うん。
ライウ アクティブ誘導など不可能だ
朔次はキーボードを打ちつつ、
朔次 自動誘導システムをクラッキングすればできるだろ。暁!
暁 うぃっす
朔次 ミサイルがつっこんでもいい場所はどこだ?
暁 ええとイテテええと
暁はポケットから例のハンディな通信デバイスを取り出して調べる。囓られた頭が痛そうだ。ハゲたらどうするんだ朔次。
朔次 早く!もたもたするな!
誰のせいだよ。
朔次 うるせえいいから早く!
こっちにきた。
暁 少し沖に防波堤があるっす。その外側なら安全っす
朔次 だめだ間に合わん!山の土手っ腹にするぞ
潤も暁のデバイスを覗いて、
潤 民家はありませんね。でも大騒ぎになりますよ
朔次 構うもんか
ガチャガチャガチャ。朔次は暁を見た。え?そのまま暁の手を取った。え え?慌てる暁。もしかして。最後の祈りを共に手を取り合ってしようと?
暁 なななななな
朔次 行け~!
暁 なぁ~~!
朔次は暁の指を使ってエンターを勢いよく押下した。
数瞬の間。
かすかに空から異音が聞こえてきた。ミサイルの推進音か。ライウは腕のパッドを操作しつつサイバーグラスを覗く。
ライウ だめだ!方向に変化なし!
朔次は再び暁を見た。暁は紅潮したままうっとりしている。
朔次 お前が押したんだからな
暁 ええっ
酔いが醒めた。
暁 そんな上司アリっすか!だめっす逃げるっすよ!
暁は立ち上がり逃げ出そうとした。が、ゴウウの豪腕に強引に上腕を掴まれた。
ゴウウ 無駄だ。攻撃範囲は直径1キロ……お前いい上腕二頭筋してるな
朔次 まだだ!
朔次は諦めていない。
ゴウウ ほほう。これは……
ゴウウは暁の腕の筋肉を丹念に堪能している。緊急事態よりも筋肉自体か。
朔次 くっそ~これでどうだ!
通信機をガチャガチャした。朔次は通信機の筐体を掴んで身体ごと右に傾けた。ハンドルか。
ライウ あ。右に逸れました
ライウがバーチャルグラスを操作すると、空間に四十インチ程のバーチャルスクリーンが現れた。皆はそれを見つつ右に首を傾ける。
朔次 そしてこうだ!
ガキャガキャガキャ。打鍵音汚いな。キーボード壊れるぞ。――そして次は左に傾ける。皆は釣られて左に傾く。さらに上・下・左・右を繰り返す。
皆は釣られているうちにぐるぐるぐるぐるエグザイル状態に。なんの儀式だこれ。ライウが表示している大型バーチャル画面も同じ様にぐるぐるしている。なんでだよ。ミサイル音はさらに近づく。
ぐるぐるしつつ叫ぶライウ。
ライウ 逸れてるようでソレテナ~イ!着弾ぁぁぁぁん!
エグザイル解散。皆それぞれに防御姿勢を取りフリーズ。
暁 課長ぅ~~
ゴウウ ライウぅ~~
潤 カニぃ~~
爆発音。
直後。極めて強い閃光が皆の目を焼いた。世界が白くなった。
間。
二秒程過ぎたか。次に灼熱の爆風が……来ない。え。
五秒。光と音が収束する。空は白色から変化し、銀色に燦めくキラキラで覆われた。キラキラキラキラ際限なく舞っている。
全員フリーズしている。何が起きたのか。口々に呟く。
口々 眩しい/ううぅ目が~/何が……
朔次 全員無事か!
暁 焼尭無事っす!
ゴウウ 私も無事だ。ライウ。ライウは!
ライウ 自分もです。かすり傷一つありません
朔次 空中炸裂弾だったか。何のために……
ひとまず無事を確認し、広がる安堵感。
が。
誰か足りない。目が慣れてくると、足元に倒れている人間が。それは――
潤だった。
ゴウウ ミスターウルマ!大丈夫か?
ゴウウが潤に駆け寄り揺するが反応がない。口許に手をやり息をのんだ。呼吸反応がないのか。
ライウ なんて事だ
皆は立ち尽くした。空はキラキラで満ちている。それを見上げた朔次が叫んだ。キラキラの意味を理解したのか。
朔次 いかん。チャフだ!
暁 なんすか?
朔次 チャフだチャフ!アルミだ
ライウ あ!
暁 あ 通信障害を起こすやつ!
朔次はゴウウに詰め寄った。
朔次 あんた。緊急攻撃直後の動きを教えろ
ゴウウは首を横に振る。
ゴウウ パターンが多すぎて絞れない
朔次はゴウウを凝視する。真偽を確かめているのか。それもつかの間、小さく舌打ちして言葉を進めた。
朔次 しかたねぇ。おい!移動するぞ
暁 え どこに
朔次 このチャフから脱出する
ゴウウが反駁した。
ゴウウ 何故だ?ミサイルに火薬はなかった。我々は無事だ。チャフが収まるまでここにいるべきだ
ライウ 少佐それは
朔次 だめだ。とにかくここを離れる。話は移動しながらだ。早くしろ!
暁 課長。あの人は
暁が横たわる潤を指さした。
暁 潤間さんどうするんすか?
朔次 時間がない 置いて行く
暁 そんな
朔次 たった今生きてる人間優先だ。いいか俺たちは生きてる。これからも生きるんだ。つべこべ言うな 行くぞ!
その語勢に押されてか、皆は号令がかかった軍隊の様に手際よく荷物をまとめ移動を始めた。暁だけは潤に駆け寄りその骸を引きずろうとしている。
朔次 何やってんだ!
暁 あの岩陰に移動するだけでも!後悔したくないっす!
朔次 あぁもう!分ったよ!おい荷物頼む
朔次はライウに荷物を預けた。緊急事態とは言え最高機密の技術がつまった通信装置を他国の人間に渡していいものか。
朔次と暁が潤を運ぶ。と、そこにゴウウも合流した。
朔次 物好きだな仲間でもないのに
ゴウウ 人の尊厳を無碍にはしない。それが私の矜持だ
ライウはゴウウと朔次三人分の荷物を抱えたまま周囲を警戒している。
空にはキラキラが一面に舞い続けていた。




