§第08話 三上山での接続
時空は戻る。ここは三神山頂付近。匂坂朔次と焼尭暁が各々、何やら小難しそうな機械を操作している。
――ここに登場する機器類について細かい説明をすると九九%の人が寝てしまうから省いている。けして分かってない訳ではない。分かってるから。残り一%に小馬鹿にされる恥を敢えて受けているんだから。
と、暁が顔を上げた。
暁 オッケー。電波取れたっす。いっや~めちゃくちゃ帯域バラバラっすね。リアルタイムに変化するんでフォロー大変っすよ
通信装置らしい。暁は計器に表示される数字や筐体の割に小さいディスプレイに表れるグラフっぽい模様を見ながら話す。
朔次 これがわがタテヤマ通信工業のスクランブルテクノロジーだよ明智君
暁 誰すかそれ?
朔次 無教養だなチミは。いいか。業界最大手のミカカ……ミカド……なんだっけ
暁 ミカカドコデモ通信社。通称ミカドっす
朔次 そうそれ。そのミカドが躍起になって我が社のテクノロジーを盗みに来ているのだ。その証拠を押さえるのが我々の使命だよ明智君
暁 それは昨日聞きました。それよりアケチ
朔次 今日の交信相手はミカドの技術管理を引き受けているコンサルタントだ
暁 それも昨日……気になるのはアケチなんすけど……まあいいや。それで?
希代の名探偵はもはや人口に膾炙されぬ。そんな世代か。
暁 確かなんすかその相手。詳細資料は課長が持ってるっすよね
朔次 あ?……ああ。そうそう。そりゃお前 確かなツテからの確かな情報だ。うん。確か
少しの間。
暁 言うぞ~
暁が予言する。
朔次 しらんけど
暁 やっぱり
やっぱりな。
暁 確か確かって言うっすけど、確率はかけ合わさると下がるんすよ?怪しいっすね
朔次 まあな。そもそもミカドのガードが固くて付け入る隙がないって営業に愚痴られてさ。それでまあ少々怪しい情報でも限られた確かさの中で一番確かなモノを洗い出して行く。それが・俺たちの・確かな仕事だ!
暁 おお。大体わかってた事だけれどもなんかカッコいいっす
朔次 確かな。多分な。おそらくな。テヘッ
おい。
暁 カワユス
おい。お前にもおい。大丈夫か暁。いいのかこの反応で。そしていいのかこの上司で。
突然。
音 ふにゅピコにゃ~ポンふにゅピコにゃ~ポンポコにゃ~。ふにゅピコにゃ~ポン……
緊張感の欠片もない音が響いた。唐突だったから緊張感はあるが、聴けばふざけてるとしか思えない。
音 ふにゅピコにゃ~ポンふにゅピコにゃ~……
しぃんとした山中に意外と大きく反響する。なんなんだ。
朔次 いつ聞いてもいいコール音だ
コール音だったよ。頭では理解できても心では否定したい。暁が装置を操作した。音が止まった。
相手は誰なのか。
暁 Hey Hey! Hello! This is Sougiya speaking.
暁の声はめちゃめちゃ明るい。え Sougiya って?
朔次 『こちら葬儀屋で~す』。うんマニュアル通りだ
葬儀屋かい。嫌な相手の古典的な撃退法だな
暁 なにぃ?かけそば二杯大至急?ばっかやろう!うちはピザ屋だてやんでぇ!
朔次 からの~~わが社の社訓
二人 『イタ~リアンな江戸っ子はシベリアがお好き』
二人はハイタッチをしてそれぞれヘッドセットを装備した。合い言葉ってことか。この通信会社、センスが崩壊している。
暁は通信装置に向かった。
次回は……「第09話 クロストーク」




